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2009年06月12日

良い眠りは病気の予防になる 睡眠不足で高血圧の危険

 十分な睡眠時間をとっていない中高年では高血圧になる可能性が高くなるという調査研究が米国で発表された。5年間に睡眠時間が平均1時間少ないと、高血圧になる危険が37%高くなるという。
睡眠不足の中高年は高血圧の危険が高くなる
 調査対象となったのは、33歳から45歳(平均年齢40歳)の578人。血圧は2000年と2001年および2005年と2006年に測定し、睡眠については手首アクティグラフを使用し3日連続で測定し、2003年と2005年に2度にわたり睡眠の持続と質について調べた。睡眠時間を8時間以上とっている人は1%程度で、平均睡眠時間はおよそ6時間だった。

 その結果、睡眠時間が5年以上少なかった群では高血圧になる割合が高く、睡眠時間が減るごとに危険が高まることがわかった。睡眠時間が6時間の群と5時間の群を比べたところ、5時間の群では高血圧になる割合が37%高くなっていた。

 眠っている間に呼吸に異常が起こる「睡眠時無呼吸」は、睡眠中のいびきや昼間の眠気などをともなうことが多い。睡眠時無呼吸のある人では高血圧の危険が高くなることが知られているが、今回の研究では睡眠の質の低下がより深刻であることが示唆された。研究者らは「睡眠の持続と質を向上することで高血圧を減らせる可能性がある」として、睡眠の質を高めることが大切だと強調している。

 この研究は「若年成人における冠動脈リスク発症(CARDIA)研究」に付随して、米シカゴ大学保健学部の研究者らによって行われたもので、医学誌「Archives of Internal Medicine」に6月8日号に発表された。

睡眠の質を高める睡眠術
 最近の研究で、睡眠が不足していると高血圧、肥満、2型糖尿病、心疾患などの生活習慣病の危険が増すことがわかっている。日中を活動的に過ごすために質の良い睡眠が必要だが、高齢者では十分な睡眠をえるのが難しい場合がある。夜中に目が覚めたり、朝早く起きたり寝不足や睡眠の質について悩む人は多い。

 からだには1日の間に起床・活動・睡眠のリズムを作りだす「体内時計」が備わっている。体内時計がつくりだす生体のリズムは、昼間はすっきり目覚め、夜はぐっすり眠るという昼夜のメリハリをつけることが大切だ。規則的な生活を送っていれば自然に夜は眠くなり、朝は目が覚めるようになる。

 なんらかの理由で生活のリズムが乱れると、夜眠れない、朝起きられないといった不調が現れる。生活のリズムを速やかに規則的な状態に戻すことが大切となる。

 米国睡眠医学会では、質の良い睡眠を得るために、次のことを勧めている。

  • 起床・就寝時刻を決め習慣化する
     起きる時刻と寝る時刻が毎日異なると、体内時計の調子が狂う。起きる時間を決めて「早起き早寝」を心がける。

  • 日中起きている時間はベッドに近づかないようにする
     朝は日光を浴びて、しっかり目覚めるようにする。昼間の眠気が強いときは仮眠で乗り切る。ただし、1時間より少なく、午後3時より遅くならないようにする。

  • 睡眠を妨げるカフェイン、アルコール、煙草を使わないようにする
     これらは睡眠の質の低下につながるので、午後や夜は避けたほうがよい。就眠前の食べ過ぎや激しい運動も刺激になるのでよくない。

  • 休日の‘まとめ寝’は逆効果
     睡眠が不足しているからといって、週末に遅くまで寝ていると睡眠のリズムが狂う。疲れている日は早めに寝るようにしたほうが効果的。

  • 入眠前の入浴、軽食、読書などの習慣を見直す
     リラックスできると思っていることが、実は睡眠を妨げているかもしれない。就眠前の入浴は、お湯が熱すぎると覚醒効果があるので注意。37度から40度のぬるま湯であると、リラックス効果がある。

  • 寝室を暗く、静かに、少し涼しくしておくと眠りやすくなる

  • ベッドに心配事や悩み事をもっていかないようにする
     睡眠はリラックスするための時間。眠れないことに過度の不安を抱かない。
Archives of Internal Medicine 2009; 169(11): 1055-1061 (Abstract)
SleepEducation.com(米国睡眠医学会)

関連情報
仮眠の質を高める秘訣は「ゆったり眠りしっかり起きる」(糖尿病NET)
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[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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