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2023年07月03日

肥満やメタボのある人はアルコールの飲みすぎにご注意 少し飲みすぎただけで糖尿病リスクが上昇

 肥満やメタボのある人が、アルコールを飲みすぎていると、肝臓へのダメージが劇的に大きくなることが、新たな研究で明らかになった。

 「たまに飲みすぎる程度であれば良いのですが、大量にお酒を飲むのを習慣にしていると、進行性肝疾患のリスクが2倍以上に上昇することが示されました」と、研究者は述べている。

 350mLの缶ビールを1日に1~2本飲む程度の軽度の飲酒でも、人によっては2型糖尿病や肥満のリスクが上昇するという調査結果も発表された。

 「コロナ禍で、お酒を飲みすぎている人が増えているという報告もあります。飲みすぎにはくれぐれもご注意ください」としている。

肥満やメタボのある人はお酒の飲みすぎにご注意

 肥満やメタボのある人が、アルコールを飲みすぎていると、肝臓へのダメージが劇的に大きくなることが、南カリフォルニア大学医学部健康科学部の研究で明らかになった。

 肝臓は「人体の化学工場」とも言われ、生命を維持するために必要な多くの働きをしており、アルコールの分解もそのひとつ。

 アルコールの飲みすぎにより、いろいろな臓器に異常が起こりやすくなるが、なかでも肝臓病はもっとも高頻度で起こり、進展しやすい。アルコールの飲みすぎによりまずなるのが脂肪肝だ。

 「アルコールの飲みすぎは、肥満とメタボと相互的に作用し、肝臓に対するアルコールの影響を増幅させます」と、同大学医学部の肝臓専門医であるブライアン リー氏は言う。

 「ごくたまに飲みすぎる程度であれば良いのですが、大量にお酒を飲むのを習慣にしていると、進行性肝疾患のリスクが2倍以上に上昇することが示されました」としている。

「お酒を飲みすぎている」と自覚できていない人も多い

 研究グループは今回、米国国民健康栄養調査(NHANES)の1999年~2018年のデータを解析し、肥満やメタボのある人が大量のアルコールを摂取すると、進行性の肝疾患の増加が2倍以上に高まることが明らかになった。

 さらに、アルコールを飲みすぎている人の多くは、そのことに無自覚で、「自分がお酒を飲みすぎている」という意識をもちにくいことも分かった。

 「肥満やメタボと、過度の飲酒はどちらも、脂肪肝を促します。この2つが組み合わさると、肝臓への脂肪の蓄積が加速し、炎症を促進し、その結果、肝臓病の可能性が高まります」と、リー氏は説明する。

 調査では、男性は350mLの缶ビールを1日に3本以上(純アルコール 42g以上)、女性は2本以上(純アルコール 28g以上)飲んでいると、「大量のアルコール摂取」と判定した。

 普通のビールのアルコール度数は5%くらい。350mLの缶ビールには14gの純アルコールが含まれる。

 「米国では2009年から2018年にかけて、アルコールに関連する肝疾患により亡くなった人の数が30%以上増えました」と、リー氏は指摘する。

 「同時に、肥満やメタボの人も大幅に増えています。肥満やメタボが、肝臓の異常を引き起こしている可能性も考えられます」。

 「脂肪肝の人は、動脈硬化や心筋梗塞になりやすいという報告もあり、肝臓と心血管疾患には密接な関係があることが分かってきました」。

 「コロナ禍で、お酒を飲みすぎている人が増えているという報告もあります。飲みすぎにはくれぐれもご注意ください」としている。

お酒を少し飲みすぎただけで糖尿病や肥満のリスクは上昇

 350mLの缶ビールを1日に1~2本飲む程度の軽度の飲酒でも、人によっては2型糖尿病や肥満のリスクが上昇するという調査結果を、米国内分泌学会(ENDO)が発表した。

 「適度な飲酒をしている人は、2型糖尿病や肥満のリスクはむしろ低下することを示した報告があります。しかし、適度なアルコール摂取が健康に有益な影響をもたらすかについては、さまざまな議論があります」と、カナダのマギル大学で遺伝疫学を研究しているティアンユアン ルー氏は言う。

 研究グループは今回、英国バイオバンクに参加した40万8,540人のアルコール摂取状況について調べた。

 英国バイオバンクは、40~69歳の中高年約50万人を対象に追跡して調査している大規模研究。血液やDNAを詳しく解析し、食事や運動などの生活スタイルなどの関連を調べている。

 その結果、缶ビールを1日に2本以上(純アルコール 28g以上)飲んでいる人は、体にたまった脂肪の量が多く、2型糖尿病と肥満のリスクが高いことが判明した。

 「アルコールを少し飲みすぎただけでも、糖尿病や肥満のリスクは上昇することが示されました。一方、適度な飲酒であれば糖尿病リスクは下がるという証拠は示されませんでした」と、ルー氏は言う。

 「アルコールの飲みすぎは、2型糖尿病・肥満・肝臓病・心臓病などの多くの病気に関連しており、公衆衛生上の重大な懸念事項になっています」。

 「とくにお酒を毎日飲んでいるという人は、飲みすぎないようし、週に2日程度の休肝日を作り、肝臓を休ませるなどの工夫が必要です」と、ルー氏は指摘している。

「適度な飲酒量」の純アルコール量は1日に20~25gまで

 アルコール摂取量と糖尿病や関連する疾患のリスクは、「Uカーブ」の関係にあることが示されている。つまり適度な飲酒をしていると、血糖コントロールの状態はむしろ良くなり、糖尿病合併症も減るという報告もある。

 しかし、少しでもアルコールを飲み過ぎると、その効果はすぐに打ち消されてしまう。

 日本人でも「適度な飲酒」は、男性で純アルコール量が1日に20~25gぐらいまでだと考えられている。もちろん、お酒を飲む習慣のない人は、健康効果を期待して飲むのはやめた方が良い。

 純アルコール量20gは、▼ビール(ロング缶) 1本 (500mL)、▼チューハイ(レギュラー缶) 1本 (350mL)、▼日本酒 1合(180mL)、▼焼酎 1杯 (100mL)、▼ワイン 2杯 (120mL)、▼ウイスキー 2杯 (60mL)に相当する。

 なお、女性は男性に比べて、アルコール分解速度が遅いことが多いので、女性は男性の半分から3分の2くらいの量が適当とされている。

Heavy drinking poses even greater risk for one in three Americans (南カリフォルニア大学医学部 2023年5月11日)
National Trends in Alcohol Use, Metabolic Syndrome, and Liver Disease From 1999 to 2018 (Annals of Internal Medicine 2023年6月)
Light or moderate alcohol consumption does not guard against diabetes, obesity (米国内分泌学会 2023年6月27日)
Dose-dependent Association of Alcohol Consumption With Obesity and Type 2 Diabetes: Mendelian Randomization Analyses (Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 2023年6月27日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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