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2024年07月11日

タバコは糖尿病や肥満のリスクを高める 喫煙している人は食事が不健康 電子タバコは禁煙の役に立つ?

 喫煙は糖尿病のリスクを高めることが知られている。タバコを吸うと血糖値が上昇しやすくなり、糖尿病の合併症のリスクが高まる。

 タバコを吸う習慣のある人は、吸わない人に比べ、食事が不健康になりやすいことが、8万人超の成人を対象とした大規模な調査で明らかになった。タバコを吸う人は、内臓脂肪がたまりやすいことも分かった。

 禁煙を上手に成功させる方法が求められている。電子タバコを利用している人は、禁煙に取り組むことが多いという調査結果が発表された。

タバコは糖尿病のリスクを高める

 喫煙は糖尿病のリスクを高めることが知られている。タバコを吸う人は禁煙の取り組むことが勧められる。

 タバコは糖尿病のリスクを上昇させる。タバコを吸うと血糖値が上昇しやすくなる。さらには、血糖値を下げるインスリンの働きが妨げられる。

 日本人を対象とした大規模な調査で、タバコを吸う人は、吸わない人に比べて、2型糖尿病を発症するリスクが38%高くなり、吸うタバコの本数が増えるほど、糖尿病リスクは高くなることが示されている。

 糖尿病のある人がタバコを吸い続けると、治療の妨げになり、脳梗塞・心筋梗塞・腎臓病などの合併症のリスクが高まることも明らかになっている。

 禁煙をすれば、糖尿病リスクはそれだけ低下する。禁煙にともなう一時的な体重増加により、血糖値が上昇しやすくなるという報告もあるが、禁煙による健康を改善する効果は、体重増加のデメリットをはるかに上回る。

タバコを吸う人は食事が不健康になりやすい

 タバコを吸う習慣のある人は、吸わない人に比べ、食事が不健康になりやすく、食べる量も少ない傾向があることが、8万人超の成人を対象とした英国の調査で明らかになった。

 研究は、英国のレスター大学バイオメディカル研究センターなどによるもの。詳細は、イタリアのベニスで5月に開催された欧州肥満学会(EASO)の学術集会で発表された。

 喫煙者は非喫煙者に比べて、一般的に体重とBMI(体格指数)が低く、禁煙すると体重が増えやすいことが知られている。喫煙者は喫煙によって食欲と体重をコントロールしているという報告もある。

 研究グループは、2004~2022年に英国で実施された健康評価プログラムで収集した、約8万3,000人の成人のデータを解析した。対象となったのは、6,454人の平均年齢40歳の喫煙者と、7万7,327人の平均年齢44歳の非喫煙者。

喫煙者は食事に塩や砂糖を加えることが多い

 その結果、喫煙者は非喫煙者に比べて、食事を抜く頻度が2倍多く、1日の食事回数が少なく、3時間以上食事をとらない可能性が50%高く、3食のあいだに間食をすることは35%低い傾向が示された。

 さらに、とくに男性の喫煙者は食事に塩や砂糖を加えることが多いことも示された。喫煙者は、食事に塩を加えることが70%多く、砂糖を加えることも36%多いことが分かった。揚げ物を食べることも多く、不健康な食習慣におちいりやすいことが明らかになった。

 「喫煙者が禁煙に挑戦するのをためらったり、失敗してしまう理由で多いのは、禁煙後の体重増加への心配です」と、ラフバラー大学で肥満に関連する慢性疾患を研究しているスコット ウィリス氏は言う。

 「研究では、タバコを吸う人は揚げ物を頻繁に食べ、食事に塩や砂糖を加えることが多く、食事の質が低下しやすく、食べる量も減りやすいことが示されました。禁煙の成功率を高めるために、栄養と体重管理に関するサポートを提供することも必要です」としている。

タバコを吸う人は内臓脂肪がたまりやすい

 タバコを吸う人は吸わない人に比べて、体重が少ない傾向がみられるが、実は内臓脂肪はたまりやすいことが、デンマークのコペンハーゲン大学による別の大規模な調査で明らかになった。

 生涯にわたり喫煙を続けると、心臓病・脳卒中・糖尿病・認知症のリスクを高める内臓脂肪を増えやすいことが示された。

 研究グループは、喫煙をはじめた約120万人と、喫煙を続けている約45万人以上を対象に調査し、体脂肪の分布に関しては60万人以上を対象に調査した。

 メンデルランダム化(MR)と呼ばれる統計分析法を使用して、喫煙が腹部脂肪の増加を引き起こすかどうかを判定した。

 その結果、喫煙をはじめて、生涯にわたり続けると、内臓脂肪が増えやすくなることが明らかになった。

 「喫煙を防止し、喫煙習慣のある人には禁煙を促すことが、腹部の内臓脂肪の蓄積と、それに関連するさまざまな慢性疾患を減らすのに役立つ可能性があります」と、同大学基礎代謝研究センターのゲルマン カラスキージャ氏は述べている。

電子タバコは禁煙の役に立つ?
火を使わない電子タバコを使っていた人は3割が禁煙

 従来の紙巻きタバコと異なる火を使わない電子タバコを利用する人は増えている。紙巻きタバコを吸っていた人が電子タバコに切り替えることも多い。

 電子タバコはこれまで、タバコへの依存を高めるので、禁煙がより難しくなるとみられていた。しかし、電子タバコに切り替えた喫煙者が、禁煙に取り組む可能性はむしろ高くなっているという最新の調査結果が発表された。

 「これまで、電子タバコが禁煙に役立つかどうかについて、相反する結果が出ています。禁煙に役立つという調査結果と、役に立たないという結果もあります」と、ニューヨーク州のロズウェルパーク総合がんセンターのカリン カザ氏は言う。

 「今回の調査では、電子タバコの利用者のうち、禁煙に取り組む人はむしろ多いという結果になりました。その理由はよく分かっていませんが、電子タバコはニコチンをより効果的に送達することが影響している可能性があります」としている。

 研究グループは、全米各地でタバコ使用について調査した縦断調査である「タバコと健康に関する人口調査(PATH)」の対象となった成人1万3,640人の2013~2016年のデータを解析した。

 その結果、電子タバコを使用している人と使用していない人の禁煙率の比較では、2013~2016年には15.5%と15.6%と差がなかったが、2018~2021年には20%と30.9%となり、電子タバコの使用者の禁煙率が高くなった。

Smoking and the risk of type 2 diabetes in Japan: A systematic review and meta-analysis (Journal of Epidemiology 2017年12月)
UK study in over 80,000 adults finds smokers tend to eat less and have a less healthy diet than non-smokers (レスター大学バイオメディカル研究センター 2024年5月13日)
UK study in over 80,000 adults finds smokers tend to eat less and have a less healthy diet than non-smokers (欧州肥満学会 2024年5月12日)
The association of smoking with different eating and dietary behaviours: a cross-sectional analysis of 83,781 UK adults (欧州肥満学会 2024年5月12日)
The irony of smoking to stay thin: smoking increases belly fat (英国依存症研究協会 2024年3月21日)
Estimating causality between smoking and abdominal obesity by Mendelian randomization (Addiction 2024年3月20日)
E-cigarette users now more likely to quit traditional cigarettes (オックスフォード大学プレス 2024年4月3日)
Divergence in Cigarette Discontinuation Rates by Use of Electronic Nicotine Delivery Systems (ENDS): Longitudinal Findings From the United States PATH Study Waves 1-6 (Nicotine & Tobacco Research 2024年4月3日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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