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2021年01月12日
糖尿病の治療では「血糖変動」のコントロールが重要 大きな変動が「血管硬化」に影響
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- インスリンポンプ/CGM 医療の進歩 血糖自己測定(SMBG)
順天堂大学は、1日の中での「血糖変動」(血糖値の変化)や高血糖が、2型糖尿病での「血管硬化」に影響を与えることを明らかにした。
2型糖尿病患者445人を対象とした調査により、とくに日内血糖変動が大きい人で、血管硬化が進みやすくなっていることが分かった。
2型糖尿病の治療では、日内血糖変動をしっかりコントロールすることが重要であることが示された。
2型糖尿病患者445人を対象とした調査により、とくに日内血糖変動が大きい人で、血管硬化が進みやすくなっていることが分かった。
2型糖尿病の治療では、日内血糖変動をしっかりコントロールすることが重要であることが示された。
糖尿病の人は1日の血糖の変動が大きくなりやすい
食事の内容や量、運動やストレスなど、さまざまな要因により、血糖は1日の中で変化しており、これを「日内血糖変動」と言う。
糖尿病の人では、インスリンの分泌が低下していたり、あるいはインスリンの効きが悪くなっており、多くは食後の血糖がより増加しやすい状態になっている。
また、血糖を下げる薬で治療を受けている人は、薬の影響で血糖が下がり過ぎる低血糖を起こす場合がある。
さらに、血糖は健康な人でも変動するが、とくに糖尿病の人では、1日の血糖の変動が大きくなりやすいことが知られている。
糖尿病は、動脈硬化性疾患である心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントの発症リスクを増加させる。血管硬化を予防し、その進展を抑制することは、糖尿病の治療ではとても重要な課題だ。
「持続グルコース測定」で糖尿病患者の日内血糖変動を調査
順天堂大学の研究グループは、心血管系の病気(心血管イベント)と診断されたことのない2型糖尿病の患者を対象に、「持続グルコース測定」により評価した血糖コントロール指標と血管硬化との関連について調べた。
その結果、とくに大きな日内血糖変動を示す人では血管硬化が進んでいることが分かった。これにより、2型糖尿病の治療では日内血糖変動をしっかりコントロールすることが、血管硬化進展の抑制につながる可能性があることが示された。
研究は、順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学の若杉理美氏、三田智也准教授、綿田裕孝教授らの研究グループによるもの。研究成果は、医学誌「Cardiovascular Diabetology」に掲載された。
持続グルコース測定による血糖コントロール指標と血管硬化の関係
日常の臨床で血糖コントロール指標として使用しているHbA1cではなく、持続グルコース測定により評価した日内血糖変動の指標や高血糖の指標が血管硬化に関連している。
出典:順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学、2020年
血管硬化の指標となる「上腕-足首脈波伝播速度」も調査
これまでの研究で、2型糖尿病患者では高齢であること、血糖のコントロールが悪いこと、糖尿病の罹病期間が長いこと、血圧が高いことなどが血管硬化を進める危険因子であることが報告されている。
しかし、2型糖尿病患者での日内血糖変動を含む血糖コントロール指標と血管硬化との関連について、詳しくは分かっていなかった。
そこで、研究グループは、血糖変動と血管硬化との関連性を明らかにするために、心血管イベントの既往歴のない2型糖尿病患者を対象に、持続グルコース測定により評価した血糖コントロール指標と、血管硬化の指標である「上腕-足首脈波伝播速度」(baPWV)との関連性を調査した。
baPWVは、心臓からの血液が押し出されるときに生じる動脈の脈動が末梢へと伝播する波である脈波が、血管が硬いほど速く伝わるという原理を利用して、血管の硬化を簡便に検査できる脈波伝播検査。
両上腕、両足首に血圧測定カフ(腕帯)を巻いて、血管を流れる血液の脈動の速さ測定する。
2型糖尿病患者の血糖変動と血管硬化との関連性を分析
研究グループは、順天堂医院などに通院中の心血管イベントの既往歴のない2型糖尿病患者445人を対象に、持続グルコースとbaPWVを測定することで、血糖変動と血管硬化との関連性を分析した。
持続グルコース測定による評価項目は、日内血糖変動の指標と血糖コントロールの指標として、目標血糖値範囲(70~180mg/dL)を満たす割合と、治療域より低値である低血糖の割合(70mg/dL未満)、治療域より高値である高血糖の割合(180mg/dLより大きい、あるいは250mg/dLより大きい)などとした。
心血管イベントの高リスク因子と定義されるbaPWV≧1800cm/secを"血管硬化群"、1800cm/sec未満を"非血管硬化群"と定義し、持続グルコース測定により評価した血糖コントロールの指標とbaPWV≧1800cm/secとの関連性を検討した。
その結果、非血管硬化群に比較して血管硬化群では、日内血糖変動の指標が高値であり、高血糖(250mg/dLより大きい)の割合が高く、目標血糖値範囲(70~180mg/dL)を満たす割合が低いことが分かった。
しかし、過去1~2ヵ月間の血糖コントロールの状態を反映するHbA1cは両群間に差はなかった。
さらに、年齢、性別、HbA1cや血圧などオーソドックスな動脈硬化の因子を調整しても、日内血糖変動や高血糖(250mg/dLより大きい)の割合が大きいことが、baPWV≧1800cm/secに関連する有意な因子であることが分かった。
一方で、HbA1cとbaPWV≧1800cm/secとの関連性はみられなかった。
このことから、食後の血糖値の大幅な増加などの血糖変動が、心血管イベントの発症リスクを増加させている可能性が示された。
日内血糖変動や高血糖の指標を改善することが重要
今回の研究では、日常の臨床で血糖コントロール指標として使用しているHbA1cではなく、持続グルコース測定により評価した日内血糖変動の指標や高血糖の指標が、血管硬化に関連していることが明らかになった。
「血管硬化を評価するには、HbA1cの測定のみでは十分ではなく、持続グルコース測定を行い血糖の変化を把握することが重要であると考えられます」と、研究者は述べている。
日内血糖変動が2型糖尿病患者の血管硬化と関連しており、血管硬化が進行し、心血管イベントを起こしてしまうと、患者の寿命が短くなる、あるいは生活の質(QOL)が大きく損なわれ、経済的な負担も増加する。
「持続グルコース測定により評価した日内血糖変動の指標や高血糖の指標を改善させることが、心血管イベント発症の予防策となるかを検証することが重要と考えられます」と、研究者は述べている。
今後の展開としては、「日内血糖変動の指標や血糖コントロールの指標が動脈硬化が進行して起きる心血管イベント発症に関連するのかを明らかにしたいと考えています。さらに、それらの指標を改善させることが、動脈硬化や心血管イベントの抑制につながるかを検証する予定です」としている。
順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学Association between continuous glucose monitoring-derived metrics and arterial stiffness in Japanese patients with type 2 diabetes(Cardiovascular Diabetology 2021年1月7日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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