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2024年02月01日

「ブロッコリー」は糖尿病の人の強い味方 野菜の天然化合物が糖尿病リスクを減少 認知症予防にも

 ブロッコリーは、糖尿病の食事療法にも役立てたい野菜だ。ブロッコリーが、新たに「指定野菜」に加えられることが決まった。

 ブロッコリーに含まれる天然化合物である「スルフォラファン」が、インスリンの働きを良くするという研究が発表されている。

 ブロッコリーなどの野菜により、肥満や糖尿病の影響を打ち消せる可能性がある。

 野菜をよく食べ、色素成分であるカロテノイドを摂取している高齢者は、認知症のリスクが低いことも分かっている。

ブロッコリーが「指定野菜」に 日本でも人気の高い野菜

 ブロッコリーが、新たに農林水産省の「指定野菜」に加えられることが決まった。

 指定野菜とは、消費量が多く、国民の生活上の重要性が高い品目として、国が位置づける制度。これまでに、キャベツ・ダイコン・ハクサイ・ニンジン・トマトなど、14品目の野菜が指定されている。

 ここに2026年度から、ブロッコリーも加えられることになった。新たに指定野菜が追加されるのは、およそ50年ぶりだという。

 指定野菜になると、大規模な生産者に支払われる補助金が手厚くなり、安定供給につながると期待される。ブロッコリーの価格変動が抑えられ、安く買えるようになる可能性もある。

ブロッコリーは糖尿病の食事療法に役立てたい野菜

 ブロッコリーは、糖尿病の食事療法にも役立てたい野菜だ。日本ではブロッコリーの出荷量は年々増えている。

 ブッコリーやキャベツなどのアブラナ科の野菜に含まれる天然化合物である「スルフォラファン」が、血糖値を下げるインスリンの働きや分泌を悪くし、糖尿病を悪化させるタンパク質を減らすという研究を、東北大学が発表している。

 スルフォラファンには、脂肪細胞のエネルギー消費を増やし糖尿病や肥満を抑制する作用や、腸内細菌叢を改善し炎症を抑え、インスリン抵抗性を改善させる作用があることも報告されている。

 これまでも、ブロッコリー・キャベツ・芽キャベツ・大根・白菜・カリフラワー・クレソンなどのアブラナ科の野菜は、動脈硬化や、2型糖尿病・心臓病・脳卒中などの疾患を抑制するのに有用という研究が発表されている。

ブロッコリーは糖尿病に対する秘密兵器?

 ブロッコリーが、2型糖尿病患者の血糖管理に役立つ可能性があるという研究を、米国科学振興協会(AAAS)も発表している。

 スウェーデンのルンド大学は、97人の2型糖尿病患者を対象に12週間のランダム化比較試験を実施した。ブロッコリースプラウトの抽出物を濃縮して精製したスルフォラファンを投与した。

 その結果、スルフォラファンが投与された患者は、空腹時血糖値と1~2ヵ月の血糖値の平均をあらわすHbA1cが低下した。

 「スルフォラファンは、過剰なグルコース産生と耐糖能の悪化を、血糖降下薬であるメトホルミンと同程度に軽減しました」と、同大学糖尿病センターのアニカ アクセルソン氏は言う。

 米国や欧州では、メトホルミンが2型糖尿病の治療の第1選択治薬として利用されることが多いが、患者の人の15%は腎障害のリスクがあり、メトホルミンを服用できないという。

 スルフォラファンを含むブロッコリーなどの野菜により、肥満や糖尿病の影響を打ち消せる可能性があるという発見は希望がもてるとしている。

ブロッコリーを食べる習慣が認知症予防に

 ブロッコリーやホウレンソウ、ケール、カブの葉などの緑黄色野菜には、食物繊維や、ルテイン・ゼアキサンチン・リコピンといったカロテノイドも含まれる。

 カロテノイドは、野菜の色素成分で、体内で増えた活性酸素を除去する抗酸化作用がある。

 野菜を多く食べ、カロテノイドを摂取している高齢者は、認知機能が向上し、認知症やアルツハイマー病のリスクが低下する傾向があることが、米国のバージニア工科大学医学部による調査で明らかになっている。

 糖尿病の人はそうでない人と比べて、アルツハイマー病に1.5倍なりやすく、脳血管性認知症に2.5倍なりやすいという報告がある。

 ブロッコリーなどの野菜を食べる習慣が、認知症予防につながる可能性があるという報告は、糖尿病とともに生きる人にとっても気になる情報だ。

野菜を食べる習慣は脳の健康を保つのにも有用

 研究グループは、「ラッシュ大学記憶・老化プロジェクト」に参加した、シカゴ在住の1,000人以上の参加者の食事と認知能力の関連を、10年以上追跡して調査した。

 その結果、10年間にカロテノイドやルテイン、ゼアキサンチンなどの摂取量がもっとも多かった群では、アルツハイマー病の発症リスクが50%低いことが分かった。

 「アルツハイマー病を発症した人の脳では、野菜などに多く含まれる、ルテインやβカロチンといった抗酸化作用のある成分が不足していることも分かりました」と、同大学医学部基礎科学教育学科のキャスリーン ドリー教授は言う。

 「カロテノイドなどを豊富に含む野菜を食べることは、あらゆる年齢層で、脳の健康状態を保つのに有用と考えられます」としている。

Sulforaphane decreases serum selenoprotein P levels through enhancement of lysosomal degradation independent of Nrf2 (Communications Biology 2023年10月19日)
Could broccoli be a secret weapon against diabetes? (米国科学振興協会 2017年6月14日)
Sulforaphane reduces hepatic glucose production and improves glucose control in patients with type 2 diabetes (Science Translational Medicine 2017年6月14日)
Eat your vegetables to protect your brain (バージニア工科大学 2023年8月11日)
Low Xanthophylls, Retinol, Lycopene, and Tocopherols in Gray and White Matter of Brains with Alzheimer's Disease (Journal of Alzheimer's Disease 2023年6月)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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