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2010年10月20日
トランス脂肪酸:栄養表示を見直し 消費者庁がガイドイラン案
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- 食事療法
トランス脂肪酸を過剰に摂取すると、血中のLDL(悪玉)コレステロールやHDL(善玉)コレステロールなどに悪影響がもたらされ、脂質異常や血管炎症などが起こりやすくなると考えられている。
世界保健機関(WHO)は2003年、1日当たりのトランス脂肪酸の平均摂取量を、最大でも総エネルギー摂取量の1%未満にするよう勧告を行った。その後の調査報告をもとに、2008年に策定した報告書では、1%未満というレベルの見直しを課題として指摘している。また、米国やカナダ、香港など、食品の含有量の表示を義務づけている国や地域も多い。
日本人の1日当たりのトランス脂肪酸の平均摂取量は、総エネルギー摂取量の0.6%で、WHO上限値の半分程度。海外に比べて摂取量が少ないので、日本では原材料や食品添加物を表示する原材料表示は義務付けられているが、含有量の表示などはメーカーに委ねられ対策はとられてこなかった。
しかし、最近の研究で「若年層や女性などで摂取量が1%を超えている」との報告があり、また消費者から表示を求める声がでており、消費者庁ではガイドラインの策定を検討していた。
東大大学院社会予防疫学研究室などが2009年に発表した研究では、全国の15大学栄養学科の女子学生1136人を対象に、トランス脂肪酸の摂取量と中性脂肪などの関連が調べられた。平均摂取量は0.9%と高く、若い集団でもトランス脂肪酸の摂取量が多いことが分かった。また、摂取量が高い人ほど腹囲が大きく、血中中性脂肪、HbA1cが高い傾向がみられた。
別の研究では、30〜69歳の男女225人を対象に16日間の食事から摂取量を推定。特に都市部に住む30〜49歳の女性の摂取量が高く、菓子類の影響が大きいことが分かった。
国内の食品メーカーでは、含有量を減らしたり、ホームページなどで公表する動きがある。マーガリン業界では、トランス脂肪酸の製品100g中の含有量を1.8gに減らし、低減に取り組む外食産業も増えている。
ガイドライン案では、トランス脂肪酸の含有量に加え、飽和脂肪酸やコレステロールの含有量も併せて表示するよう求める方針。「ゼロやフリー、ノンなど強調表示する場合は、食品100グラム当たり0.3g未満でなければならない」などとしている。
消費者庁は今後、学識経験者や業界関係者などによる検討会を設置し、トランス脂肪酸を含めた栄養成分の表示義務化の範囲をどこまで広げるか検討を進める。一般からの意見も10月29日まで受け付けている。
【表示方法】
トランス脂肪酸の含有量の表示をする場合には、栄養表示基準に定める一般表示事項に加え、飽和脂肪酸及びコレステロールの含有量を表示する。
名称等:「トランス脂肪酸」とし、他の栄養成分とは区別して表示。
単位:100g若しくは100ml又は1食分、1包装その他の1単位当たりの含有量を一定の値により記載し、単位はグラム(g)。
誤差:認められる誤差範囲は、プラス20% 。
0g表示:食品100g当たり(清涼飲料水等にあっては100ml当たり)のトランス脂肪酸の含有量が0.3g未満である場合には、0(ゼロ)gと表示することができる。
【強調表示】
●「含まない旨」の表示:
「無」「ゼロ」「ノン」「フリー」その他これに類する表示
〔次のいずれにも該当しない場合には、「含まない旨」の表示ができる〕
・食品100g当たり(清涼飲料水等にあっては100ml当たり)のトランス脂肪酸の含有量が0.3g以上である場合。
・食品100g当たりの飽和脂肪酸の量が1.5g(清涼飲料水等にあっては、食品100ml当たりの飽和脂肪酸の量が0.75g)以上であり、かつ、当該食品の熱量のうち飽和脂肪酸又はトランス脂肪酸に由来するものが当該食品の熱量の10%以上である場合。
●「低減された旨」の表示:
比較対象する食品名及び低減量又は割合を表示。
【分析方法】
国際的に推奨されている分析方法であるAOCS Ce1h-05又はAOAC 996.06による。他の分析法を用いる場合には、これらと同等の性能を有する分析法で行う。
脂質と脂肪酸のはなし(消費者庁食品表示課)
Association of trans fatty acid intake with metabolic risk factors among free-living young Japanese women
Estimation of Trans Fatty Acid Intake in Japanese Adults Using 16-Day Diet Records Based on a Food Composition Database Developed for the Japanese Population
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