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2020年07月08日

糖尿病の人は熱中症になりやすい? 夏場にマスクを着用して運動するときには注意

 新型コロナウイルス感染症に対策するために、多くの人がマスクを使い続けている。しかし、夏場のマスクは熱中症のリスクを高めるので注意が必要だ。
 マスクを着用して運動をするときは、「身体に負担がかかるので、マスクをはずして休憩することも大切」と、専門家は注意を呼びかけている。
夏場にマスクを着用すると熱中症のリスクが上昇
 夏場にマスクを着用していると、熱中症のリスクが上昇するので、注意が必要になる。

 気象庁によると今年の夏は気温が平年並みか高めになる。熱中症のリスクが高まると考え準備しておくことが大切だ。

 とくに高齢者や乳幼児、糖尿病などの基礎疾患をもつ人は、熱中症のリスクが上昇しているおそれがある。

 日本救急医学会による熱中症の実態調査によると、糖尿病、高血圧、心血管疾患、認知症があると熱中症になりやすい。

 糖尿病をもつ人が熱中症になりやすい理由は、▼血糖コントロールが悪い状態が続くと、血管や神経に障害が起こりやすくなる。その結果、汗腺の働きが悪くなり、汗をかきづらくなり、体を効果的に冷やすのが難しくなる。▼夏場に猛暑が続くと、運動をふだん通り続けるのが難しくなり、血糖コントロールが乱れやすくなるといったことだ。

 朝夕の涼しい時間帯に運動する、糖分の多い高カロリーの飲料を飲み過ぎないようにするなどの工夫が必要となる。

関連情報
マスクをしていると身体を冷やすのが難しくなる
 ヒトは、気温が高くなり体内に熱がこもるようになると汗をかき、呼吸をして冷えた空気を体内に取り込むことで熱を発散し、体温調節を行っている。

 しかし、マスクをしていると自分の呼吸により温められた空気しか入ってこないため、呼吸で身体を冷やすことが難しくなる。また、顔の半分ほどがマスクで覆われることで、熱がこもりやすくなる。

 さらに、マスクによる加湿で口の渇きを感じにくくなるため、熱中症に気づくのが遅くなり、とくに高齢者では熱中症になるリスクは高まると考えられている。
マスク着用により低酸素環境に
 マスク着用下で運動をすると、呼吸障害が引き起こされ、熱中症を起こしてしまうおそれがある。

 マスク装着し運動した人は、心拍数、呼吸数、二酸化炭素が増加し、顔面の温度が2℃近く上昇したという報告もある。

 マスク着用時の運動により、めまいや頭痛、血圧の上昇など、高地トレーニングのような症状が起こるおそれがあるという研究も報告された。

 英国のハートフォードシャー大学のリンゼイ ボトムズ氏は運動生理学を専門としている。

 ボトムズ氏らは、運動時のマスク着用の有無で、二酸化炭素濃度や酸素濃度がどのように変化するのかを調べるために、ランニングマシンで時速10kmの速度で3分間走り、呼吸がどう変わるかを確かめる実験を行った。
高地トレーニングのような症状が
 その結果、大気中の酸素濃度は海抜0メートルで21%程度だが、フェンシング用マスクの下にマスクを着用して走ると、酸素濃度は17%にまで低下した。

 これは、海抜1,500m地点での高地トレーニングに近い状態で、心臓や心血管系の負荷が高まり、血圧も高くなるという。

 運動は筋肉の収縮により行われ、代謝産物として二酸化炭素、乳酸、そして熱が生じる。

 「マスクを付けて運動をしていると、二酸化炭素の排出がマスクによって遮られ、呼吸数や心拍数が増え、高地トレーニングに似た低酸素環境になり、身体により負荷をかけてしまうるおそれがあります」と、ボトムズ氏は言う。

 中国では10代の少年2人がマスクを着用して体育の試験を受け、おそらく熱中症を起こし、1週間以内に亡くなったという報道がある。

 「ウォーキングなど低強度から中強度の運動であれば、マスクを使用しても、少し息が苦しくなることがあっても、快適に歩けるかもしれません」と、ボトムズ氏は指摘する。

 「しかし、マスクを着用する場合には強い負荷の運動や作業を避けるべきです。高温や多湿の環境下では、ときおりマスクを外して、心拍数を整える必要があります」。
マスクをはずして休憩することも大切
 今年は外出を自粛し、家で過ごした時間の多い人が多く、屋外の暑さに慣れておらず、マスクをつけて外出することで体調を崩す可能性もある。

 熱中症を予防するために、▼こまめに水分を摂ること、▼室内では冷房を活用し、室内を涼しくすることが重要だ。

 日本救急医学会や日本感染症学会など4学会は、「マスク着用により、身体に負担がかかりますので、適宜マスクをはずして休憩することも大切です」と注意を呼びかけている。

 「ただし感染対策上重要ですので、はずす際は身体的な距離(フィジカル ディスタンシング)に配慮し、周囲環境などに十分に注意を払って下さい」としている。
気が付いたら熱中症になっていたというケースも
 水分はこまめにゆっくりと摂ることも必要で、のどが渇いたときに水分を摂っていると、気が付いたら熱中症になっていたというケースもある。

 のどの渇きを感じにくい高齢者や自分で喉の渇きなどを訴えにくい乳幼児も積極的に水分を摂ることが大切だ。

 また、ウイルスへの感染を防ぐため室内を換気する際は気温が上がらないようカーテンなどで直射日光を避け、エアコンをこまめに使ってほしいとしている。

 本格的な夏を迎える前に、暑さに体を慣らしておくため、気温が下がる時刻に外を散歩したり、家の中で立ち上がって足踏みをする、スクワットをする、体操をするなどして、徐々に体を慣らしておくのも効果的だ。

 気象情報をしっかりとチェックし、自分の体調を知っておくことも大切。とくに1人暮らしの高齢者などは屋内で熱中症になることが多いため、周囲の人が頻繁に声をかけることも求められている。

熱中症予防×コロナ感染防止 厚生労働省と環境省が公開しているポスター

熱中症の実態調査(日本救急医学会)
新型コロナウイルス 感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言(日本救急医学会 2020年6月1日)
Why it could be dangerous to exercise with a face mask on(ハートフォードシャー大学 2020年6月15日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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