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2024年02月05日

若いときの強いストレスは年齢を重ねてから糖尿病や肥満のリスクを高める 軽い運動をするとリスクは減少

 小児期から若年期に、強いストレスがかかった状態が続いた人が年齢を重ねると、高血圧・肥満・2型糖尿病などのリスクが上昇することが明らかになった。

 座ったまま過ごす時間を減らして、軽い運動や身体活動を行うようになると、ストレスが減り肥満のリスクが低下することも分かった。

 「人生の早い段階で、ストレスを管理して健康的な生活をおくる対策をすることが、その後の2型糖尿病や心臓病の予防・改善に役立つ可能性があります」と、研究者は述べている。

人生の早い段階からストレス管理が健康のカギに

 10代や20代の若者たちにとっても、心のメンテナンスは重要なテーマになっている。友達や家族との関係、引っ越しや転校、親の離婚などによる生活環境の変化、家族や親しい人との離別、学校の試験や課題、家庭内トラブルや虐待など、悩んでいる若者は多い。

 小児期から若年期に、強いストレスがかかった状態が続いた人が年齢を重ねると、高血圧・肥満・2型糖尿病などのリスクが上昇することが、276人の若者を18年追跡した南カリフォルニア大学の調査で明らかになった。

 研究グループは、米国で実施されている「南カリフォルニア小児健康調査」に参加した平均年齢6歳の小児を、若年期(平均年齢13歳および平均年齢24歳)まで追跡して調査した。

強いストレスがかかっていた若者は肥満や糖尿病のリスクが上昇

 参加者のストレスについて、4項目の知覚ストレススケールで測定し、それをもとに、▼長期にわたり一貫して高いストレスがかかっている群、▼長期にわたりストレスが減少している群、▼長期にわたりストレスが増加している群、▼長期にわたりストレスが少ない群に分けて比較した。

 その結果、小児期から若年期かけて、強いストレスがかかっていた若者は、高血圧・肥満・2型糖尿病など、心臓代謝性疾患のリスクが上昇することが明らかになった。

 10代から成人期にかけて、より大きなストレスを経験していた若者は、ストレスをあまり感じていなかった若者に比べて、時間の経過とともに、血管の健康状態が悪化しやすく、体脂肪や内臓脂肪の増加など、肥満のリスクが高くなる傾向が示された。

関連情報

生活スタイル改善などの介入が必要

 「一般的に、ストレスの自覚が強い人ほど、心臓代謝の健康状態が悪くなりやすいことが知られています」と、同大学で心血管疾患を研究しているファンチイ グオ氏は言う。

 「たとえば、高いレベルのストレスを経験している成人は、血管の健康状態が悪化し、収縮期血圧と拡張期血圧が高くなる傾向がみられます」としている。

 動脈硬化は、動脈の壁が厚くなり、硬くなること。中高年の人に生じる病態と思われがちだが、実は小児期や若年期から徐々に進行し、さまざまな病気の原因となることが知られている。

 若い人でも、頸動脈が肥厚し、血液がスムーズに流れにくくなっている場合がある。また、内臓脂肪がたまりすぎると、心血管疾患や2型糖尿病のリスクが高くなる。そのため、若いときから動脈硬化が進むのを予防することが重要になる。

人生の早い時期からストレス管理を

 米国心臓学会(AHA)は2017年に、小児期および若年期に強いストレスなどの逆境を経験した人は、年齢を重ねると、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の発症リスクが上昇することから、人生の早期から生活スタイル改善などの介入が必要とする声明を発表した。

 「心血管疾患、腎臓病、2型​​糖尿病、肥満などのあいだには、強い関連性があります。人生を通して健康を維持するために、若年期の早い時期から効果的にストレス管理を行うことが重要です」と、グオ氏は指摘している。

若い人も軽い運動や身体活動を行うと健康リスクは減少

体脂肪を減らす効果は軽い運動の方が高い

 小児期から若年期にかけて、座りっぱなしの時間が長く、運動不足の生活をしていた若者は、肥満になりやすいことが、英国のエクセター大学などによる別の調査でも明らかになった。

 座位時間を減らして、軽い運動や身体活動を行うようになると、ストレスが減り肥満のリスクが低下することも分かった。体脂肪を減らす効果は、軽い運動の方が中強度以上の運動よりも高いという。

 軽い運動の例としては、長い散歩、家事、ゆっくりとしたダンス・水泳・自転車こぎなどがあるという。

 研究は、英国で実施されている大規模コホート研究である「エイボン縦断的親子研究(ALSPAC)」に参加した11歳の子供6,059人を、24歳まで平均13年間追跡して調査したもの。

なるべく座位時間を減らして軽い運動を1日に3時間以上

 「子供や若者にとって、軽い運動や身体活動には、体脂肪の蓄積を防ぐ、縁の下の力持ちのような役割があることが分かりました」と、エクセター大学で保健・公衆衛生を研究しているアンドリュー アグバジェ氏は言う。

 「子供や若者は、なるべく座位時間を減らして、軽い運動を1日に3時間以上行うことが勧められます」としている。

 調査では、軽い運動や身体活動を行う時間が長い子供は、肥満のリスクは低いことが示された。一方、中強度から高強度の運動をしている子供でも、座ったまま過ごす時間が長いと、肥満のリスクは上昇することも分かった。

 小児期から若年期に、軽い運動を行うと、1分ごとに体脂肪量は3.6g減少する計算になる。軽い運動を積み重ねると、体脂肪の全体量の増加を9.5~15%に減少でき、1kg近く減らすことができるという。

 なお、13年間の追跡調査中に、調査に参加した子供の1日の座りっぱなしの時間は、小児期には約6時間だったが、若年期には9時間に増えた。その一方で、1日の軽度の身体活動の時間は、6時間から3時間に減った。

 この研究は、エクセター大学、東フィンランド大学、ブリストル大学、コロラド大学が共同で実施したもの。

Childhood stress linked to higher risk of high blood pressure, obesity, diabetes in adults (米国心臓学会 2024年1月17日)
Perceived Stress From Childhood to Adulthood and Cardiometabolic End Points in Young Adulthood: An 18‐Year Prospective Study (Journal of the American Heart Association 2024年1月17日)
Light exercise could be the key to reversing childhood obesity linked to sedentariness (エクセター大学 2023年12月21日)
Effects of accelerometer-based sedentary time and physical activity on DEXA-measured fat mass in 6059 children (Nature Communications 2023年12月12日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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