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2020年02月03日

1日にたった10分の運動でも認知能力が向上 運動をしない習慣がもっとも危険

 1日わずか10分の運動で認知機能を良好に維持できる可能性がある。「もっとも危険なのは、まったく運動をしないことです」と、研究者は強調している。
1日10~20分の運動でも効果がある
 自宅にいるときはソファーに寝そべりテレビを見ながら長時間を過ごし、体を動かさない。そんな生活を続けていると将来に認知症の発症リスクが高まるおそれがある――。

 高齢の糖尿病患者では認知症の合併が多い。糖尿病のある人ではそうでない人に比べ、アルツハイマー病や血管性認知症の発症リスクが2~4倍に上昇するという報告がある。

 認知症の多くは、生活スタイルを改善し、健康的な生活をおくることで予防が可能であることも分かっている。若い頃から認知症を予防するために対策することが重要だ。

 1日わずか10分の運動でも、認知機能を良好に維持するために役立つ可能性があるという研究を、米国のボストン大学が発表した。

 研究チームは、米国で1940年代から行われている、心筋梗塞や脳卒中の効果的な予防策を調べるための大規模研究である「フラミンガム心臓研究」に参加した、認知症や心疾患のない2,770人の男女を対象に、平均年齢48.7歳のグループと同71.3歳のグループに分けて調査した。

 その結果、いずれのグループでも1日10~20分の中等度から高強度の身体活動を行っている人で、認知機能が良好である傾向がみられた。

 また、中年のグループでは、わずか10分の中等度~高強度の身体活動を行っている人でも言語記憶が良好だった。高齢のグループでは、身体活動の強度ではなく量が、認知機能の高さとより強く関連していた。

関連情報
体力の低下した高齢者にも運動は必要
 米国保健福祉省(HHS)の運動ガイドラインでは、ウォーキングなどの中強度の有酸素運動を週に150分行うことが推奨されている。

 しかし今回の研究は、それよりも少ない運動量であっても効果があることを示している。

 「体力の低下した高齢者にとって、推奨された運動を続けるのは困難です。今回の研究はそうした高齢者に希望をもたらすものです」と、ボストン大学医学部のニコル スパルタノ氏は述べている。

 「運動は激しいものである必要はなく、通常のウォーキングなど中強度の運動でも、脳に良い影響があらわれます。もっとも危険なのは、まったく運動を行わないことです」。
若い頃からの運動の継続が重要
 「軽い運動であれば続けやすく、目標を達成しやすくなります。脳の老化を抑えるために、とにかく体を動かすことを習慣にするべきです」と、スパルタノ氏は指摘する。

 今回の研究は、身体活動の量を加速度計を用いて正確に調査したのが特徴だ。また、年齢層を分けて調査したことで、年齢によって求められる身体活動の質や量は違ってくることが示唆された。

 スパルタノ氏らが2016年に発表したフラミンガム研究をもとにした研究では、40歳時に運動能力が低下していると、20年後に脳が早く老化する傾向があることが示されている。

 40歳の時点で運動中に体に取り込まれる酸素の最大量を示す「最大酸素摂取量(VO2max)」が低下し、運動能力が低下していた人は、20年後に脳が早く萎縮していた。

 運動能力がもっとも低かったグループでは、もっとも高かったグループに比べ、脳の容量がより減少しており、老化が2年分加速することが判明した。

 これらの研究は、若い頃からの運動の継続が重要であることを裏付けるものだ。40歳の頃にウォーキングやランニングをするとすぐに息切れするという人は注意が必要だ。
短い時間でも長い時間でも運動の効果は重要
 運動に慣れてきたら、運動時間を増やしていくことも重要だ。

 スパルタノ氏らが2019年に発表した、やはりフラミンガム研究に参加した平均年齢53歳の2,354人の男女を対象とした研究では、ウォーキングなどの軽い運動に費やす時間が1日に1時間増すごとに、脳の老化は1.1年遅くなることが明らかになっている。

 運動の量は多いほど良く、1日に1万歩以上歩く人では、1日に5,000歩未満の人に比べ、脳の容積が大きいことが示された。

 運動をすれば血流が増え、より多くの酸素が脳に運ばれる。過去の研究では、短い時間でもウォーキングなどの運動をすることで、脳の認知機能をコントロールする部位の活動が活発になることが確かめられている。

 また、運動を習慣として続ける事で、血糖を下げるインスリンの脳での作用も向上する。「脳のインスリン抵抗性」は認知症の要因として注目されている。

 ただしこれらの研究は、運動が認知症予防に直接的につながることを示したものではなく、どのような運動をどれだけ、いつ始めれば良いのかについては個人差があり、不明の点も多い。また、認知症と診断された場合は、医師による治療を受けることが大切だ。

 スパルタノ氏は、さまざまな民族や社会経済などの背景別に、運動が脳の老化に与える影響を調査する必要があると指摘している。

Accelerometer-determined physical activity and cognitive function in middle-aged and older adults from two generations of the Framingham Heart Study(Alzheimer's & dementia 2019年10月15日)
Couch Potatoes May Have Smaller Brains Later in Life(ボストン大学 2016年2月10日)
Midlife exercise blood pressure, heart rate, and fitness relate to brain volume 2 decades later(Neurology 2016年2月10日)
Light, Physical Activity Reduces Brain Aging(ボストン大学医学部 2019年4月19日)
Association of Accelerometer-Measured Light-Intensity Physical Activity With Brain Volume: The Framingham Heart Study(JAMA network open 2019年4月19日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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