ニュース

2020年09月24日

【新型コロナ】糖尿病、腎臓病、高尿酸血症(痛風)のある人はCOVID-19にとくに注意

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で死亡にいたる危険因子として、すでに報告されている高齢、糖尿病、慢性腎臓病に加え、高尿酸血症(痛風)が大きく関わっていることが、日本の調査ではじめて明らかになった。
 高尿酸血症は尿酸値が高くなる病気。食べ過ぎ・運動不足・ストレスなど、高尿酸血症になりやすい生活スタイルは、糖尿病の人にも勧められない。
 COVID-19の再拡大に備えて、尿酸値が高いと指摘されたら、尿酸値を上げないことにも気を配る必要がある。
高尿酸血症は尿酸値が高くなる病気
 「高尿酸血症」は、尿酸値が高くなる病気。体内でのプリン体が増えたり、腎臓での尿酸の排泄量が減ってしまうと、血液中の尿酸の量が増えていく。

 尿酸値が7.0mg/dLを超えると高尿酸血症と診断され、関節の中で尿酸の結晶ができはじめる。尿酸値が高くなるほど、また期間が長くなるほど、痛風発作が起きやすくなり、合併症のリスクが上昇する。

 高尿酸血症の状態のままでいると、ある日突然、痛風発作に襲われるようになる。また、尿酸の結晶が腎臓にたまると、腎障害を引き起こし、尿路や膀胱にたまると尿路結石も起こす。
糖尿病も高尿酸血症も生活スタイルの改善が重要
 尿酸値が高くなりやすい生活スタイルは、2型糖尿病も悪化させやすい。

▼高カロリーの飲料や食品をよく食べる。▼アルコールをよく飲む。▼食べ過ぎ、とくに肉や魚の内臓が好き。▼肥満、とくに内臓脂肪型肥満がある。▼運動不足、▼ストレスがたまっている。

 こうした生活スタイルを続けていると、糖尿病が改善しないばかりか、尿酸値も高くなりやすい。

 とくに肥満によって内臓脂肪が増えると、肝臓で尿酸がたくさん作られるようになる。肥満があると、血糖値を下げるインスリンも大量に分泌されるようになり、尿酸の排泄を阻害するため、尿酸値が上がりやすくなる。
高尿酸血症はCOVID-19も重症化させる
 慶應義塾大学の研究グループ(K-CORC)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、同大学グループ内の14病院に2020年6月中旬までに入院した全患者345例を調査した。

 患者の基礎情報、入院時の症状、併存疾患などを調査した。さらに、酸素吸入を要する重症化の危険因子や、死亡に至る危険因子の解析を行った。

 その結果、酸素吸入が必要となるほどCOVID-19が重症化した例で危険因子を調べたところ、上位より、▼慢性閉塞性肺疾患(COPD)の併存症、▼入院中の症状としての意識障害、▼息切れ、▼全身倦怠感、▼高血圧症の併存症、▼高齢が関与していることが明らかになった。

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称で、タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じる肺の炎症性の病気。日本では40歳以上の人口の8.6%、530万人がいると推定されている。

 さらに、死亡にいたる危険因子として、これまでの報告と同じように、▼高齢、▼慢性腎臓病が示された。それにに加えて、新たに▼高尿酸血症(痛風)が関わっていることが分かった。
なぜCOVID-19が重症化するのか
 新型コロナウイルスに感染した場合、高尿酸血症(痛風)があると重症化しやすいメカニズムとして、次のことが考えられている。

 一般に人が病原体に感染した場合には、病原体と戦って体を守るために、体にそなわった免疫システムが働く。すると細胞からサイトカインと呼ばれるタンパク質が産生されて、炎症が生じる。

 炎症は、ウイルスなどの病原体の感染などから体を守る、生体の反応だ。炎症が生じると、その部位は赤く、熱くなり、腫れ、痛みを感じるようになる。これを炎症の4徴候という。

 ところが、COVID-19の重症例では、そのサイトカインが過剰に産生され、免疫の暴走である「サイトカインストーム」と呼ばれる状態におちいってしまう。
高尿酸や高血糖は炎症や酸化ストレスを引き起こす
 サイトカインストームにより、肺をはじめ複数の臓器で過剰な炎症を引き起こすと、しばしば患者自身を死に至らしめることになる。

 高尿酸血症は、炎症や酸化ストレス反応を増強させて、糖尿病や関節リウマチなどの、炎症や酸化ストレスに深くかかわる疾患の死亡リスクを上昇させることが知られている。

 糖尿病もまた、血糖値が高い状態が続くと、血管の炎症を引き起こす。血管に炎症が起きると、それがさらに高血糖を引き起こすという悪循環におちいりやすい。

 慶應大の研究グループは、高尿酸血症(痛風)があることで、COVID-19の重症化の鍵であるサイトカインストームを通じた過剰な炎症がさらに増幅され、死亡リスクを上昇させている可能性を指摘している。
新型コロナの再流行に備えて、良好な血糖コントロールを維持することが大切
 糖尿病は、COVID-19が重症化する原因として深刻だが、高尿酸血症(痛風)は、さらに深刻である可能性が示された。

 高尿酸血症(痛風)が危険因子であることは、国立感染研究所疫学センターが、国内流行ごく早期の3月までに行った調査でも指摘されている。

 なお、8月上旬に発表された、国立国際医療研究センターが主導した研究では、重症化しやすい症例として、▼男性、▼高齢者、▼喫煙者、▼併存疾患(心血管系、糖尿病、COPD)が挙げられた。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、またたく間に日本を含むアジア、欧州、北南米、アフリカと、全世界に感染が拡大した。2020年9月16日時点で、世界での罹患者は2,900万人超、死者は93万人を超えている。

 日本でも、新規患者数が再度増加し第2波を迎え、そのピークも越えたとみられているが、WHOをはじめとする感染症・公衆衛生学の専門的見解によると、このパンデミックは当面の間は続き、今後も流行を繰り返すことは必至とみられている。

 COVID-19の再拡大に備えて、糖尿病や血糖値が高いと指摘された人は、良好な血糖コントロールを維持し、尿酸値が高いと言われた人は、尿酸値を上げないことにも気を配る必要がある。

 そのために、食事や運動、ストレスなどの生活スタイルを見直し、医師から処方された薬は、指導された通りにきちんと飲み続けることが大切だ。

慶應義塾大学医学部内科学教室
慶應義塾の新型コロナウイルス関連 研究活動報告(慶應義塾大学)
慶應ドンネルプロジェクトチーム
Clinical characteristics of 345 patients with coronavirus disease 2019 in Japan: a multicenter retrospective study(Journal of Infection 2020年9月10日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲