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2012年02月08日
糖尿病医療に電子医療カルテを導入 食後高血糖の管理にも有利
- キーワード
- 医療の進歩 血糖自己測定(SMBG)

EHRは、地域の医療機関の連携ネットワークを活用し、患者の医療情報の共有化を目指すもので、医療の質の向上や医療費の削減といった目標を達成するための有力な手段として位置づけられている。
「EHRに切り替えた多くの診療所で、糖尿病患者の状態がより早く改善された」と、米ケースウエスタンリザーブ大学(オハイオ州)のRandall D. Cebul教授は話す。
EHRを導入したクリニックで診療を受けた患者は、紙カルテで記録したクリニックの患者に比べ、4つの標準的な治療をすべて受ける率が35%高かった。標準的な治療とは、眼の検査、肺炎双球菌のワクチン接種、腎臓病の管理、HbA1c値の測定。また、血圧、コレステロール、体重など5つの基準についても、EHRを導入したクリニックでは、5つすべての基準を満たす割合が15%高い44%に上った。
糖尿病の治療の焦点となるのはHbA1c値の低下だが、現在では食後高血糖も重視されようになっている。食事を開始してから2時間後の血糖値である「食後血糖値」が高いと、網膜症や動脈硬化、酸化ストレス、炎症、血管内皮の機能不全など、さまざまな障害が起こりやすくなる。EHRを導入すると、食後血糖値を管理する上でも有用であることが示された。
電子医療カルテによる管理は、医師と患者とのコミュニケーションがより活発になり、医薬品の適正使用に関する勧告が促され、医療ミスも減少すると考えられる。米オバマ政権では、電子医療カルテへの移行が治療を向上しコスト削減につながるものとし、医療制度改革の中心に据えられている。
Electronic Health Records and Quality of Diabetes Care
The New England Journal of Medicine, Med 2011; 365:825-833September 1, 2011
New Research Finds EHRs Improve the Quality of Diabetes Care(米国保健厚生省)
関連ページ
国内で使用できる血糖自己測定器の一覧(糖尿病リソースガイド)
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