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2022年05月12日

38歳で1日に2回の脳卒中を経験 脳卒中は誰にでも起こりえる

38歳で1日に2回の脳卒中を経験した女性――AHAニュース

 米国オハイオ州に暮らす女性、Saundra Mingeさんは、38歳になった年のレイバー・デー(労働者の日、9月の第1月曜日)の祝日に、首筋の血管にドクドクとした拍動を感じていた。しかし、約束どおり7歳の甥と3歳の姪をプールに連れて行った。首の違和感は一晩寝れば治るだろうと考えていた。

 5時間ほどプールで子どもたちと遊んだ後、首の痛みは悪化していた。その夜、彼女は耐え難いほどの頭痛で目を覚ました。片頭痛持ちの彼女は、鎮痛薬を常備している。それを服用してどうにか眠りに就いた。

 翌朝、玄関で夫のMarkさんに別れを告げ、仕事に出かけようとしたとき、Markさんに「今日は通勤の途中で靴を買うの?」と言われた。それはMingeさんが靴を履いていないことを指摘した冗談だった。

 彼女は夫に何か答えようとした。しかし言葉にならなかった。Markさんが紙と鉛筆を手渡すと、彼女は意味不明の文字を書いた。

 Markさんは心配になり、Mingeさんの妹のMelissaさんに電話をかけて状況を知らせた。10分ほどでMelissaさんが到着。その時2人は、Mingeさんの顔がゆがんでいることに気付き、脳卒中の疑いを持った。

 救急治療室で、朝起きたことを説明するように医師から言われたMingeさんは、一言も発することができなかった。CTスキャンの結果、脳梗塞の所見と頸動脈に亀裂が見つかった。外傷によって頸動脈が傷ついて血栓ができ、それが脳に移動したと考えられた。

 高度な治療が必要と判断され、ヘリコプターで20マイル(約32km)離れた病院に搬送された。血栓回収術を受けたMingeさんは、すぐに会話の能力を取り戻した。

 「話し方は少しおかしかったが、脳卒中が起きてからその時点まで、全てうまくいっていた」と彼女は話す。状況が落ち着いたため、Markさんは2匹の愛犬の世話のために帰宅した。「私たちは危機を脱したと思っていた」とMarkさんは言う。

 その3時間後、Mingeさんは吐き気を催し、また話せなくなった。別の血栓が形成され、再び脳卒中が起きていた。直ちに血栓回収が試みられたが、今度はうまくいかなかった。

 「今は待つしかない」と医師は告げた。つまり、血栓が脳にどのような影響を及ぼすか、その時点では分からないということだ。MingeさんやMarkさんは、もちろん自然に軽快することを望んだ。しかし最悪の場合は、右半身の麻痺、あるいは死につながる可能性が考えられた。

 翌日、MingeさんはMarkさんの手を、右手で握った。Markさんは彼女に、お気に入りの映画のタイトルを尋ねてみた。Mingeさんの好きな映画は「Forrest Gump」(邦題:フォレスト・ガンプ/一期一会)だ。それは公園で暮らすホームレス男性が主人公で、「人生はチョコレートの箱、開けてみるまで分からない」というセリフが有名な映画だ。

 彼女は「Forrest Gump! Forrest Gump!」と何度も言おうと試みた。5分後、どうにかそのタイトルを口にすることができた。夫は看護師と目を合わせてから、「大丈夫。聞き取れる」と妻に言った。

 7日後、Mingeさんは退院した。画像検査からは、新たな問題がさらに起きる兆候は確認されなかった。医師は、「現在の状態が、あなたが望むことができる最良のシナリオだ」と控えめに伝えた。

 自宅に戻ってからも彼女は会話に苦労したが、少しずつ改善していった。ハロウィーン(10月31日)の前日、彼女は職場に復帰した。それから3年がたち、より上手に話せるようになった。ただし、今でも単語につまることが時々ある。

 現在、彼女は「FAST」の重要性を、自分の言葉で人に伝えるという活動を誇りとともに続けている。FASTとは、脳卒中発症時の症状である顔の麻痺(Face)、腕の麻痺(Arm)、発語の障害(Speech)と、時間(Time)の頭文字であり、それらの症状が現れたら速やか(Fast)に救急要請すべきことを端的に表すフレーズだ。

 「脳卒中は、年齢を問わず、誰にでも起こり得る」。38歳で1日に2回、脳卒中を経験したMingeさんは、そのように強調する。

[American Heart Association News 2022年4月14日]

American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
Photo Credit: Saundra Mingeさん(本人提供)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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