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2023年09月14日

食事で「ハーブ & スパイス」を活用し糖尿病や高血圧を改善 体に良くておいしい食事を実現

 脂肪や塩分を減らしながら、おいしさを維持するために、ハーブやスパイスを活用する方法が効果的という研究が発表された。

 ハーブやスパイスによる「香りづけ」「辛みづけ」は、塩分を控えて物足りなくなった料理の味を引き締めたり、風味を引き立てたりするのに効果的だという。

 「多くの人は、健康的な食物を食べたいと思っていますが、同時に味の良いものも求めています。そんなときに、ハーブやスパイスを活用したレシピは非常に効果的です」と、研究者は話している。

脂肪や塩分を制限した食事は味が物足りなくなりがち

 脂肪や塩分を減らした食事は、健康的な食事スタイルとして人気が高い。

 脂肪や塩分を減らしながら、おいしさを維持するために、ハーブやスパイスを活用する方法が効果的だと、米ペンシルバニア州立大学が発表した。

 脂肪や塩分を制限した食品は、味付けが物足りなくなりがちで、毎日食べるのはストレスになると感じる人は多い。

 しかし、ハーブやスパイスによる「香りづけ」「辛みづけ」は、塩分を控えて物足りなくなった料理の味を引き締めたり、風味を引き立てたりするのに効果的だという。

ハーブやスパイスを活用するとおいしくなり効果的

 コショウ・タイム・バジル・ガーリック・クミン・オニオン・グリーンペパー・レモンペパー・マスタードシード・ローズマリーなどのハーブやスパイス、日本では七味唐辛子やカレー粉なども効果的に使うと、脂肪や塩分を減らすのに役立つ。

 「食事で脂肪・塩分・糖質を減らすうえで、大きな障壁となっているのは、食品の味であることが明らかです」と、同大学栄養科学部のクリスティーナ ピーターセン氏は言う。

 「多くの人は、できるのなら健康的な食物を食べたいと思っていますが、同時に味の良いものも求めています。そんなときに、ハーブやスパイスを活用したレシピは非常に効果的です」としている。

低脂肪ダイエットが世界的なブームに

 脂肪のうち「飽和脂肪酸」は、常温で固まる脂の主な成分で、肉やバター、ラードなど動物性食品に多く含まれる。

 飽和脂肪酸をとりすぎると、血液中に悪玉コレステロールがたまりやすくなり、動脈硬化の原因になる。そのため、飽和脂肪酸をなるべくとらないようにする低脂肪ダイエットが、1990年代に世界的にブームになった。

 これを受けて多くの食品会社は、脂肪を減らした食品を売るようになった。しかし市場で売られた食品は、もとの製品に比べても、とくに健康的とは言えないものが多かった。

 おいしさを維持するために、脂肪を減らした代わりに、塩分や糖質を増やした食品が増えた。また、体に良い不飽和脂肪酸が不足するなどの課題も浮き彫りになった。

脂肪のとりすぎによる悪影響は?

 質の良くない脂肪を食事でとりすぎると、動脈硬化が起こりやすくなり、肥満や2型糖尿病、心臓病や脳卒中、さらには認知症などのリスクが高まる。

 脂肪は、体にとってエネルギー源になるだけでなく、臓器を守ったり、細胞の機能を発揮させるためにも必要なので、質の良い脂肪をとることも大切だ。

 厚生労働省が定めた日本人の食事摂取基準では、肥満や糖尿病などを予防・改善するために良好な栄養バランスが必要で、食事で摂取するエネルギーのうち、20~30%を脂肪からとるのが望ましいとされている。

加工食品は脂肪や塩分がどれくらい含まれるか分かりにくい

 加工食品は、脂肪や塩分、糖質を過剰に加えることで、多くの人が「おいしい」と感じるものを製造しやすくなる。

 加工食品はとくに、栄養表示を見なければ、どれくらい脂肪や塩分が含まれるか分からないものが多い。ふつうの人の食生活では、1日の食塩摂取量のうち、加工食品などに含まれる「見えない塩分」が7割を占めるという調査結果もある。

 塩分のとりすぎは高血圧の発症にも大きく影響する。また、糖質をとりすぎると食後高血糖や肥満の原因になる。そのため飽和脂肪酸だけでなく、過剰な塩分や糖質も減らした食品が求められている。

ハーブやスパイスを活用した料理は味が良く満足感も高い

 ペンシルバニア州立大学の研究グループは今回、米国国民健康栄養調査の2015~2016年および2017~2018年のデータベースを使い、脂肪・塩分・糖質が多く含まれ、同時に米国人に人気のある食品10品目を特定した。

 データベースには、9,812人の24時間の食事記録なども含まれた。10品目の食品には、チキンのクリーム煮、ミートローフ、アップルパイ、ミートソースパスタ、タコスミート、マカロニ&チーズなどが含まれた。

 さらに、料理の専門家に協力してもらい、(1) 脂肪・塩分・糖質が多く含まれるレシピ、(2) 脂肪・塩分・糖質を減らした健康的なレシピ、(3) 脂肪・塩分・糖質を減らし、さらにハーブやスパイスを活用したレシピの3種類を作成した。

 研究グループは次に、3種類のレシピを使い85~107人の一般人を対象に、ブラインドの味覚テストを実施した。

ハーブやスパイスを活用した食事をずっと続けたい

 参加者に、全体的な好みや、食品の外観、風味、食感、好みなどの属性に加え、どのレシピが受け入れやすいかとった側面も評価してもらった。その後、好みの順に料理をランク付けしてもらった。

 その結果、多くの人は、ハーブやスパイスを活用したレシピは、脂肪・塩分・糖質が多く含まれるオリジナルのレシピに比べ、味や満足感などは引けを取らず、おいしいと感じたことが分かった。

 「ハーブやスパイスを活用した料理は、脂肪・塩分・糖質を減らしても、味や風味、口当たりが良く、"とても気に入ったので、ずっと続けたい"という感想を述べた人もみられました」と、ピーターセン氏は言う。

 ハーブやスパイスを使ったチキンのクリーム煮、ミートローフ、アップルパイ、ミートソースパスタ、タコスミートなどは、脂肪・塩分・糖質を減らした結果、より健康的で、風味もさらに良くなっているという感想が多かったという。

健康的な食事スタイルを求めている人に希望を

 研究グループは、米国人の25%が健康的なレシピを選んだ場合、脂肪と塩分の1日の摂取量を3%減らすことができ、100%が健康的なレシピを選ぶと、11.5%を減らすことができ、糖質の摂取量も減らせると推計している。

 「ハーブやスパイスを活用することで、健康に良くない栄養の過剰摂取を大幅に減らせることが実証されました。しかも、こうした変更は消費者の多くに受け入れられるものです」と、ピーターセン氏は指摘している。

 「このことは、健康的な食事スタイルを求めている人に、希望をもたらします。ハーブやスパイスを広範囲に実施する方法や、こうした食事の変化を促す食事指導を開発するために、より多くの研究を行う必要があります」。

 「多くの人が、レトルト食品やインスタント食品などの加工食品や、調理済み・半調理済みの食品を利用しています。そうした食品を流通している食料供給のシステムに適用できる可能性もあります」としている。

Herbs and spices tout taste and health as saturated fat, salt replacements (ペンシルバニア州立大学 2023年8月29日)
Using Herbs/Spices to Enhance the Flavor of Commonly Consumed Foods Reformulated to Be Lower in Overconsumed Dietary Components Is an Acceptable Strategy and Has the Potential to Lower Intake of Saturated Fat and Sodium: A National Health and Nutrition Examination Survey Analysis and Blind Tasting (Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics 2023年7月31日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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