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2022年04月22日

糖尿病とともに生きる人は寿命を10年以上のばせる 食事と運動を改善して治療を続けることが大切

 2型糖尿病とともに生きる人は、食事や運動などの健康的な生活スタイルにより、良好な血糖コントロールと適正体重を維持することで、寿命を10年以上のばせることが明らかになった。

 若いうちから対策をすると、高齢になってから対策するよりも、さらに効果が高いとしている。

糖尿病の人は平均余命を10年以上のばせる可能性

 糖尿病は、インスリンが十分に出ていなかったり、十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖(血糖)が増え過ぎてしまう病気。インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、血糖を一定の範囲におさめる働きをになっている。

 米国人の10人に1人が2型糖尿病とみられており、その多くに、血糖を下げるインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性が関連している。不健康な食事や運動不足、肥満などによって、インスリン抵抗性は起こりやすくなる。肥満のある人は、糖尿病以外にも、高血圧や脂質異常症のリスクも高くなる。

 「血糖値や血圧値、コレステロール値、BMIの高い人が、これらをコントロールして正常値に戻すと、潜在的に平均余命を10年以上のばせる可能性が示されました」と、米フロリダ大学製薬成果・政策学部のハメド キアンモア氏は言う。

 「健康的な生活スタイルにより、寿命をのばせることを理解することは、生活改善に向けた強い動機づけになると考えられます」としている。

良好な血糖コントロールと適正体重の維持が大切

 フロリダ大学などの研究グループは、平均年齢65.6歳の米国人421人を対象に、9ヵ月間追跡して調査した。研究期間中に、血糖値・血圧・コレステロール値・体格指数(BMI)などをチェックした。さらに、米国人の統計モデルをもとに、平均余命を推定した。

 健康的な体重を維持している人は、最高血圧が120mmHg未満、HbA1cが7%未満、悪玉のLDLコレステロール値が70mg/dL未満と、いずも検査値が正常な人が多かったが、肥満のある人は、最高血圧が180mmHg以上、HbA1cが10%以上、LDLコレステロール値が130mg/dL以上と、高い人が多かった。

 解析した結果、健康的な生活スタイルと治療の継続により、良好な血糖コントロールと適正体重を維持している人は、寿命を10年以上のばせることが明らかになった。

 たとえば2型糖尿病や肥満などの危険因子をもっている60代の男性は、平均して15年の余命があるが、生活スタイルを改善し健康的な体重にコントロールすると、余命を25年にのばせるとしている。

 年齢と条件が同じ女性も、平均余命は18年だが、健康的な生活スタイルにより余命を30年にのばせる。

 「平均余命の延長に関連しているのは、主に体重減少が影響する心血管疾患リスクの潜在的な減少です。BMIが低いほど、心不全、狭心症、心筋梗塞などのリスクが低くなり、死亡リスクが低下する傾向がみられました」と、キアンモア氏は言う。

若いうちから生活スタイルの改善をはじめると寿命をよりのばせる

 ただし、生活スタイルの改善は、若いうちからはじめるほど効果がより高いことも分かった。高齢になってから2型糖尿病や肥満などに対策しても、寿命延長の効果は期待できるが、若いうちからはじめるとより寿命をのばせることが示された。

 たとえば2型糖尿病と肥満のある70代の男性の平均余命は5年半だが、治療を受けて、糖尿病や体重をコントロールしても余命を5年しかのばせないという。同じ条件の70代の女性の平均余命は7年で、のばせる余命は8年だった。

 「治療目標を達成することで得られる利益は、若いうちから対策することで、より多くを期待できることが示されました」と、キアンモア氏は言う。

 2型糖尿病の原因は、食べ過ぎや運動不足、肥満といった環境的な因子もあるが、遺伝的な要因も強く影響することが明らかになっている。

 血糖値が高くなりやすい体質は生涯にわたり続いていく。食事や運動などの生活スタイルを改善し、定期的に通院し、医師に処方された薬をきちんと飲むことを続ける必要があるとしている。

日本人の健康寿命延伸のために必要な予防行動

 日本でも、国立がん研究センターなど6つの専門機関が、日本人の健康寿命延伸のために必要な予防行動について目標を提言している。

 健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のこと。平均寿命と健康寿命の差は、日常で制限のある「不健康な期間」となり、男性では8~9年、女性では12~13年とみられている。

 健康寿命をのばすためには、この不健康な期間をどれだけ減らすことができるかがカギとなる。

 日本人の健康寿命延伸のために必要な予防行動は次の通り。

1. 喫煙
  • たばこは吸わない。他人のたばこの煙を避ける。
2. 飲酒
  • 節酒する。飲むなら節度のある飲酒を心がける。
3. 食事
 年齢に応じて、多過ぎない、少な過ぎない、偏り過ぎないバランスの良い食事を心がける。
  • 食塩の摂取は最小限に。
  • 野菜、果物の摂取は適切に、食物繊維は多く摂取する。
  • 大豆製品を多く摂取する。
  • 魚を多く摂取する。
  • 赤肉・加工肉などの多量摂取を控える。
  • 甘味飲料は控えめに。
  • 年齢に応じて脂質や乳製品、タンパク質摂取を工夫する。
  • 多様な食品の摂取を心がける。
4. 体格
  • やせ過ぎない、太り過ぎない。
  • ライフステージに応じた適正体重を維持する。
5. 身体活動
  • 日頃から活発な身体活動を心がける。
6. 心理社会的要因
  • 心理社会的ストレスを回避する。
  • 社会関係を保つ。
  • 睡眠時間を確保し睡眠の質を向上する。
7. 感染症
  • 肝炎ウイルスやピロリ菌の感染検査を受ける。
  • インフルエンザ、肺炎球菌を予防する。
8. 健診・検診の受診と口腔ケア
  • 定期的に健診を・適切に検診を受診する。
  • 口腔内を健康に保つ。
9. 成育歴・育児歴
  • 出産後初期はなるべく母乳を与える。
  • 妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、巨大児出産の経験のある人は将来の疾病に注意する。
  • 早産や低出生体重で生まれた人は将来の疾病に注意する。

Potential Gains in Life Expectancy Associated With Achieving Treatment Goals in US Adults With Type 2 Diabetes (JAMA Network Open 2022年4月18日)

国立がん研究センター がん対策研究所
疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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