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2010年10月21日
秋田県の糖尿病対策 県糖尿病療養指導士をスタート
県と医療機関が糖尿病対策の強化にのりだしたのは、糖尿病患者とその予備群の数が増加しているからだ。県健康推進課によると、県内の糖尿病有病数は1999年は2万1000人だったが、2005年には3万2000人に増加した。県内の成人の約3割が糖尿病かその予備群と推定され、その割合は60歳以上では4割近くに上るという。

秋田県が県高栄養士会に委託して作成した、料理レシピや、生活習慣改善を勧める内容を記載したカード。県内スーパーマーケットや道の駅、スーパーマーケットの店頭、市町村イベント、地域での講習会などで配布されている。これまでに、夏バージョン、秋バージョンが発行された。
減塩&野菜を食べよう県民運動
秋田県は脳卒中など脳血管疾患による死亡率が全国でもトップ。指摘されているのは、県の食生活の特徴である食塩のとりすぎと栄養の偏り。そのため「減塩」と「野菜摂取」に、官民をあげて取組んでいる。
糖尿病治療の目的は、合併症を予防すること。高血糖が長期にわたると、糖尿病に特徴的な三大合併症(神経障害、網膜症、腎症)のほか、心疾患や脳卒中などを発症する危険性が高まる。
食後高血糖を早期に発見し治療を開始し、改善することも、糖尿病の初期段階ではとりわけ重要となる。食後高血糖は、食後の血糖値が目立って高い場合をさす。日本人で2型糖尿病を発症する人の中には、欧米人に比べインスリンの分泌量が少ない「インスリン分泌不全タイプ」が多い。そうした人では初期の段階では、まず食後高血糖が起こることが多い。
食事をして食物が吸収されると血糖が増えるが、正常の人ではそれに応じた量のインスリンが膵臓から分泌され血糖値はそれほど上昇しない。しかし、分泌されるインスリンの量が足りなかったりタイミングが遅れるなど、十分に作用しないと高血糖になる。
最近の研究で、食後高血糖は動脈硬化性疾患の重大な危険因子であることが分かってきた。同県では心臓病や脳卒中などの生活習慣病で亡くなる人が6割以上に上る。血管内皮の損傷や動脈硬化につながるので、早期の段階から糖尿病の治療を開始することが重要と強調している。
注意しなければならないのは、食後高血糖やインスリン分泌低下は、自覚症状がないので、医療機関などて検査や健診を受ける以外に、患者自身ではなかなか分からないことだ。
秋田県で行われた国保保健のモデル事業で、糖尿病と診断されたことのない230人の参加者を対象に自己血糖測定を実施する研究調査が行われた。食後血糖値が180mg/dL以上の人に限って行った検査では、47%と半数近くが空腹時血糖が110mg/dL未満だった。空腹時血糖値が正常でも食後に高血糖になる人が多く、2型糖尿病の危険性が高いことが示された。
深刻化する糖尿病の脅威に対策するために、日本糖尿病学会が認定する専門医や、糖尿病の専門知識を習得した看護師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士らで構成される日本糖尿病療養指導士の制度が設けられている。しかし、中核医療機関を中心とした専門医や療養指導士は数が限られるので、県全域の糖尿病患者や予備群をカバーするのが難しい。また、糖尿病を改善・予防するのために、医療と保健分野の緊密な協力が不可欠となる。
そこで、医療関係者が職域を超えて対策に取り組むのため、秋田県で独自に開始された「秋田県糖尿病療養指導士」の育成。看護師や管理栄養士、薬剤師などのほかに、歯科医師や保健師なども認定される。
医療分野での意欲的な動きと連動するように、県も本年度から本格的な啓発活動を展開している。世界糖尿病デーの11月14日に県民フォーラムを開催するほか、糖尿病予防レシピなどを記した「啓発カード」を配布、県内事業所に栄養士を「メタボ予防栄養相談員」として派遣し、食事や栄養に関する講座を設ける栄養相談事業の実施するなど、啓発・予防活動をもりたてようとしている。

運動は、心臓病や高血圧、2型糖尿病、骨粗鬆症などの改善・予防に役立ち、また高齢者の寝たきり予防にも有用だ。一方で、秋田県は冬季に積雪が多い地域が多く、屋外で運動できない場合がある。
県健康福祉部では「近くに運動できる施設がない場合には、室内で手軽に運動できるメニューを知っておくと良い」として、室内での運動メニューを紹介しているほか、「雪かきもやり方次第では、健康づくりの運動になる」として、少しでも前向きに雪かきに取り組んでもらおうと小冊子を作成した。
雪かきを30分行ったときの消費エネルギーは、体重50kgの人では約130kcal。身体活動の強度を示すメッツで比較すると、軽いジョギングと同程度になるという。しかし、寒い時期に野外で行う雪かきは、特に糖尿病のある人や高齢者、健康上のリスクのある人では危険もともなう。
県健康福祉部では「雪かきをするときは心拍数や時間、頻度に注意してほしい。できるだけ日中の気温の高い時間帯に行ったり、1回の投雪量を少なくするなどの工夫もほしい。雪かきの前に準備運動をすることも必要。医療機関で治療を受けている人は、必ず主治医に相談してもらいたい」と述べている。
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