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2023年02月02日

認知症対策は若いうちから必要 糖尿病の人は認知症リスクが高い 「6つの生活スタイル」で予防

 糖尿病があり、血糖が高い状態が続いていると、認知症になるリスクが上昇することが知られている。

 将来に自分が認知症を発症するのではないかと、心配になっている人は少なくない。そんな人にとって朗報となる研究が発表された。

 活発な運動を毎日行っていたり、健康的な生活スタイルを維持することが、認知障害や認知症の予防につながることが分かってきた。

糖尿病の人は認知症のリスクが高い

 糖尿病があり、血糖が高い状態が続いていると、認知症になるリスクが上昇することが知られている。認知症のなかでもっとも多いのはアルツハイマー型認知症だが、糖尿病とともに生きる人は、アルツハイマー病のリスクが1.5倍高いという報告がある。

 糖尿病があると認知症になりやすい原因として、脳の血管の動脈硬化、酸化ストレスの増加、終末糖化産物の形成、インスリン抵抗性などが指摘されている。

 将来に自分が認知症を発症するのではないかと、心配になっている人は少なくない。そんな人にとって朗報となる研究が発表された。

 活発な運動を毎日行っていたり、健康的な生活スタイルを維持することが、認知障害や認知症の予防につながることが明らかになった。

 糖尿病を治療して、良好な血糖管理を続けていれば、認知機能の低下や認知症のリスクを下げられることも分かってきた。

認知症を予防するために毎日のウォーキングが効果的

 65歳以上の女性はウォーキングなどの活発な運動を毎日行っていると、軽度の認知障害や認知症を発症するリスクが低下することが、米国のカリフォルニア大学の研究で明らかになった。

 毎日の生活に、ウォーキングなどの時間を1日に31分追加すると、将来に認知障害や認知症を発症するリスクは21%減少する。さらに、毎日の歩数を1,865歩増やすと、リスクは33%減少するという。

 「認知症は、症状があらわれる20年以上前にその兆候がはじまります。高齢者の認知機能の低下や認知症の発症を遅らせたり予防するために、早期に介入することが必要です」と、同大学公衆衛生・人間長寿科学部のアンドレア ラクロワ特別教授は言う。

 認知症にはいくつかのタイプがあるが、多くみられる症状は、記憶力・思考能力・問題解決力・理性などの喪失だ。軽度認知障害は認知症ほど深刻ではないにしても、その初期段階にある状態で、記憶喪失や思考障害などが起こる。

 一般的に、男性よりも多くの女性で認知症を発症するリスクは高いとみられている。

 「運動や身体活動を習慣として行うことは、認知症とアルツハイマー病のリスクを軽減するのに効果的な方法のひとつです。認知症を発症してしまうと、効果的な治療法はなく、進行を遅らせたり元に戻すのが非常に難しくなるので、予防することが重要です」と、ラクロワ特別教授は指摘する。

認知障害や認知症への対策は若いうちから開始する必要が

 「女性の健康イニシアチブ」は、閉経後の女性の健康問題を研究するために、米国立衛生研究所(NIH)などによって1990年代に開始された大規模研究。

 研究グループは今回、この研究に参加した米国在住の1,277人の女性を対象に調査をした。身体活動と座位行動について正確に測定するために、参加した女性に活動量計を装着してもらい、最大7日間の日常での活動を記録した。

 平均すると、参加者の1日の歩数は3,216歩、軽度の身体活動の時間は276分、中程度から活発な身体活動の時間は45.5分、座ったまま過ごす時間は10.5時間だった。

 軽い身体活動の例としては、家事、ガーデニング、ウォーキングなどがある。ウォーキングに早歩きを含めると、中程度から活発な身体活動になる。

 「これまで、軽度の認知障害や認知症に対する運動や座位行動の影響を、実際に身体活動を測定して検証した大規模な研究はほとんど行われていませんでした」と、同学部のスティーブ グエン氏は言う。

 「今回の研究により、高齢期にさしかかる前の若いうちから、将来の軽度の認知障害や認知症のリスクを下げるために、ウォーキングなどの中強度の活発な運動に積極的に取り組み、毎日の歩数を増やすことを奨励する必要であることが示されました」としている。

健康的な生活スタイルにより記憶力の低下を防げる

 中国の高齢者を対象とした10年間にわたる別の研究では、健康的な生活スタイル、とくに健康的な食事が、記憶力の低下を遅らせるのに有用であることが示された。

 「APOE」と、認知症の原因になるアミロイドβの蓄積や凝集に関わる遺伝子で、とくに認知症の遺伝的なリスクを高めるものとして「アポリポタンパクE遺伝子」が知られている。

 こうした認知症になりやすい遺伝子をもっている人でも、食事や運動などの健康的な生活スタイルにより、記憶力や思考力の低下を防いだり、遅らせることができることが明らかになった。

 「一般的に、加齢にともない、記憶力は継続的に低下していきます。健康的な生活スタイルは、その進行を抑制することが知られていますが、記憶力の低下にはさまざまな原因が関わっており、どのような健康行動が最適な効果をもたらすかはよく分かっていません」と、中国の首都医科大学病院神経障害イノベーションセンターのジャンピン ジア教授は言う。

 研究グループはそれを調査するために、中国で実施されている大規模研究である「中国認知・老化研究」に参加した、認知機能が正常な60歳以上の成人2万9,072人(平均年齢72歳、女性49%)をおよそ10年追跡したデータを解析した。

認知症のリスクを下げる6つの健康的な生活スタイル

 その結果、健康的な生活スタイルをもつ人は、そうでない人に比べ、認知症や軽度の認知障害を発症する可能性がほぼ90%低いことが明らかになった。

 APOE遺伝子をもつ、認知症の発症リスクが高いとみられる人でも、そのリスクは30%低かった。

 研究で調査された健康的な生活スタイルとは、▼健康的な食事、▼運動をする習慣、▼友人や家族などとの交流を含む積極的な社会的交流、▼読書や創作などの認知力を刺激する活動、▼タバコを吸わない、▼過度の飲酒をしない、という6つの要素を組み合わせたもの。

 「今回の研究は観察研究であり、因果関係を特定することはできませんが、ポジティブな行動を組み合わせた、健康的な生活スタイルを順守することは、記憶力の低下速度を遅らせることと関連していることが、大規模な調査で示されました」と、ジア教授は言う。

 なお、記憶障害は高齢者だけでなく、若い人にも影響を与えている可能性があるので、研究グループは、生涯にわたる記憶力の低下に対する健康的な生活スタイルの影響に焦点を当てたさらなる研究を構想しているという。

 「アルツハイマー病などの認知症に対する効果的な治療法はまだ発見されていないので、やはり予防が重要になります」と研究者は述べている。

More Steps, Moderate Physical Activity Cuts Dementia, Cognitive Impairment Risk (カリフォルニア大学サンディエゴ校 2023年1月25日)
Accelerometer-measured physical activity and sitting with incident mild cognitive impairment or probable dementia among older women (Alzheimer's & Dementia 2023年1月25日)
Healthy lifestyle linked to slower memory decline in older adults (ブリティッシュ メディカル ジャーナル 2023年1月25日)
Association between healthy lifestyle and memory decline in older adults: 10 year, population based, prospective cohort study (ブリティッシュ メディカル ジャーナル 2023年1月25日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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