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2010年11月17日
インスリン治療を50年以上継続している患者さんを表彰 第8回「リリー インスリン50年賞」
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日本でも2003年の表彰が開始され、昨年までに28名の患者が受賞し、インスリン治療を行っている多くの糖尿病患者に勇気と希望を与えている。
第8回となる今年は5名が受賞した。表彰式で受賞者は50年以上にわたる糖尿病との付き合い方や、糖尿病患者さんへの励ましのメッセージを、明るくほがらかに、力強く話した。
受賞者には、名前を刻印した純銀製の特製メダルや、世界糖尿病デーのシンボルカラーに染められた「青いバラ」、大きな拍手が贈られた。
「糖尿病の治療は、昔はこんなに大変だった」

第8回「リリー インスリン50年賞」受賞者
田中榮子さん(神奈川県、インスリン治療歴54年)
加藤知子さん(東京都、インスリン治療歴52年)
南木典子さん(東京都、インスリン治療歴50年)
詳細は日本イーライリリーの患者さん向け糖尿病情報サイト「Diabetes.co.jp」で近日に公開される予定。過去の受賞者や主治医インタビューなどを見ることができます。
インスリンは1921年にバンティングとベストによって発見された。世界で初めてのインスリン製剤は、イーライリリー社によって1923年に発売された。糖尿病治療における画期的な薬とされている世界初のヒトインスリン「ヒューマリン」は1982年に発売された(日本では1986年に発売)。
インスリン製剤の進歩は著しく、その後もさまざまなタイプのインスリン製剤が開発された。患者にもっとも適した製剤を適切に注射することで、高い治療効果を得られるようになっている。
医療技術が進歩し、インスリン注射用の針が改良され、ほとんどの人は「注射していることさえも感じない」というほど、注射針は細く短くなった。現在、ペン型注入器に使われている注射針には、先端で0.23ミリと驚異的に細く、長さも4ミリと米粒ほどの大きさのものがある。
現在のペン型注入器は、きわめて高い精度でインスリンを注入でき、デザインも洗練されている。一見して注入器に見えず患者の心理的負担の軽減にも役立っている。インスリン製剤と注入器が一体になった扱いやすいキット製剤もある。
しかし、受賞した患者がインスリン治療を始めた50年前には、インスリン治療には現在では想像できないような多くの困難が伴っていた。
特に糖尿病小児の患者や家族にとって、糖尿病とともに生きることは大変な苦労が伴った。現在は多くの患者が加入している患者会は当時はなく、糖尿病に対する社会的な理解も普及していなかった。周囲の人たちの温かい気配りで治療を続けられても、就職や進学のときに適切な理解を得られないことも多かった。
50年前はインスリンの自己注射は原則として認められておらず、患者は医療機関に通いインスリン注射を行っていた。近所に医療機関がなければインスリン治療を続けるのが難しいので、「病院の近所に引っ越した」という患者もいる。インスリン自己注射が公認され健康保険に適用されたのは、1980年代に入ってからのことだ。
当時は血糖測定は大きい病院でしかできなかったので、多くの医師は尿糖をみながら治療をしていた。また、日常での血糖値を知ることのできる便利な血糖自己測定器も、その当時はなかった。
日常で行う血糖自己測定により、患者は自分の血糖値を知り、インスリン注射量を決められた範囲内で調節し、より良好な血糖コントロールを目指すことができる。その血糖自己測定は1986年に健康保険に適用された。
また、過去1〜2ヵ月の平均血糖を反映するHbA1cは、血糖コントロールの指標にも用いられており、糖尿病と診断するための検査項目に加えられ糖尿病療養に欠かせない。そのHbA1cの測定法が開発されたのは1970年代。現在では健康診断などでも広く普及しているHbA1c検査は、50年前にはもちろんなかった。
糖尿病医療の進歩の歴史について、下記ページで詳しく知ることができる
糖尿病医療の歩み 私の糖尿病50年(後藤由夫 先生)
インスリン注射と血糖自己測定(池田義雄 先生)
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