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2022年12月21日

「良い睡眠」が糖尿病リスクを減少 朝食で糖質のみを摂ると最悪 睡眠を改善する3つの方法

 睡眠について悩みを抱えていたり、解決できていない人は、糖尿病のリスクが高く、心血管代謝の健康も低下しやすい傾向があることが明らかになった。

 良い睡眠をとることで、糖尿病の管理も良くなるという研究も発表されている。

 研究者は、「生活スタイルを見直して、ちょっとした工夫をするだけでも、睡眠を改善できます」として、睡眠を改善するための3つの方法を提案している。

良い睡眠をとれていないと糖尿病リスクが上昇

 良い睡眠をとれていない人は、2型糖尿病のリスクを高め、心血管代謝の健康を低下させる可能性のある、体重、コレステロール、炎症マーカーなどの因子が低下するおそれがあることが、南オーストラリア大学の研究で明らかになった。

 「睡眠が重要であることは誰もが知っていますが、毎日の睡眠時間だけを気にしている人が多いのです。しかし、睡眠は質も大切です。睡眠のさまざまな側面が、糖尿病の危険因子と関連していることが分かってきました」と、南オーストラリア大学看護学部のリサ マトリチアーニ氏は言う。

 「私たちが夜に、どれだけぐっすりと眠っているか、いつ就寝していつ起床するか、さらには睡眠習慣がどれだけ規則的であるかといったことは、睡眠時間と同じくらい重要かもしれません」としている。

 研究グループが、年齢の中央値が44.8歳のオーストラリア人1,017人を対象に調査した結果、睡眠の悩みを抱えていたり、解決できていないと報告した人は、2型糖尿病や心血管代謝のリスクが上昇していることが示された。

 「多くの人は、体や心が不調になると、健康を維持するために睡眠を優先しようと考えます。さらに研究が必要ですが、睡眠をひとつの側面だけでなく全体的にとらえる必要があることが、今回の研究で示されました」と、マトリチアーニ氏は述べている。

自分の睡眠について知ることが大切

 研究グループは今回、参加者を対象に、自己報告による睡眠障害、活動量計(アクチグラフィー)による睡眠時間の計測、就眠や起床のタイミング、睡眠の質、睡眠時間の毎日の変動など、睡眠についてのさまざまな特性を調査した。

 調査では、睡眠について何らかの悩みをもっている人は、およそ半数に上った。マトリチアーニ氏は、睡眠の悩みを解決するために、まずは自分が現在どれだけ眠れているかを、客観的に知ることが大切としている。

 「現在は、ご自分の毎晩の睡眠の状態を記録できるスマートフォン用アプリが多く出ています。スマホに内蔵されている加速度センサーやマイク機能により、深い睡眠、浅い睡眠、レム睡眠など、ご自分の睡眠の質がどう変動しているかを推測し可視化できるものもあります」。

 「ご自分の睡眠について、客観的に把握することは、生活スタイルの改善に役立てられます。それをもとに、必要に応じてかかりつけの医師や専門家に相談することもできます」としている。

睡眠を改善するための3つの方法

 米国のカリフォルニア大学による別の研究では、睡眠を改善するために、▼食事(とくに朝食)、▼食後の血糖値の変化、▼運動習慣(とくに前日に行った運動・身体活動)、が重要であることが示された。

 「夜によく眠れなくて、朝はだるさを感じることが多いのは、ご自分の体質のせいだと思っている人が少なくありません。しかし今回の研究で、生活スタイルを見直して、とくに朝の過ごし方を少し変えてみるだけでも、睡眠を改善できる可能性があることが示されました」と、同大学人間睡眠科学センターのラファエル ヴァラット氏は言う。

 研究グループによると、睡眠を改善するために効果的なのは、次の3点だ。

睡眠を改善するための3つの方法
朝食を食べる
 とくに朝に、適切な量のタンパク質と、食物繊維を多く含む全粒穀類を食べ、吸収の早い単純糖質を摂り過ぎないようにすることは大切。全粒粉のパンや玄米、雑穀米などに含まれる食物繊維は、食後の血糖変動を小さくし、インスリンの過剰分泌も抑える。イモ類・豆類などの複合糖質を摂ることも大切。

運動を習慣として行う
 睡眠と運動・身体活動をする習慣には相関関係があり、とくに前日に行った運動は睡眠に影響を与えやすい。運動は爽快感をもたらし、ストレス解消にも役立ち、日中に活動的な気分になりやすくする。日中に活発に活動すると、夜に深い睡眠をえられやすくなる。

食後の血糖上昇を抑える
 食後に血糖値が高くなり過ぎないようにすることも大切。食事から取り入れた糖質は、体の中でブドウ糖に分解され、脳の働きを活発にして注意力を高めるのに必要となり、より効果的に目を覚ますための鍵となる。
 しかし、朝食後に血糖値が急上昇し、血液中のブドウ糖が増え過ぎると、脳が目覚めた意識に戻る能力が低下し、注意力も鈍りやすくなる。
 食後高血糖は、「よく噛んでゆっくり食べる」「全粒穀類や野菜、海藻、豆類、果物など、食物繊維を含む食品を食べる」「食後に歩いてみるなど、軽い運動をする」などの対策により改善を期待できる。脂肪から分泌される生理活性物質が血糖を下げるインスリンの働きを妨げるため、内臓脂肪型肥満を解消することも大切。

朝食で糖質のみを過剰に摂るのは最悪

 研究グループは今回の研究で、英国・米国・スウェーデンの研究者とも協力し、個別食事プログラムなどを提供している英国のZoe社の提供したデータを分析した。

 833人を対象に2週間にわたり、さまざまな内容の朝食を食べてもらい、同時にアクチグラフィーを身に付けてもらい、睡眠や日中の活動について記録すると同時に、持続血糖モニター(CGM)により1日の血糖変動も記録した。食事日誌もつけてもらい、目が覚めたときから1日を通して、覚醒レベルについても記録した。

 「朝食として、糖質を過剰に摂取する食事は、最悪のものになることが示されました。朝食後に血糖値が高くなることは、効果的に目覚められなくなり、日中に注意力を維持できなくなることと関連していました」と、ヴァラット氏は言う。

 「マフィンやパンケーキ、ドーナツ、ミルクセーキ、糖質を添加した食物や飲料だけの手早い食事は、あまりお勧めできません。朝食では、適度な量のタンパク質・脂肪・炭水化物をバランス良く摂ることが大切です」としている。

夕方以降はカフェイン飲料を飲まないことも大切

 夜の睡眠に影響を与えないためには、「カフェインを多く含む飲料を、できるだけ夕方以降は飲まないようにすること」も大切だという。

 疲労にともない体内で産生されるアデノシンという化学物質は、1日を通して体内に蓄積し、夕方に眠気を引き起こす。これは、アデノシンが受容体に結合することで、覚醒作用のある神経伝達物質の放出を抑えるからだ。

 しかしカフェインは、このアデノシンが受容体に結合するのを阻害するため、眠気を感じにくくなるという。

 質の良い睡眠をとれないでいると、糖尿病の人は血糖値管理が難しくなるだけでなく、自動車事故、労働災害、大規模災害などの深刻なトラブルのリスクも上昇するとしている。朝の眠気は、欠勤などによる生産性の低下、医療機関の受診の増加などにもつながる。

 「毎日リフレッシュして目覚める習慣は、幸運な少数の人のみが生まれつきもっているものではありません。睡眠は、生活スタイルを見直して、ちょっとした工夫をするだけでも改善できます。睡眠・朝食・運動の3つの重要な要素に注意を払うことが大切です」と、ヴァラット氏は述べている。

Trouble sleeping? You could be at risk of type 2 diabetes (南オーストラリア大学 2022年12月2日)
Multidimensional Sleep and Cardiometabolic Risk Factors for Type 2 Diabetes: Examining Self-Report and Objective Dimensions of Sleep (Science of Diabetes Self-Management and Care 2022年12月2日)
Scientists discover secret to waking up alert and refreshed (カリフォルニア大学バークレー校 2022年12月29日)
How people wake up is associated with previous night's sleep together with physical activity and food intake (Nature Communications 2022年11月19日)
Sleep for a Good Cause (米国疾病予防管理センター 2022年7月28日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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