38歳で1日に2回の脳卒中を経験した女性――AHAニュース
米国オハイオ州に暮らす女性、Saundra Mingeさんは、38歳になった年のレイバー・デー(労働者の日、9月の第1月曜日)の祝日に、首筋の血管にドクドクとした拍動を感じていた。しかし、約束どおり7歳の甥と3歳の姪をプールに連れて行った。首の違和感は一晩寝れば治るだろうと考えていた。
5時間ほどプールで子どもたちと遊んだ後、首の痛みは悪化していた。その夜、彼女は耐え難いほどの頭痛で目を覚ました。片頭痛持ちの彼女は、鎮痛薬を常備している。それを服用してどうにか眠りに就いた。
翌朝、玄関で夫のMarkさんに別れを告げ、仕事に出かけようとしたとき、Markさんに「今日は通勤の途中で靴を買うの?」と言われた。それはMingeさんが靴を履いていないことを指摘した冗談だった。
彼女は夫に何か答えようとした。しかし言葉にならなかった。Markさんが紙と鉛筆を手渡すと、彼女は意味不明の文字を書いた。
Markさんは心配になり、Mingeさんの妹のMelissaさんに電話をかけて状況を知らせた。10分ほどでMelissaさんが到着。その時2人は、Mingeさんの顔がゆがんでいることに気付き、脳卒中の疑いを持った。
救急治療室で、朝起きたことを説明するように医師から言われたMingeさんは、一言も発することができなかった。CTスキャンの結果、脳梗塞の所見と頸動脈に亀裂が見つかった。外傷によって頸動脈が傷ついて血栓ができ、それが脳に移動したと考えられた。
高度な治療が必要と判断され、ヘリコプターで20マイル(約32km)離れた病院に搬送された。血栓回収術を受けたMingeさんは、すぐに会話の能力を取り戻した。
「話し方は少しおかしかったが、脳卒中が起きてからその時点まで、全てうまくいっていた」と彼女は話す。状況が落ち着いたため、Markさんは2匹の愛犬の世話のために帰宅した。「私たちは危機を脱したと思っていた」とMarkさんは言う。
その3時間後、Mingeさんは吐き気を催し、また話せなくなった。別の血栓が形成され、再び脳卒中が起きていた。直ちに血栓回収が試みられたが、今度はうまくいかなかった。
「今は待つしかない」と医師は告げた。つまり、血栓が脳にどのような影響を及ぼすか、その時点では分からないということだ。MingeさんやMarkさんは、もちろん自然に軽快することを望んだ。しかし最悪の場合は、右半身の麻痺、あるいは死につながる可能性が考えられた。
翌日、MingeさんはMarkさんの手を、右手で握った。Markさんは彼女に、お気に入りの映画のタイトルを尋ねてみた。Mingeさんの好きな映画は「Forrest Gump」(邦題:フォレスト・ガンプ/一期一会)だ。それは公園で暮らすホームレス男性が主人公で、「人生はチョコレートの箱、開けてみるまで分からない」というセリフが有名な映画だ。
彼女は「Forrest Gump! Forrest Gump!」と何度も言おうと試みた。5分後、どうにかそのタイトルを口にすることができた。夫は看護師と目を合わせてから、「大丈夫。聞き取れる」と妻に言った。
7日後、Mingeさんは退院した。画像検査からは、新たな問題がさらに起きる兆候は確認されなかった。医師は、「現在の状態が、あなたが望むことができる最良のシナリオだ」と控えめに伝えた。
自宅に戻ってからも彼女は会話に苦労したが、少しずつ改善していった。ハロウィーン(10月31日)の前日、彼女は職場に復帰した。それから3年がたち、より上手に話せるようになった。ただし、今でも単語につまることが時々ある。
現在、彼女は「FAST」の重要性を、自分の言葉で人に伝えるという活動を誇りとともに続けている。FASTとは、脳卒中発症時の症状である顔の麻痺(Face)、腕の麻痺(Arm)、発語の障害(Speech)と、時間(Time)の頭文字であり、それらの症状が現れたら速やか(Fast)に救急要請すべきことを端的に表すフレーズだ。
「脳卒中は、年齢を問わず、誰にでも起こり得る」。38歳で1日に2回、脳卒中を経験したMingeさんは、そのように強調する。
[American Heart Association News 2022年4月14日]
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Photo Credit: Saundra Mingeさん(本人提供)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所