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2010年10月21日
2型糖尿病患者が生活習慣を改善し合併症を予防 5千人を4年間調査
この研究は、米国立衛生研究所(NIH)や米疾病対策センター(CDC)の提供を受け実施されている、2型糖尿病の集約的生活習慣介入プログラム「Look AHEAD (Action For Health in Diabetes)」の研究グループが発表したもの。
この研究は、食事でのエネルギー摂取量を適正にコントロールし、運動を増やすことで、どれだけ脳卒中や心血管疾患の発症を減らすことができるかを実際に調べるために実施されている多施設共同無作為研究。
研究は米国の16の医療機関で4年間にわたり続けられ、過体重や肥満のある2型糖尿病患者5145人が参加した。登録時の参加者の年齢は45〜76歳(平均年齢58.7歳)だった。
参加者は2つのグループに無作為に割り当てられた。1つめのグループは、積極的な生活習慣介入プログラムを受けてもらう「生活習慣介入群」。生活習慣改善を指導する専門のカウンセラーが付き、個人や集団で参加するセッションを定期的に実施した。参加者には、適正なエネルギー摂取量の食事と習慣的な運動を続けてもらい、目標を達成しやすくするため、食事と運動の内容を日記に記録してもらった。
最初の1年間で体重を7%減少し、その後その体重を維持することを目標にした。毎月1回以上、電話や電子メールで糖尿病教室への参加を呼びかけるなど、積極的な指導を行った。
もう1つのグループは、糖尿病についての教育を受けてもらう「糖尿病サポート群」で、食事や運動、社会的支援について話しあう集団セッションを年に3回参加してもらったが、体重の目標値などを定めた厳しい指導は行わなかった。
その結果、どちらのグループもコレステロール値などが減少したが、生活習慣介入群の方がより良好な結果になった。2つのグループでの差は最初は大きく、その後は時間が経過するにつれ差が縮まったが、4年間にわたる平均差はかなり大きくなった。
生活習慣介入群では体重が平均6.2%減少したのに対し、糖尿病指導群群では0.9%にとどまった。また、運動能力、血糖値コントロール、血圧、HDL(善玉)コレステロール値や中性脂肪値が大きく改善した。これらは、心血管疾患の危険性を低下させるために有用だ。
一方、糖尿病サポート群ではLDL(悪玉)コレステロールが改善したが、これはコレステロール降下薬で治療した効果によるものが多かった。
この研究は10年以上続けられる予定。参加した患者の94%以上が研究を開始して4年後に、研究への参加を続けることを希望しているという。
「過体重や肥満のある2型糖尿病患者では、長期にわたり血糖コントロールと生活習慣を改善することが、心疾患の危険性を低下させるのに大変に有用であることが示された。どちらも糖尿病によって起こる合併症を長期的に予防するために必要だ」と米国立糖尿病・消化器病・腎疾患研究所(NIDDK)のGriffin Rodgers氏は話す。
「4年にわたる集約的な生活習慣改善により、健康的な体重を維持し、心血管疾患の危険因子を減らせることを確かめられたのは重要だ」とブラウン大学ウォーレン・アルパート医学部のRena Wing氏は述べている。
この研究は医学誌「Archives of Internal Medicine」9月27日号に発表された。
米国では肥満が急速に増えており、成人6割以上で過体重や肥満がみられる。肥満は、糖尿病や心疾患の発症につながる。また、米国の糖尿病有病数は約2400万人とみられているが、その多くは糖尿病と診断されていない。
適切な治療を受けずに高血糖を放置していると、その期間が長くなるほど、目、神経、心臓、腎臓、血管に深刻な損傷がもたらされる危険性が高まる。また、糖尿病は腎不全、足病変、糖尿病網膜症から起こる失明、心疾患、脳卒中の原因になる。
Lifestyle intervention improves risk factors in type 2 diabetes(米国立衛生研究所)
Long-term Effects of a Lifestyle Intervention on Weight and Cardiovascular Risk Factors in Individuals With Type 2 Diabetes Mellitus
Archives of Internal Medicine, Vol. 170 No. 17, 2010
Look AHEAD (Action For Health in Diabetes) trial
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