ニュース

2021年04月20日

掃除や洗濯などの家事が糖尿病リスクを下げる 家事が心臓病や脳卒中を抑制 脳の健康も改善

 家事をすることが、2型糖尿病のリスクを低下させるという研究が発表された。
 座ったまま過ごす時間をなるべく減らし、歩いて移動する、掃除や洗濯をする、庭仕事をするなどの家事の時間を増やすことで、心臓病や脳卒中のリスクを低下できる。
 家事に時間を費やすと、脳の健康も改善するという研究も発表されている。
家事も立派な運動に 家事をよくしている男性は糖尿病リスクが低下
 家事をすることが、2型糖尿病や心臓病のリスクを低下させるという研究を、オーストラリアのクイーンズランド大学とメルボルン国際糖尿病研究所が発表している。

 洗濯、アイロン、掃除などの基本的な家事であっても、糖尿病のリスクを減らすのに十分に役立つ可能性がある。「家事をただの雑用とみなすべきではありません」と、研究者は述べている。

 家事をしたり、歩いて移動する、買い物をするなど、ソフトな身体活動であっても、血糖値の上昇を抑えるために有用だ。

 「アイロンをかける、衣服を折りたたむ、散歩をするなど、低・中強度の身体活動であっても、血糖値を下げるのに役立つことが示されました」と、クイーンズランド大学公衆衛生学部のジュヌビエーブ ヒーリー氏は言う。

 研究グループは、中国北部の都市部に在住している、1万3,862人の35~78歳の男性を調査した。その結果、家事を含め身体活動を積極的にしている男性は、2型糖尿病を発症するリスクが4割低いことが示された。

 「家事をよくしている男性は、座ったまま過ごす時間が少ない傾向がみられました。座りがちな生活は、糖尿病にも悪影響をもたらします」と、ヒーリー氏は指摘している。
座りがちな時間は寿命を縮める 立ち上がって体を動かそう
 米国心臓学会(AHA)によると、座ったまま過ごす時間が多いと、運動不足になるだけでなく、心臓病や脳卒中のリスクが上昇する。

 「これまでの調査で、米国の成人は1日約6〜8時間、座ったまま過ごしていることが分かりました。60歳以上の成人では、座りがちな時間は1日8.5〜9.6時間と長時間におよびます」と、カイザーパーマネンテの研究員であるデボラ ローム ヤング氏は言う。

 座りがちな行動には、座ったり、椅子をリクライニングしたり、横になったりするだけでなく、テレビの視聴、コンピューターでの作業、読書なども含まれる。

 「メッツ/MET(またはMETs)」とは、運動や身体活動の「強度」を表す単位で、安静時(座って安静にしている状態)を1メッツとし、それぞれの身体活動がその何倍の強度に相当するかを示す。

 「アクティブでない活動」とは、エネルギー消費量が1.5メッツ以下のものだ。座ってテレビを見たり車に乗ると1メッツに相当し、軽い家事やゆっくりとした歩行は2.5メッツに相当する。普通歩行は3メッツだ。

 運動ガイドラインは、成人に活発なウォーキングなどの3メッツ以上の運動を1日に30分程度行うことを勧めている。週に3日以上、計150分(激しい運動は75分)行うことを推奨している。しかし、これだけの運動をこなしていても、座りがちな時間が長いと、その悪影響を相殺できないことが分かってきた。

 「座ったまま過ごす時間が長くなることで、血糖を下げるインスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性になりやすくなります。その結果、2型糖尿病、心血管疾患、あらゆる原因による死亡の全体的なリスクが上昇します」と、ヤング氏は指摘している。

 「現時点での最善のアドバイスは、座る回数を減らし、体を動かす機会をなるべく増やすことです」としている。
家事に時間を費やすと脳の健康も改善する
 家事をすることは、高齢者の脳も健康にすることが、カナダのベイクレスト高齢者医療センターの調査で明らかになった。家事に多くの時間を費やしている高齢者は、脳の容積を大きく保っているという。

 「運動が脳にとってプラスに働くことは、これまでの研究でも示されていましたが、今回の研究では、それが家事にも当てはまることが示されました」と、ロットマン研究所の運動生理学者であるノア コブリンスキー氏は言う。

 研究グループは、コミュニティに住む66人の認知症のない健康な高齢者の、家事、脳の容積、認知能力の関連を調べた。家事は、食器の片付け、掃除、食事の準備、買い物、庭仕事、家の修理、介護などが含まれた。

 その結果、家事に多くの時間を費やしている高齢者は、家事以外にどれだけ運動をしたかに関係なく、脳の容積がより大きいことが明らかになった。記憶と学習で大きな役割を果たす海馬と、認知能力に関わる前頭葉でその傾向は強かった。

 コブリンスキー氏は、家事が脳の健康にもたらすメリットについて、次のことを挙げている。
(1) 心臓の健康は脳の健康と密接に関連している。家事は、低強度のウォーキングなどの有酸素運動と同じように、心臓や血管に良い影響をもたらしている可能性がある。
(2) 家事を要領良くこなすためには頭も使う。家事に従事することは、高齢化してから脳の新しい神経接続をつくるのを促している可能性がある。
(3) 家事により多くの時間を費やしている高齢者は、座りがちな時間が少なかった。座りがちな生活は、脳の健康状態も悪化させる。

 「運動をしなければならないと思っていても、目標を達成できない人は多くいます。それに比べて、家事を行うことは日常生活で必要であり、自然なことです。ウォーキングや筋トレなどの運動は面倒という人でも、家事を行い体を動かすことは実行しやすいのではないでしょうか」と、同研究所の老年医学・認知症ケアが専門のニコール アンダーソン氏は述べている。

Sitting less for adults(オーストラリア心臓財団)
Association between household physical activity level and type 2 diabetes among urban males in northern China(Public Health 2018年10月)
Sitting too much may raise heart disease risk(米国心臓学会 2016年8月15日)
Sedentary Behavior and Cardiovascular Morbidity and Mortality(Circulation 2016年8月15日)
Spending time on household chores may improve brain health(ベイクレスト高齢者医療センター 2021年4月15日)
Household physical activity is positively associated with gray matter volume in older adults(BMC Geriatrics 2021年2月5日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲