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2023年01月20日

糖尿病の人向けの簡単で効果的な「ストレス解消法」 ストレスは血糖管理を難しくする

 糖尿病とともに生きる人は、定期的に通院し、血糖値をチェックし、食事を管理し、薬の服用やインスリン注射を続け、運動もしなければならならない。

 糖尿病とともに生きるということは、休みなく糖尿病に向き合わなければならないことを意味している。自分で管理しなければならないことがたくさんあり、糖尿病の人は多くのストレスにさらされている。

 ストレス解消も糖尿病の管理で重要な要素となる。しかし、どのようなストレス解消法が効果があるのかと、悩んでいる人も多い。

 メンタルヘルスの専門家が勧める、効果的なストレス解消法をご紹介する。

ストレスホルモンが血糖値を上げる

 コルチゾールは、副腎皮質から分泌される、生命を維持するために欠かせないホルモン。ストレスを受けたときに分泌が増えることから、「ストレスホルモン」とも呼ばれている。

 「コルチゾールにはさまざまな働きがあり、糖・タンパク質・脂質の代謝にも関わっています。ストレスに耐えるために必要なホルモンと考えられていますが、血糖値を上げる作用もあります」と、米オハイオ州立大学糖尿病・内分泌代謝研究センターのジョシュア ジョセフ氏は言う。

 健康な人では、コルチゾールの分泌は1日を通して自然に変動する。コルチゾールの分泌は一般的に、朝に急上昇し、夜には低下する。

 しかし、2型糖尿病のある人では、コルチゾールの分泌のリズムが乱れており、1日を通して平坦になっている、つまり分泌が多くなっている傾向があることが、同医療センターの研究で示された。そうした人では、血糖値はより高かった。

 研究グループは、米国で実施された大規模研究であるMESA研究と英国で実施されたWhitehall II研究のデータを解析した。

糖尿病のある人は多くのストレスにさらされている

 ストレスの刺激によってコルチゾールの分泌は増える。これはストレスから身を守ろうとして起きる現象で、多くはストレスに対抗するための一時的なものだ。

 しかし、ストレス反応が慢性化すると、頻繁にコルチゾールが分泌されるようになると考えられている。

 「糖尿病のある人々は、定期的に通院し、血糖値をチェックし、食事を管理し、薬の服用やインスリン注射を続け、運動もしなければならなりません。自分で管理しなければならないことがたくさんあり、多くのストレスにさらされています」と、ジョセフ氏は言う。

 「糖尿病とともに生きるということは、休みなく糖尿病に向き合わなければならないことを意味します。ストレスが慢性化すると、さらに糖尿病が悪化しやすくなるという悪循環におちいります」としている。

ストレス解消も治療の重要な要素

 「糖尿病とともに生きる人にとって、ストレスを軽減する方法をみつけることは非常に重要です」と、ジョセフ氏は指摘する。

 ストレスのために、食べ過ぎに注意しなければならない食品をつい食べ過ぎたり、薬を飲み忘れたり、質の良い睡眠をとれなくなることもあるという。

 「ほとんどの2型糖尿病患者さんは、健康的な食事、運動の習慣化、十分な休息をとることが重要だと理解しています。しかし、ストレス解消も糖尿病の管理で重要な要素であることに気づいてない人も多いのです」としている。

ストレス解消の秘策 「マインドフルネス」とは?

 効果的なストレス解消法として、ジョセフ氏が注目しているのは「マインドフルネス」だ。マインドフルネスは、日本の禅などの考え方や瞑想をベースにしたメンタルトレーニングとして米国で発達したもので、日本語に訳すと「気付くこと」「意識すること」という意味になる。

 マインドフルネスを簡潔にあらわすと「今、ここで起きていることを、ありのままに感じて、受け止めること」。自分の体や心の状態を意識することで、ストレスを受ける場面に遭っても、否定的な感情にとらわれることなく、平静を保てるようになると考えられている。

 自分の体と心の状態に対し注意深くなり、リラックスの方法を学び、ストレスなどに対処しやすくなるためのトレーニング法の開発が進められている。

 ゆっくりとした呼吸を取り入れたヨガや瞑想などに取り組んだり、ウォーキングなどの適度な運動を習慣として行うことや、運動にストレッチなどを取り入れることが、ストレス対策になると考えられている。

 「マインドフルネスの実践が、2型糖尿病患者の血糖管理に役立つかを調べるため、新しい試験もはじめています。これだけが効果的なストレス解消法であるわけではありませんが、何か楽しいことをみつけて、それを日常生活の一部にすることは重要です」と、ジョセフ氏は言う。

「バードウォッチング」でもストレスを解消できる

 英国のキングス カレッジ ロンドンによる別の研究では、自然が豊かな環境に身を置き、鳥を見たり鳴き声を聴いたりすることは、精神的健康の改善につながることが示された。

 研究グループは、スマホアプリの「Urban Mind」を利用して、参加者の鳥のさえずりを見たり聴いたりしたという報告とともに、精神的健康に関するリアルタイムの報告を収集した。

 このアプリは、同大学などが研究用に開発したもので、都市部や農村部での生活や経験が心身の健康にどう影響しているかを測定することを目的としている。参加者に1日に3回、自分の気持ちや周囲の環境についての質問に答えるよう求める内容になっている。

自然にふれると気持ちが高揚し明るくなる

 「豊かな自然にふれることは、気分を高揚させ明るくするのに役立ちます。今回の研究では、鳥を見たり、その鳴き声を聴くことは、ポジティブな気分につながることが示されました」と、同大学精神医学・心理学・神経科学研究所(IoPPN)のライアン ハモウド氏は言う。

 研究グループは「Urban Mind」を利用し、2018年4月~2021年10月に、英国や米国、欧州に在住している1,292人を対象に、2万6,856件のデータを収集した。

 その結果、鳥を見たり、その鳴き声を聴ける環境にいることで、精神がどれだけ良好な状態にあるかを示すメンタル ウェルビーイング スコアは、平均で1.72倍に高まり、その効果は最大で8時間続くことが示された。

自分の体と心の状態に注意深くなる「心身プラクティス」とは?

 南カリフォルニア大学医学部による別の研究によると、ウォーキングなどの適度な運動やストレッチなどに、ゆっくりとした呼吸を取り入れたヨガや瞑想などを組合せると、糖尿病の人の血糖管理に好ましい影響があらわれるという。

 研究グループは、自分の体と心の状態に対し注意深くなり、リラックスの方法を学び、ストレスなどに対処しやすくなるためのトレーニング法を「心身プラクティス」と呼んでいる。

 心身プラクティスの実践は、健康増進に役立ち、2型糖尿病などの病気がもたらすストレスと闘うためのツールとして人気が高まっているとしている。

 「多くの人は、心身プラクティスが血糖管理に役立つと考えています。2型糖尿病の米国人の66%は、心身プラクティスに関心があり、実践を試みたことのある人も多いという調査結果があります」と、同大学公衆衛生学部のファティマタ サノゴ氏は言う。

ウォーキングやストレッチ、ヨガも効果的

 研究グループは、瞑想、ヨガ、気功、マインドフルネスにもとづくストレッチなど、ストレス軽減につながる行動が、血糖値にどう影響するかを調べた。1993年~2022年に発表された、心身プラクティスに関連する、世界中で実施されたランダム化比較試験を含む28件の研究を解析した。

 その結果、心身プラクティスの実践は全体として、過去1~2ヵ月の血糖が反映されるHbA1cの平均0.84%の低下と関連しており、もっとも多く研究されていたヨガについては、HbA1cの約1%の低下と関連していることが示された。

 「驚くことに、心身プラクティスを良好に行うことは、医師より処方された治療薬と同じくらいの効果を期待できることが示されました。利益があるだろうと考えていましたが、これほどとは予測していませんでした」と、サノゴ氏は言う。

 「ストレスを軽減するためのウォーキングや、瞑想、ヨガ、ストレッチなどは、費用もかからず、自宅や職場でもどこでも行えます。副作用の心配もありません」と、同学部生理学・神経科学のリチャード ワタナベ教授は指摘する。

糖尿病とともに生きる人のストレスを解消

 英国糖尿病学会(Diabetes UK)の調査では、糖尿病の人の3人に2人(64%)は、「糖尿病のせいで、気持ちの落ち込みを感じることが、ときおりまたは頻繁にある」と回答。3人に1人(33%)が「糖尿病のために生活スタイルを変えなければならず、家族にも迷惑をかけている」と感じていることが判明した。

 糖尿病の人の5人に3人がメンタル面での心理的な問題を抱えた経験をもっている一方で、「自分は糖尿病を確実にコントロールしている」と感じている人は10人中3人(30%)と少なかった。

 「2型糖尿病患者さんのストレスを解消するために、薬物療法以外の補完的な治療法が求められています。心身プラクティスの実践を、新たな治療法として応用できる可能性があります。おそらく、糖尿病を予防する手段としても活用できると考えられます」と、ワタナベ教授は述べている。

Study Links Stress Hormone With Higher Blood Sugar In Type 2 Diabetes (オハイオ州立大学ウェクスナー医療センター 2020年7月13日)
The longitudinal association of changes in diurnal cortisol features with fasting glucose: MESA (Psychoneuroendocrinology 2020年9月)

Feeling chirpy: Being around birds is linked to lasting mental health benefits (キングス カレッジ ロンドン 2022年10月27日)
Smartphone-based ecological momentary assessment reveals mental health benefits of birdlife (Scientific Reports 2022年10月27日)
Urban Mind (キングス カレッジ ロンドン、モーズリーバイオメディカル研究センター、国民保健サービスなど)

Mind-body practices lower blood sugar levels in people with type 2 diabetes (南カリフォルニア大学 2022年9月28日)
Mind- and Body-Based Interventions Improve Glycemic Control in Patients with Type 2 Diabetes: A Systematic Review and Meta-Analysis (Journal of Integrative and Complementary Medicine 2022年9月7日)

The future of diabetes(英国糖尿病学会 2017年11月14日)
The future of diabetes 報告書(英国糖尿病学会 2017年11月14日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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