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2022年08月01日
野菜のカロテノイドが女性の健康を改善 食事を改善すれば女性はより健康に長生きできる
一般的に、女性は男性より長生きすることが多いが、病気の発症率もその分高くなる。黄斑変性症や認知症など、女性に多い病気があることも知られている。
しかし、ホウレンソウ・ピーマン・トマト・ニンジン・オレンジ・ケール・スイカ・ヤムイモなどで、野菜や果物の色素成分である「カロテノイド」を十分に摂取すると、病気の発症率が減少し、より健康長寿になれるという研究を、米国のジョージア大学が発表した。
こうしたカラフルな野菜や果物は、脳や目の健康を増進するためにも、とくに重要だという。
女性がかかりやすい病気は予防できる
「肥満や過体重は男性に多く、男性は肥満に関連する高血圧・2型糖尿病・脂質異常症・動脈硬化症・心筋梗塞・脳卒中・腎臓病・がんなどの病気を発症するリスクが高いと思われがちです」と、米ジョージア大学行動・脳科学部のビリー ハモンド教授は言う。 「たしかに、男性は、こうした死亡リスクを高める深刻な病気になりやすく、女性は一般的に、こうした病気にかかる頻度が比較的少ないか遅いです。平均寿命も多くの国で女性の方が長い。しかし、女性に病気のリスクがないわけではなく、女性がかかりやすい病気もあります」。 「たとえば、世界的に増えている黄斑変性症や認知症は、すべての症例のうち、3分の2は女性に起こります。多くの女性を長年苦しめているこれらの病気は、生活スタイルの改善が予防につながることは十分に知られていません」としている。 黄斑変性症は、老化にともない、眼の中の網膜という中心部分に出血やむくみ(浮腫)をきたし、視力が低下する病気だ。治療をしないでいると、失明の原因になる。 関連情報女性に多い「自己免疫疾患」
「多発性硬化症・骨粗鬆症・心血管疾患・脳卒中・がんなども、女性で多くみられる病気です。今回の研究では、これまで発表された研究のデータを分析し、自己免疫疾患から認知症まで、女性が多く発症する疾患について調査しました」と、ハモンド教授は言う。 多発性硬化症(MS)は、脳や脊髄などの中枢神経に炎症が起き、全身にさまざまな症状があらわれる病気で、欧米ではよく知られている。発症初期には、視力障害・手足のしびれ・脱力・歩行障害などが起こる。 MSは、脳や脊髄などの神経細胞の、電気信号の伝達で重要な役割をしている部分であるミエリンが、障害されることで発症する。原因は、免疫系が誤って自分の身体を攻撃してしまい、臓器や組織が障害を受ける、「自己免疫」と考えられている。 免疫系はウイルスや細菌などの病原体や、体のなかで絶えず発生しているがん細胞を殺し、生体を防御するシステムだ。免疫系が誤って、自己の中枢神経組織を外敵、あるいは異物として認識してしまい、ミエリンを壊してしまうことで、MSを発症する。 こうした「自己免疫疾患」のなかには、難病と言われるものが多く、自己免疫の研究は医学でも重要な課題となっている。自己免疫疾患は女性の方が多く、全体の80%近くを占めるとみられている。女性は皮下脂肪がつきやすい
女性がかかりやすい病気がある理由のひとつとして、体内のビタミンやミネラルの働きが関わっていると考えられている。 「女性は、平均して男性よりも体脂肪が多いとみられています。体脂肪は、食事で摂取したビタミンやミネラルの吸収源として機能し、とくに妊娠中の女性にとっては、こうした栄養の貯蔵庫になります」と、ハモンド教授は言う。 体につく脂肪は、大きく皮下脂肪と内臓脂肪の2つのタイプがある。皮膚の下にあり、比較的体の表面に近い部分にたまる脂肪が皮下脂肪。一方、腹筋の内側、腸などのまわりにたまるのが内臓脂肪。 一般的には、女性は皮下脂肪がつきやすく、男性は内臓脂肪がつきやすい。ただし、閉経後の女性は、次第に内臓脂肪がたまりやすくなる。 皮下脂肪がたまった女性は、下腹部やお尻、太ももにつきやすいため、下半身がふくよかな体型になる。 皮下脂肪にビタミンやミネラルが吸収されると、目の網膜や脳が利用できる分が足りなくなり、黄斑変性症や認知症などを発症しやすくなると考えられるという。カロテノイドを含む野菜が女性の健康を改善
サプリメントも効果がある?
ルテインやゼアキサンチンを含むカロテノイドは、サプリメントも多く市販されており、入手しやすくなっている。こうしたサプリを利用することが、不足しがちな栄養素を充足するためのひとつの方法となる可能性があるが、現在のところはサプリメントについては、十分な根拠となる研究は不足している。 米国国立衛生研究所や米国国立眼病研究所などの研究では、ルテインとゼアキサンチンのサプリメントでも効果があることが示唆されているが、野菜や果物を食べたときと同等の効果を得られるかはよく分かっていない。 「食事の構成要素は、1人ひとりの食事に対する嗜好や、栄養についての知識・技術などの影響を受けます。しかし、食事や栄養が、脳やメンタルヘルスにまで影響し、自分の気分・怒りなどの感情にも大きく関わっていることを理解している人は、まだ十分に多くありません」と、ハモンド教授は指摘する。 「食事は、腸内環境や腸内細菌叢にも大きく関連しており、最近では、脳と腸が神経系、ホルモンやサイトカインを介して密接に関連しているという"脳腸相関"に着目した研究も増えています。こうした、さまざまなコンポーネントが連携して、脳や神経を守り、健康増進につながっていると考えられ、今後の研究の進歩に期待しています」としている。 Women already live longer They can live better with an improved diet (ジョージア大学 2022年7月14日)The influence of the macular carotenoids on women's eye and brain health (Nutritional Neuroscience 2022年6月11日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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