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2023年02月06日

「植物ベース」の食事で糖尿病を改善 地球環境にもやさしい 血糖上昇を抑えられる

 野菜・全粒穀類・大豆・マメ類・ナッツ・植物油などの、植物性食品がベースの食事は、肥満を予防・改善したり、血糖上昇を抑えるのに有用という研究が発表された。

 植物性食品を選ぶことは、地球環境の保護の観点でも有利だという。

 一方、高脂肪・高カロリーの食品を食べ過ぎていると、脳の働きが低下し、食欲を抑えられなくなり、さらに過食につながるおそれがある。

植物ベースの食事スタイルは体重が減りやすい

 野菜・全粒穀類・大豆・マメ類・ナッツ・植物油などの、植物性食品がベースの食事は、糖質が含まれる食品を食べていても、体重を減らすのに有用という研究を、米国のサウスカロライナ大学が発表した

 植物性食品がベースの食事スタイルにより、体格指数(BMI)が減少し肥満を解消できるだけでなく、体に悪い飽和脂肪酸のレベルが低下するなど、多くのベネフィットを得られるという。

 研究グループは、サウスカロライナ州に在住している18~65歳の50人の成人を対象に、無作為に4つの食事スタイルに割付けた。

 (1) 低脂肪ダイエット、(2) 低糖質ダイエット、(3) 植物性食品がベースのダイエット、(4) 完全な菜食主義の4つの食事スタイルにそれぞれ取り組んでもらい、6ヵ月続けてもらった。

 その結果、もっとも体重が減ったのは、植物性食品が中心の食事をしているグループで、肉などの動物性食品を多く摂っていたグループに比べ、体重は平均して7.5kg(4.3%)より減少した。

植物性食品を食べると血糖上昇を抑えられる

 野菜などの植物性食品は、低カロリーで、ビタミンやミネラル・食物繊維が多く含まれる。

 このうち食物繊維は、消化管からの糖の吸収を遅くしたり、食物中の脂質を吸着して吸収されにくくするなどの性質があり、2型糖尿病やメタボ・肥満のリスクを減らすのに役立つと考えられている。

 最近の研究では、野菜や全粒穀類などを食べることで、腸内細菌のバランスも良くなることが分かってきた。

 「植物性食品を摂る食事スタイルによって、糖質が含まれる食品を食べていても、食後の血糖値の上昇を抑えられると考えれます」と、同大学公衆衛生学部ガブリエル ターナ-マクグリービー氏は言う。

 米国でも、糖質制限ダイエットの流行により、パン・米・パスタなどの糖質が多く含まれる食品を避ける人は増えているという。

 「動物性食品や糖質をすべて避ける必要はないにしても、植物性食品を食べることは、健康的な体重を維持したり、血糖や、コレステロール・中性脂肪などの値を改善することに役立ちます」としている。

関連情報

植物ベースの食事スタイルで地球環境も守られる

 米国のハーバード公衆衛生大学院による別の研究でも、植物性食品を摂ることは、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを減少するのに有用であることが示された。

 それだけでなく、植物性食品を選ぶことは、地球環境の保護の観点でも有利だという。

 研究グループは、米国で実施されている大規模研究「看護師健康調査II」に参加した6万5,000人以上の成人を対象に、食事スタイルと心血管疾患など健康上のリスクとの関連、さらには環境への影響について調査した。

 その結果、植物性食品ベースの食事をしているグループが、もっとも心血管疾患のリスクが低く、加えて、動物性食品が中心の食事スタイルに比べ、環境への悪影響も少ないことが明らかになった。

糖質や脂肪が多く含まれる食品は勧められない

 「赤身肉と加工肉などの肉類は、多くの人が食べているすべての食品群のなかで、環境への影響がもっとも大きいと言えます。生産の過程で、多くの灌漑用水、農地、肥料などを必要としており、温室効果ガスの排出にもつながります」と、同大学院栄養学部のアビバ ムジカス氏は言う。

 「人間の健康は、最終的には地球の健康に依存しており、健康的な生活スタイルにも、環境保護の観点を含めるべきでしょう。今後の食事ガイドラインには、環境の持続可能性についての配慮も加えることが望まれます」と、同大学院栄養学部のダニエル ワン氏は述べている。

 なお、植物性食品であっても、精製された穀物を使ったパンや米、ジャガイモ、お菓子、デザート、ジャースやコーラなどの清涼飲料など、単純糖質や脂肪が多く含まれる食品の食べ過ぎは勧められないとしている。

高脂肪・高カロリーの食品を食べ過ぎると脳の働きが低下

 植物性食品のなかでも、ポテトチップスのような、糖質や脂肪が多く含まれる高カロリーの加工食品には、注意が必要だ。

 米国生理学会が発表した研究では、高脂肪・高カロリーの食品を多く食べる習慣があると、カロリー摂取量を調節する脳の働きが低下する可能性がある。

 脳は通常であれば、摂取した食品に反応するように適応し、カロリー摂取量のバランスを調整し、食べ過ぎにならないよう働くが、高脂肪・高カロリーの食事を食べ続けていると、脳と腸のあいだにある、神経のシグナル伝達経路が混乱するとしている。

 ラットを使った実験では、高脂肪・高カロリーの食品を短期間(3~5日間)与えただけで、脳内の神経細胞(ニューロン)にあり、さまざまな機能を調節している星状細胞に大きな影響があらわれ、胃を制御しているシグナル伝達経路の異常が誘発されることが明らかになった。

 さらに、高脂肪・高カロリーの食品を10~14日間食べさせると、脳の神経細胞の働きを助けているアストロサイトと呼ばれる細胞が反応しなくなり、カロリー摂取量を調節する脳の能力が低下した。

 「脳の役割と、体重増加や肥満につながる過食行動につながる複雑なメカニズムを解明することは、それらを治療する効果的な方法を開発するために役立つ可能性があります」と、ペンシルベニア州立大学神経行動科学のカースティーン ブラウニング教授は述べている。

Study Shows Vegan Diet Best for Weight Loss Even with Carbohydrate Consumption (サウスカロライナ大学 2014年11月6日)
Comparative effectiveness of plant-based diets for weight loss: A randomized controlled trial of five different diets (Nutrition 2015年2月)
Healthy plant-based diets better for the environment than less healthy plant-based diets (ハーバード公衆衛生大学院 2022年11月10日)
Health and environmental impacts of plant-rich dietary patterns: a US prospective cohort study (Lancet Planetary Health 2022年11月)
Why a high fat diet could reduce the brain's ability to regulate food intake (米国生理学会 2023年1月26日)
Brainstem astrocytes control homeostatic regulation of caloric intake (Journal of Physiology 2023年1月25日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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