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2020年09月10日

「座ったままの生活」は腎臓にも良くない 座位中心だとタンパク尿のリスクが上昇 「立ち上がって運動を」

 大阪大学の研究で、デスクワークが中心で座ったままの時間が長い人は、腎臓病のリスクが高いことが明らかになった。
 デスクワークの合間に、立ち上がって軽い運動を行い、長時間のデスクワークを避けることが、腎臓病の予防につながる可能性がある。
座ったままの時間を減らして運動をすると病気のリスクは低下
 ウォーキングなどの運動には「血糖を下げる」「血圧を下げる」「悪玉のLDLコレステロールを下げる」「中性脂肪を下げる」など、さまざまなメリットがある。

 一方、座ったままでいる時間が長く、運動不足が続いている人は、血糖値や腹囲、中性脂肪、コレステロールなどの値が悪化しやすく、メタボリックシンドロームや2型糖尿病、心血管リスクなどの危険性が高く、死亡リスクが上昇することが分かっている。

 運動ガイドラインでは、週に150分の中強度から高強度の運動をすることが勧められているが、それを実行するのが難しい場合には、座ったまま過ごす時間をなるべく減らすだけでも効果を得られる。

 1日のなかで座位時間を減らすメリットは、海外の研究でも確かめられている。英国のレスター大学の研究では、座ったまま過ごす時間を減らし、さらに立ち上がって軽い運動をすることを付け加えると、食後のインスリン分泌や血糖上昇が抑制されることが明らかになっている。

関連情報
座ったままの時間が長いと腎臓病のリスクが上昇
 腎臓の機能が徐々に低下していく慢性腎臓病(CKD)は、症状がかなり進行しないと自覚症状があらわれない。しかし、腎臓の機能は失われると元に戻らないため、早期発見がとても重要になる。

 腎臓病の検査のひとつに、タンパク尿を測る検査がある。健康な人は陰性で、腎臓に病気があると陽性になる。尿タンパクが(+)と判定された場合は、1日に正常以上のタンパクが尿に下りていると考えられる。

 大阪大学の研究で、1日の多くをデスクワークが占め、座ったままの時間が長い人は、腎臓病のリスクも高いことが明らかになった。座位中心の生活スタイルを続けている男性は、そうでない男性に比べ、タンパク尿を発症するリスクが1.35倍に上昇するという。

 座ったままでいる時間を減らすことは、腎臓病の予防にもつながる可能性がある。「デスクワーク時間の短縮が、腎臓病を予防し、増加の一途をたどる透析患者数の抑制につながると期待されます」と、研究者は述べている。
腎臓の働きが低下すると「タンパク尿」が出てくる
 腎臓は血液中の不要なものをろ過して尿を作る。腎臓の働きが低下してくると、血液中に不要なものが溜まったり、逆に必要なものが尿に混ざって出てしまう。

 タンパクは体にとって必要な構成成分なので、健康であれば尿にはほとんど混ざらない。しかし腎臓の働きが低下すると、ろ過機能をもつ糸球体をタンパクが通過して尿に出るようになる。糸球体のろ過量が低下し、タンパク成分が通過してしまう状態は、糸球体そのものにとっても負担になる。

 また、腎臓の機能低下は血圧を上昇させる。血圧が高いと糸球体内部の細い血管が傷めつけられる。腎臓の病気で引き起こされるタンパク尿と高血圧により、病気がさらに進行してしまうという悪循環におちいりやすい。

 さらに、糖尿病も腎臓の働きを低下させる原因になる。血糖値が高い状態が続くと、血管が傷みやすくなり、腎臓の働きが低下していく。糖尿病性腎症は、透析療法が必要になる原因の第1位だ。

 日本の透析患者数は2018年末時点で約34万人で、透析医療費は全医療費の約4%(1兆6,000億円)を占める。腎臓病を早期発見し、透析への移行を抑止することは、患者だけでなく社会にとっても大きな課題になっている。
「座位」の多い男性はタンパク尿のリスクが1.35倍に上昇
 大阪大学の研究グループは、2006~2018年度の同大学職員の定期健康診断データを使い、デスクワークがタンパク尿の発症に及ぼす影響を評価した。

 初回健診受診時に主な就業形態を「座位」と回答したデスクワークの多い男性3,449人では、中央値4.8年の追跡期間に、13.1%(452人)がタンパク尿(尿タンパク1+以上)を発症した。

 一方、「立位」「歩行」「物を運ぶ」「重労働」と回答した男性1,538人のうち、タンパク尿を発症したのは9.4%(145人)だった。

 研究は、大阪大学キャンパライフ健康支援センターの山本陵平准教授および大学院医学系研究科の猪阪善隆教授らの研究グループによるもの。研究成果は、科学誌「Journal of Nephrology」オンライン版に掲載された。
デスクワークの合間に定期的に軽い運動を
 このように、「座位」中心の男性では、そうでない男性に比べ、タンパク尿のリスクが1.35倍に上昇したことが明らかになった。なお、女性では座位とタンパク尿の関連はみられなかった。

 「今回の研究により、長時間労働者の割合が高いことで知られている日本で、労働時間のみならず、デスクワークという就労形態が、健康障害のリスクとなる可能性が高いことを明らかにしました」と、山本准教授は述べている。

 「デスクワークの合間に定期的に軽い運動を行い、長時間のデスクワークを避けることが、腎臓病の予防につながると期待されます。近年スタンディングワークが注目されていますが、その有効性はまだ明らかではなく、今後さらなる研究の進展が待たれます」としている。

主な就業形態が座位でデスクワークの多い男性ではタンパク尿の発症率が高い
出典:大阪大学キャンパライフ健康支援センター、2020年

大阪大学キャンパライフ健康支援センター
Dr.山本の疫学研究のすすめ(山本陵平研究室)
Occupational sedentary behavior and prediction of proteinuria in young to middle-aged adults: a retrospective cohort study(Journal of Nephrology 2020年8月27日)

Predictors of the Acute Postprandial Response to Breaking Up Prolonged Sitting(Medicine & Science in Sports & Exercise 2020年6月)
Exercise shown to improve symptoms of patients with chronic kidney disease(レスター大学 2018年8月16日)
Twelve weeks of supervised exercise improves self-reported symptom burden and fatigue in chronic kidney disease: a secondary analysis of the 'ExTra CKD' trial(Clinical Kidney Journal 2018年8月14日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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