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2021年08月10日

CGM(持続血糖測定)が糖尿病のコントロールを改善 低血糖も減少 自分の血糖値を知ることは重要

 持続血糖モニター(CGM)が、2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善するという研究が発表された。
 CGMは、多くは1型糖尿病の血糖コントロールを改善するために利用されているが、2型糖尿病でも有用であることが示された。
 インスリン治療を行っている2型糖尿病患者では、危険な低血糖を減らすことも分かった。
糖尿病治療では自分自身の血糖値を知ることは重要
 血糖値は、血液中のブドウ糖(血糖)の量を示す。血糖値は1日のなかでも時間とともに変化し、食事の内容や量、運動やストレスなど、さまざまな要因で変動している。とくに食事は血糖値に影響しやすい。

 糖尿病の治療では、食事と運動、さらに必要に応じて飲み薬やインスリンなどの薬による治療を行い、血糖値を目標値に近づけることが目標となる。そのために、自分自身の血糖値を知ることは重要となる。

 多くの糖尿病患者が利用している血糖自己測定(SMBG)では、自身で指先などに穿刺針で刺して、ごく少量の血液を出して血糖値を測定する。

 いま使われている血糖自己測定器は、手のひらサイズの小さいもので、ごく少ない血液量で簡単に血糖値を測定できる。穿刺器具(血液を採取するための器具)も改良が重ねられ、針はとても細く、痛みもかなり少なくなっている。

 これに対して、持続血糖モニター(CGM)は、お腹などに専用のセンサーを装着し、24時間連続で血糖の日内変動をみるデバイス。皮下の間質液のグルコース濃度を連続して測定し、血糖値を推定する。

 CGMであれば、血糖値と皮下の間質グルコース値はほぼ同じなので、1日の血糖値の動きが持続的に視覚的に分かる。SMBGだけでは発見しにくい夜間・早朝の低血糖や、食後の高血糖、さらには血糖の上下の変動などをモニターできる。

 CGMは日本では、1型糖尿病患者と、血糖コントロールの難しい2型糖尿病患者が利用している。

 なお、CGMはSMBGで測定した血糖値で補正する必要がある。CGMであれば血糖自己測定が不要になるわけではない。
CGMを使用した群ではHbA1cが低下 低血糖も減少
 今回の研究を行ったのは、米国の大手の医療・保険機関であるカイザーパーマネンテ。研究成果は、米国医師会によって刊行されている医学誌「JAMA」に掲載された。

 研究は、インスリン治療を行っている1型糖尿病5,673人と2型糖尿病3万6,080人が参加した、後ろ向き効果比較コホート研究として行われた。参加者は血糖自己測定(SMBG)で血糖コントロールをしていた。

 うち1型糖尿病患者3,462人と2型糖尿病患者344人が、医師の勧めにより、2015年1月~2019年12月に、持続血糖モニター(CGM)を開始した。

 研究者は、精度が高いとされるランダム化臨床試験を模倣した統計的手法を使用して、CGMを開始した患者の血糖コントロールなどの変化を、CGMを使用しなかった患者と比べた。

 その結果、CGMは、過去1~2ヵ月の血糖値の平均をあらわすHbA1c値の低下と関連していることが示された。低血糖のために救急科に運ばれたり入院する頻度を減らすことも分かった。

 CGMを使用した群では、HbA1cは8.17%から7.76%に低下し、CGMを使用しなかった群では、HbA1cは変わらなかった。CGMを使用した群では、低血糖による救急受診・入院は5.1%から3.0%に減少した。
血糖値が低くなり過ぎる低血糖は危険
 低血糖が起こらないようにしながら、血糖コントロールを改善することは、糖尿病の治療で課題のひとつになっている。

 低血糖とは、インスリンなどの血糖値を下げる薬を使用して、血糖値が正常範囲以下まで下がった状態のことをいう。低血糖にはさまざまな症状があり、動悸、発汗、眼のかすみ、脱力、眠気、けいれん、手足の震え、意識レベルの低下などがあらわれる。

 血糖値が70mg/dL未満に低下した場合は、低血糖への対処が必要になる。症状が起きたときにきちんと対処すれば回復するが、急に血糖値が低下して対処が間に合わない場合や、自覚症状なしに血糖値の低下が進行した場合などは、自己のみでは対処できない重度の低血糖におちいることがある。

 重症低血糖になると、脳の機能が低下して、意識のない危険な状態になってしまうおそれがある。重度の低血糖は、転倒、心血管疾患、認知症、さらにも死亡のリスクも高めることも知られている。

 「血糖値が低くなり過ぎる低血糖は危険です。今回の研究では、CGMが低血糖を防ぎながら、血糖値を目標に近づけさせるのに有用であることが示されました」と、カイザーパーマネンテの内分泌代謝科医であるリチャード ドロット氏は言う。
どんな患者がCGMの恩恵を受けられるか?
 現状では、CGMはすべての糖尿病患者が利用できるものではなく、米国の医療保険であるメディケアでは、毎日3回以上のインスリン注射を行っているかインスリンポンプを使用しており、1日4回以上の血糖値自己測定を行い、3~6ヵ月ごとに糖尿病の医療チームと連絡をとれる状態にあるなどの条件がある。

 「研究を担当した医師の多くは、低血糖の病歴があるか、そのリスクが高い2型糖尿病患者を優先して、CGMの処方をしました。こうした患者で、CGMにはベネフィトがあるようです」と、カイザーパーマネンテの上級研究者のアンドリュー カーター氏は言う。

 研究の次のステップは、どのような2型糖尿病患者がCGMにより血糖コントロールが改善し、より安全に治療をできるようになるかを見定めることだという。

 「今回の研究では、すでにCGMの有用性が確かめられている1型糖尿病患者だけでなく、2型糖尿病患者にも有用であることが分かりました。CGMは従来の治療に比べ、良い治療の効果をもたらしました」と、カーター氏は言う。

 「最新のテクノロジーがすべての患者にとって常に優れているとは限りませんが、どのような患者がCGMの恩恵を受けられる可能性があるかを特定する必要があります」としている。

Continuous glucose monitors help manage type 2 diabetes(カイザーパーマネンテ 2021年6月2日)
Association of Real-time Continuous Glucose Monitoring With Glycemic Control and Acute Metabolic Events Among Patients With Insulin-Treated Diabetes(Journal of the American Medical Association 2021年6月2日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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