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2010年11月17日
ウォーキング習慣は脳の健康にも良い よく歩く人は「年をとらない」
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- 運動療法

研究は米国で実施されている「心臓血管健康・認知力研究(CHS-CS)研究」の一部として実施された。対象となった299人は研究開始時に認知機能障害のみられなかった健康な成人で、平均年齢は78歳だった。
参加者に「週に何ブロック歩くか」といった形式で身体活動量について答えてもらい、9年後に高解像度のMRI検査で脳の灰白質の容積を検査し、さらに4年後(調査開始から13年後)に認識機能障害の医学的な診断を受けてもらった。
その結果、週に平均10〜15キロメートル(6〜9マイル)以上、あるいは72ブロック以上を歩いた人では、まったく歩かなかった人に比べ、脳の灰白質の容積が多いことが分かった。脳の特定領域の体積が大きい人では、認知症や認知機能障害を発症するリスクが低くなった。
週に10〜15キロメートルは、1日に換算すると約1.4〜2キロメートル程度。「毎日の通勤距離がそれくらいに相当する」という人も多いだろう。通勤などの帰り道にバスや車を使わずに歩いたり、少し遠回りをすれば、ウォーキングの距離を増やすのはさほど難しくない。
ただし研究では、歩く距離が長いほど灰白質が多くなるというわけではなく、72ブロックでも300ブロックでも有意差はみられなかったという。
「認知能力と脳の容積には関連がある。研究では、ウォーキングが脳の健康に良い影響をもたらすことが分かった。ウォーキングは日常の生活の中で容易にできる運動だ」と研究者は述べている。
「中高年が運動を習慣的を行うと、生活習慣病予防につながるだけでなく、認知症やアルツハイマーの前段階の物忘れや記憶症を予防できる可能性がある。保健指導で運動を勧めることは、ますます重要になっている」。
Walk Much? University of Pittsburgh Study Shows It May Protect Your Memory Down the Road(ピッツバーグ大学)
Physical activity predicts gray matter volume in late adulthood
Neurology October 19, 2010 vol.75 no.16 1415-1422
運動をすると、体のブドウ糖や脂肪酸の利用が促され、血糖が低下する。運動を習慣として続けると、インスリン抵抗性が改善する。新肺機能や運動能力の向上にもつながり、血糖コントロールを改善しやすくなる。
運動療法の指導では、ウォーキング、自転車エルゴメータ、ジョギング、水泳などの運動が勧められることが多いが、運動のためにまとまった時間がとれなくても、工夫をすれば毎日の生活の中で身体活動量を増やすことはできる。
糖尿病の運動を紹介している米国のビデオ
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