ニュース
2012年05月21日
アジア人は糖尿病になりやすい ジョスリン糖尿病センター
- キーワード
- 糖尿病予備群

アジア系の人のほとんどは、米国式の生活パターンに適応し、食生活などは伝統的なスタイルから大きく変化している。炭水化物中心の食事から肉食に変わり、カロリーと脂肪の摂取が増え、ファストフードなどを多く摂取するようになった。車で移動するようになり、ウォーキングや運動の頻度は減っている。
もっとも多いのは2型糖尿病で、発症率は地域によって異なるにしても、平均で6%を超えている。糖尿病と診断されず治療を受けていなかったり、糖尿病と診断されないまでも血糖値の高い「糖尿病前症(pre-diabetes)」に分類される人も多いという。
世界保健機関(WHO)と国際糖尿病連合(IDF)の調査によると、米国の糖尿病有病数は2680万人。世界の糖尿病人口は増加しており、2030年までに中国で6350万人に、インドで8700万人に増加するとみられている。
「日系米国人の糖尿病の発症率は、日本で暮らしている日本人よりも高い」とジョスリン糖尿病センターとハーバード大学医学部に所属するGeorge L. King教授は話す。「世界で糖尿病が急速に増えているのはアジア地域だ。近い将来に、アジア全域が米国のようになるおそれがある」としている。
「アジア系米国人は2型糖尿病を発症するリスクが、白人に比べ50%も高い。一方で、白人にみられる肥満はアジア系ではみられない」とKing教授は説明する。アジア人の2型糖尿病では、体重と身長から計算されるBMI(体格指数)が24〜25の人が多い。米国では、BMI19〜25は「正常」と判定される。
遺伝的な要因と生活習慣による要因が重なり、糖尿病を発症する。運動不足や身体活動の低下も、糖尿病の要因となっている。「白人では肥満が爆発的に増えているが、アジア系の糖尿病ではやせている人が多い。太っていなくとも糖尿病になりやすい体質といえる。ただし、やせていても、腹囲周囲径をみると、体に脂肪がたまっている人が多い。内臓脂肪の蓄積が2型糖尿病の要因となっているおそれがある。食事や運動で内臓脂肪を減らせば、2型糖尿病の危険性を減らすことができる」としている。
「糖尿病のケアはそれぞれの患者の特性に合わせて、きめ細かい対応をしていく必要がある」と研究者は強調する。ジョスリン糖尿病センターでは、BMIのアジア人向け指標として、「24〜26.9」を過体重と判定することを提唱している。過体重の人向けに「2型糖尿病など生活習慣病を発症する危険性が高いので、医療スタッフに減量について相談することを勧める」とアドバイスしている。
多くのアジア系米国人では、糖尿病の判定に一般的に使われている空腹時血糖値の検査だけでは、耐糖能異常を発見するのは難しい。アジア系では、経口ブドウ糖負荷試験が有効だが、この試験は実施するのが難しい。
一方、1型糖尿病に関しては、アジア系では欧米系に比べ発症が5分の1から10分の1と少ない。しかし、アジア系の患者の30%で1型糖尿病で共通してみられる遺伝マーカと血液因子がみつかる。アジア人の糖尿病では、他の生物学的要因がある可能性があると研究者は指摘する。
Joslin researchers find unique physiology is key to diagnosing and treating diabetes in Asian populations(ジョスリン糖尿病センター 2012年5月7日)
Diabetes in Asians & Asian Americans(ジョスリン糖尿病センター)
糖尿病予備群の関連記事
- テレビの視聴時間を減らすと糖尿病リスクは減少 遺伝的リスクのある人も心臓病や脳卒中を予防できる
- 糖尿病の人は脳卒中リスクが高い 血糖値を下げれば脳卒中を予防できる ストレス対策も必要
- 糖尿病の食事に「ブロッコリー」を活用 アブラナ科の野菜が血糖や血圧を低下 日本でも指定野菜に
- 妊娠前の健康的な生活習慣が妊娠糖尿病などのリスクを減少 健康的な習慣を1つでも増やすことが大切
- 糖尿病の予防はすぐにはじめられる こんな人は糖尿病リスクが高い 東京都など
- 握力が低下している人は糖尿病リスクが高い 握力や体力を維持して糖尿病リスクを減少
- 夜遅くに食べるのをやめると糖尿病や肥満が改善 朝食も早い時間に 遅い時間の食事は「体内時計」が乱れる原因に
- 【夏の水分補給】甘い飲料を飲む習慣があると糖尿病リスクが上昇 おすすめは無糖のお茶や水 4つのアドバイス
- 白米を玄米に変えて糖尿病を改善 玄米を週に2回食べると糖尿病リスクは減少 食物繊維が豊富
- 睡眠時間が短すぎても長すぎても糖尿病リスクは上昇 合併症が起こりやすくなる 睡眠を改善する7つのヒント