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2022年11月18日

糖尿病リスクを減らす運動は午後から夕方に行うと効果的 ウォーキングなどでインスリンが効きやすい体に

 ウォーキングなどの運動をするのに適した時間帯は、午後から夕方であることが、オランダのライデン大学医療センターの研究で明らかになった。

 午後から夕方に、中強度から高強度の活発な運動をすることは、血糖を下げるインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性を、最大で25%減らすのと関連しているという。

午後から夕方のウォーキングがインスリン抵抗性を軽減

 午後から夕方にかけて、ウォーキングなどの活発な運動をすると、1日を通して運動を均等に分散して行った場合に比べ、血糖を下げるインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性をより軽減しやすいという研究を、オランダのライデン大学医療センターが発表した。研究は、欧州糖尿病学会(EASD)が刊行する医学誌「ダイアベトロジア」に発表されたもの。

 「運動や身体活動は、基本的にはどんな時間帯に行っても効果を期待できるのですが、余裕のある人は、午後から夕方にかけて運動をすると、インスリン抵抗性をより軽減しやすく、したがって血糖コントロールの改善にもつながることが分かりました」と、同センター臨床疫学のイェロエン ファン デル ヴェルデ氏は言う。

 「インスリン抵抗性を軽減するための運動は、ウォーキングの速度を少し上げるなどして、強度が強めの活発なものが勧められます」としている。

インスリンが効きやすい体になるための運動は午後から夕方に行うと効果的

出典:欧州糖尿病学会、2022年

座ったままの時間が長引いたら、立ち上がって運動を

 2型糖尿病の発症には、体質などの遺伝的な因子に加え、社会環境的な因子も関わっている。そのなかで、運動不足は糖尿病の原因のひとつになっている。とくに日本人は、欧米人に比べて体のインスリン分泌能力が低いことが多く、少し肥満になっただけで糖尿病リスクが上昇することが知られており、注意が必要だ。

 肥満や糖尿病の人は世界的に増えている。原因のひとつは、運動不足と座ったまま過ごす時間の増加だ。座ったまま運動をしない生活スタイルは、2型糖尿病などの代謝性疾患の発症リスクの上昇に関連している。

 運動には2型糖尿病の予防・改善の効果がある。これまでの研究でも、座ったまま過ごす時間を中断し、短い休憩をとり、立ち上がり体を動かすことが、心血管に関わる代謝の改善につながることが示されている。

 座位時間が長くなったときは、立ち上がって軽い身体活動を行うだけで、体のブドウ糖や脂肪酸の利用が促され、中性脂肪値や血糖値などが低下することが確かめられている。

 空腹時に中性脂肪値が高いと、肝臓に脂肪が過剰にたまり、インスリン抵抗性になりやすくなると考えられている。過去の研究でも、運動を行うことで、肝臓に蓄積される脂肪が減り、インスリン感受性が改善し、インスリンが効きやすくなることが確かめられている。

体の代謝を高めるための運動は、1日でどんなタイミングで行うと良い?

 研究グループは今回の研究で、座ったままの時間を中断し、体を動かし運動をすることで、インスリン抵抗性が改善し、最終的に2型糖尿病のリスクが減少するという仮説を立てた。

 では、体の代謝を高めるために行う運動や身体活動のタイミングは、1日のどの時間帯が良いのか? これまでの動物を対象とした基礎研究では、運動をする時間帯により、運動能力や関連する代謝リスクに違いがあることが示されている。

 研究者らは、肥満に関連する代謝疾患の発症リスクについて調査した前向きコホート研究である「オランダ肥満症研究」のデータを解析した。対象となったのは、2008年~2012年に研究に参加した、45歳~65歳で体格指数(BMI)が27以上の地域住民6,671人。

 研究グループは、参加者に健診を受けてもらい、血液サンプルも提供してもらった。空腹時と食後の血糖値とインスリン値を測定し、生活スタイルについてのアンケートに答えてもらった。参加者の35%には、MRI(核磁気共鳴画像法)検査を受けてもらい、内臓や肝臓にたまった脂肪も測定した。

 さらに、955人の参加者については、活動量と心拍数を測定できるデバイスを4昼夜連続して身に付けてもらい、身体活動のエネルギー消費量も測定した。

午後から夕方にかけての中強度の運動がもっとも効果的

 運動や身体活動の量や強度は、「メッツ(METs)」という単位であらわされる。静かに座っている時を1メッツとして、その何倍の消費カロリーに相当するかで、運動や身体活動は測定される。

 座ったまま過ごしていると、運動量は1.5メッツ以下だが、立ち上がって軽く歩き回ると、運動量を1.5~3メッツに増やせる。活発なウォーキングや筋トレなどを行うと、運動量は3メッツ以上になる。

 試験に参加した平均年齢が56歳、平均BMIが26.2の775人男女のデータを解析した結果、軽めの運動や、活発なウォーキングなど中高強度以上の運動を行っている人は、肝臓にたまる脂肪が減り、インスリン抵抗性が少ないことが示された。運動の強度が高いほど、より効果を得られることも分かった。

 さらに、運動をする時間帯を、朝(午前6時~12時)、午後(午前12時~午後6時)、夕方(午後6時~12時)に分けて比較したところ、午後から夕方にかけて活発な中高強度以上の運動をするのがもっとも効果的であることが示された。

 インスリン抵抗性は、1日を通して均等に身体活動や運動を行うと、18%低下したが、午後から夕方に運動量が3メッツ以上の中高強度の運動を行うと、25%も低下していた。

軽めの運動は1日のどの時間帯に行っても同じ効果が

 なお、座位時間を中断して行う運動量が1.5~3メッツの軽めの運動は、1日のどの時間帯に行っても同じような効果があることも分かった。

 「もっとも危険なのは、座ったまま過ごす時間が長く、体をほとんど動かさないでいることです。座位時間を中断して立ち上がり、オフィスや自宅で軽く歩いてみるだけでも効果を期待できます」と、ファン デル ヴェルデ氏は言う。

 「しかし、肝臓に脂肪がたまるのを防いだり、インスリン抵抗性を改善したいのなら、もう少し強度の高い、活発な運動を行うことをお勧めします。休憩時間などに行う軽めの運動に加えて、午後や夕方に活発なウォーキングなどの強めの運動を行うことで、肥満や2型糖尿病などの代謝疾患の改善を期待できます」としている。

運動に慣れてきたら、強度を少し上げてみる

 運動をする習慣は、さまざまな好ましい効果をもたらす。運動を行うことで、血糖値が低下し、血圧や脂質も改善する。血糖を下げるインスリンの効きも良くなり、血糖値が下がりやすくなる。

 「ほとんどの日常での身体活動は軽い強度のものですが、インスリン抵抗性を改善するためには、もう少し強度の強い身体活動や運動も必要と考えられます。とくに糖尿病のある人にとって、運動をする習慣は大切です」と指摘している。

 運動や身体活動行う時間帯やタイミングについては、より多くの研究が必要になるが、これまでの研究でも、強度が強めの運動に対する体の代謝反応は、運動が行われた時間帯によって異なることが示されている。

 ファン デル ヴェルデ氏は、筋力や骨格筋の細胞の代謝機能は午後遅くにピークを達するので、その時間帯にもっとも活発に活動することで、午前などの時間帯の活動よりも代謝反応がより亢進する可能性を示唆している。

Physical activity in the afternoon or evening is linked to reduced insulin resistance, study reveals (Diabetologia 2022年11月2日)
Timing of physical activity in relation to liver fat content and insulin resistance (Diabetologia 2022年11月1日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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