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2023年10月17日

30歳で糖尿病になると寿命が14年短くなる 糖尿病を管理して合併症を防げば長生きできる

 30歳で2型糖尿病と診断された人は、平均余命が14年短くなる可能性があるという研究が発表された。

 50歳で糖尿病と診断された人も、平均余命は6年短くなるという。19ヵ国の151万人超のデータを分析した研究で明らかになった。

 一方、糖尿病とともに生きる人は、糖尿病の管理を良好に維持して、脳卒中や心筋梗塞などの合併症を予防すれば、平均余命を大幅に延ばせることも示された。

 糖尿病を良好に管理できれば、医療費も減らせる

若くして糖尿病と診断される人が世界的に増加

 不健康な食事、座ったまま過ごす時間が長い生活スタイル、肥満の増加などを背景に、世界中で2型糖尿病を発症する人が急速に増えている。

 世界で糖尿病とともに生きる人の数は、2021年に5億3,700万人に達した。若くして糖尿病と診断される人も増えている。

 糖尿病の人が、血糖の管理が良好でなく、血糖値が高い状態が続くと、心臓病・脳卒中・腎臓・がんなどのさまざまな合併症が引き起こされる。

 平均余命は、ある年齢の人が、平均してあと何年生きられるのかを示したもの。これまでの研究で、2型糖尿病の人は糖尿病のない人に比べ、6年早く死亡することが示唆されている。

 しかし、この平均余命の短縮が、診断時の年齢に応じてどのように変わるかについてはよく分かっていなかった。

 そこで英ケンブリッジ大学などの国際研究グループは、英国バイオバンクおよび19の高所得国の96件のコホート研究に参加した151万人を超えるデータを解析した。

若い年齢で糖尿病と診断されるほど平均余命は短くなる

 その結果、2型糖尿病と診断されるのが早ければ早いほど、平均余命の短縮は大きくなることが明らかになった。糖尿病の早期診断が10年早まるごとに、平均余命は4年間短縮されるという。

 30歳で糖尿病と診断された人は、そうでない人に比べて、平均余命は14年短くなる。40歳で診断された人は10年、50歳で診断された人は6年、それぞれ余命が短くなることが示された。

 「2型糖尿病は、以前は高齢者がかかる病気とみなされていましたが、今では若くして糖尿病と診断される人も増えています」と、ケンブリッジ大学心肺研究所のエマヌエーレ ディ アンジェラントニオ教授は言う。

 「糖尿病が生活にもたらす影響を考えると、2型糖尿病のリスクの高い人を早期に特定し、糖尿病を予防したり、発症を遅らせるために、食事や運動などの生活スタイルの改善を支援する仕組みが必要とされています」としている。

 糖尿病の人の平均余命が短くなる原因の多くは「血管死」、つまり心臓病・脳卒中・腎臓病などに関連したものであることが分かった。がんなどの他の合併症も、平均余命を短縮するという。

糖尿病合併症を予防すれば余命を大幅に延ばせる

 一方、良い知らせもある。糖尿病とともに生きる人は、糖尿病の管理を良好に維持して、脳卒中や心筋梗塞などの合併症を予防すれば、平均余命を大幅に延ばせることも示された。

 研究グループが、約120万人のデータを分析し、糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などの心臓代謝性の疾患が重なっていると、死亡リスクが高まることが明らかになった。

 糖尿病・脳卒中・心筋梗塞のうち、2つをもっている人の死亡リスクは4倍に、3つがすべて揃っている人の死亡リスクは8倍に上昇することが分かった。

 逆に言えば、治療に取り組んで、血糖などの管理を良好に維持し、心血管疾患の合併症を回避できていれば、余命を延ばすことができることになる。

 「糖尿病を予防するとともに、糖尿病を発症した人の心血管疾患を予防するための対策が緊急に必要とされています」と、ケンブリッジ大学公衆衛生 プライマリケア部のジョン デーネッシュ教授は言う。

糖尿病を良好に管理すれば余命を延ばせ、医療費も減らせる

 米シカゴ大学医療センターによる別の研究では、糖尿病とともに生きる人が血糖管理を良好に維持できていると、余命を延ばせ、毎年何千人もの命を救うことができることが示された。

 さらに、個々の患者に合わせて、血糖管理を改善することで、医療費も大幅に減らせることが示された。生涯で1万3,500ドル(200万円)以上を節約できるという。

 「糖尿病の人は、重篤な合併症を引き起こすことなく、良好な健康状態を維持できていれば、余命を延ばすことができ、とくに薬剤費を削減できることが示されました」と、同センターのネダ ライテラポン氏は言う。

 研究グループは、米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加し、30歳以降に糖尿病を発症した569人のデータを解析した。

 国糖尿病学会(ADA)は、糖尿病の合併症を防ぐために、1~2ヵ月の血糖値の平均を反映するHbA1cを7%未満に維持することを推奨している。

 「米国で2型糖尿病とともに生きる人の数は、30歳以上では約1,730万人に上ります。これらの人々が、血糖管理を改善し、HbA1cを7%未満に維持できていれば、米国全体で2,340億ドル(35兆円)の医療費を削減できることになります」と、ライテラポン氏は述べている。

Type 2 diabetes diagnosis at age 30 can reduce life expectancy by up to 14 years (ケンブリッジ大学 2023年10月3日)
Life expectancy associated with different ages at diagnosis of type 2 diabetes in high-income countries: 23 million person-years of observation (Lancet Diabetes & Endocrinology 2023年 2023年9月11日)
Life expectancy substantially lower with combination of diabetes, stroke or heart attack (JAMA Network 2015年7月7日)
Association of Cardiometabolic Multimorbidity With Mortality (JAMA 2015年7月7日)
Personalized blood sugar goals can save diabetes patients thousands (シカゴ大学医療センター 2017年12月11日)
Individualized Glycemic Control for U.S. Adults With Type 2 Diabetes: A Cost-Effectiveness Analysis (Annals of Internal Medicine, 2018年2月6日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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