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2021年06月07日

指先の汗から血糖値を測定 痛みのない新しい糖尿病センサーを開発 95%以上の精度で測定

 米カリフォルニア大学が、指先の汗から血糖値を迅速に測定する、痛みのまったくない新しいセンサーを開発したと発表した。
 指先に触れるだけで汗中のグルコースを測定でき、95%以上の精度で血糖値を読みとれるという。
 同大学は、皮膚に貼り付けるだけで、血圧、心拍、グルコースなど、さまざまな測定ができる小型パッチも開発している。
より簡便な新しい血糖測定が求められている
 多くの糖尿病患者が、血糖自己測定(SMBG)で血糖値を測定しているが、指先などを穿刺して採血するのを苦痛に感じている患者は少なくない。そこでカリフォルニア大学は、指先に触れるだけで汗中のグルコースを測定できるデバイスを開発した。患者ごとに個別化されたアルゴリズムも開発し、血糖値の正確な推定値が分かるようになった。

 米国糖尿病学会(ADA)によると、米国で糖尿病ともに生きる人は3,400万人以上に上る。良好な血糖コントロールを維持するために、血糖自己測定(SMBG)には重要な役割がある。

 血糖自己測定のデバイスは進歩しており、必要な血液の検体量はゴマ粒大と非常に少なくなり、測定時間もわずか6秒と早いものが出ている。本体サイズはより小型になり、音声ナビゲーションやカラー画面などを備え、操作性にも配慮したものもある。採血用の穿刺器具も改良が重ねられ、痛みの低減がはかられている。

 しかし、指先などを穿刺して採血することを苦痛に感じたり、不便に思う患者はいまだ少なくない。そのため、必要な測定ができなくなることが懸念される。より簡便な新しい血糖測定の方法が求められている。
汗中のブドウ糖から血糖値を読みとる技術を開発
 そこで、カリフォルニア大学の研究グループは、汗中のブドウ糖を測定する方法に着目した。指にはたくさんの汗腺があり、気がつかないうちに大量の汗をかいているという。

 しかし、汗中のブドウ糖レベルは、血液中に比べはるかに低く、発汗量や皮膚の特性によっても変化する可能性がある。そのため、汗中のブドウ糖レベルで血糖値を正確に反映させる技術を開発する必要あった。

 同大学ナノ工学部のジョセフ ワン教授らが考案したのは、指先から汗を採取し、そのブドウ糖レベルを測定し、個人差を修正し血糖値を正確に予測するシステムだ。

 研究グループは、電気化学的に反応するセンサーに「ポリビニル アルコール ヒドロゲル」という材料を付着し、プラスチック製の柔軟なストリップに組み込み、触れただけで汗に含まれるブドウ糖を測定できるセンサーを開発した。

 センサーに指を1分間置くと、ヒドロゲルが少量の汗を吸収して、それに含まれるブドウ糖が酵素反応を起こし、微弱な電流を発生、それを小型のデバイスで検出する仕組みだ。

 さらに、患者ごとに個別に適正化したアルゴリズムも開発し、汗に含まれるブドウ糖レベルを測定し、正確に血糖値に変換できるようにした。

センサーに指を1分間置くだけで血糖値を読みとるセンサー

開発したデバイス

出典:カリフォルニア大学、2021年
汗から血糖値を95%以上の精度で測定
 ボランティアを対象に小規模な試験を行い、血液から測定した血糖値と比較したところ、月に1~2回の血糖自己測定のよる校正が必要になるものの、食前と食後の血糖値を95%以上の精度で予測できることが分かった。

 ただし、「このシステムを実用化し、実際の糖尿病のコントロールに利用できるかどうかを確かめるため、大規模な試験を実施する必要があります」と、ワン教授は述べている。

 「汗による血糖測定の精度を高めるためには、手洗いによる石鹸、ローション、汚れ、食品の残留物などの干渉を調べる必要があり、実用化にはまだ時間がかかりそうです」としている。
皮膚に貼り付けるだけで多様なバイタルサインを測定できる小型パッチも開発

出典:カリフォルニア大学、2021年
 カリフォルニア大学の研究グループは、よりウェアラブルなセンサーの開発に取り組んでおり、今年2月には、皮膚に貼り付けるだけで、血圧、心拍、グルコース、乳酸、アルコール、カフェインの値を測定できる、小型パッチも開発し発表している。

 「このデバイスは、糖尿病や高血圧のコロトールをしており、新型コロナウイルス感染症の重症化のリスクが高い患者にも、利益をもたらす可能性があります」と、同大学ナノ工学のルー イン氏は述べている。

 このパッチ型のセンサーは、皮膚にフィットする伸縮性のあるポリマー製の薄いシートに組みこまれ、さまざまなバイタルサイン(生体情報)を測定ができる。

 血圧センサーと2つの化学センサーが装填されており、乳酸(身体活動のバイオマーカー)、汗中のカフェインとアルコールのレベルの測定、さらには間質液中のグルコースレベルを測定できる。

 被験者にパッチを首に装着してもらい、自転車でのエクササイズ、高糖質の食事、アルコール飲料の摂取、カフェイン飲料の摂取など、さまざまな条件でタスクを実行してもらった。

 その結果、パッチからの測定値は、血圧、血中乳酸、血糖値、呼気分析などの市販のモニター機器で得られた数値とほぼ一致したという。

 「糖尿病などの基礎疾患のある人が、自分の健康状態を定期的にモニターできるデバイスの開発を目指しています。とくに新型コロナの影響が強い現在、多くの人が医療機関を受診するのを控えている傾向があり、リモートで患者の状態を監視できるツールが求められています。血圧や心拍などを継続的な監視する必要のある集中治療室の患者にとっても代替手段となりえます」と、ワン教授は述べている。

皮膚に貼り付けるだけでさまざまな測定ができる小型パッチも開発

Personalized sweat sensor reliably monitors blood glucose without finger pricks(米国化学学会(ACS) 2021年5月5日)
Touch-Based Fingertip Blood-Free Reliable Glucose Monitoring: Personalized Data Processing for Predicting Blood Glucose Concentrations(ACS Sensors 2021年4月19日)
New skin patch brings us closer to wearable, all-in-one health monitor(カリフォルニア大学 2021年2月18日)
An epidermal patch for the simultaneous monitoring of haemodynamic and metabolic biomarkers(Nature Biomedical Engineering 2021年2月15日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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