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2019年03月07日

糖尿病の人は認知機能が低下しやすい 体と心を活発に動かして予防

 糖尿病の人は認知症を発症するリスクが高いと考えられている。血糖値が高いほど認知機能は低下しやすいことが、5,000人以上を10年間追跡した調査で明らかになった。
 活発な運動を続けている人では、認知症の発症が少ないことも明らかになっている。運動以外にも、交流をする、読書や音楽、絵を描くなどで精神的な活動も予防につながるという。
血糖値が高い人ほど認知機能は低下しやすい
 認知機能の低下は、記憶力、集中力、意思決定力などの精神的能力の変化を示す。認知機能が低下している人は、認知症を発症するリスクが高いと考えられている。

 認知症と糖尿病との関連については、さまざまな研究が進められている。日本でも、九州大学が行っている「久山町研究」で、高齢糖尿病患者では認知症の合併が多いことが明らかになっている。糖尿病のある人ではそうでない人に比べ、アルツハイマー病や血管性認知症の発症リスクが2倍に上昇するという。

 英国のインペリアル カレッジ ロンドンの研究で、過去1〜2ヵ月の血糖値の平均を反映する「HbA1c」の値が高い人ほど、認知機能が低下しやすいことが分かった。この研究は、欧州糖尿病学会(EASD)の学会誌「Diabetologia」に発表された。

 研究グループは、50歳以上の英国人を対象に実施されている大規模研究「英国縦断的高齢化調査(ELSA)」に参加した5,189人の男女を対象に調査した。この研究は、高齢者の健康・社会・福祉・経済についての状況を調べる目的で実施されている。

 参加者の平均年齢は65.6歳で、全体の55.1%が女性、HbA1cは3.6%から13.7%と幅があった。健康診査を2004〜2014年の2年ごとに合計5回受けてもらい、認知機能についても調べた。

関連情報
良好な血糖コントロールが認知機能の低下を抑える
 その結果、血糖コントロールが正常な人に比べ、数値が高い人では加齢とともに認知機能が低下していた。認知機能の低下はHbA1c値と直接的に関連しており、HbA1c値が高いほど認知機能が低下しやすいことが明らかになった。この関連は糖尿病と診断されていない糖尿病予備群の段階でもみられるという。

 「糖尿病の人にとって認知機能低下ともっとも関連が深いのは、おそらく血糖コントロールです。血糖コントロールを良好に行ったり、糖尿病の発症を遅らせることで、認知機能の低下の進行を緩和できる可能性があります」と、インペリアル カレッジ ロンドン公衆衛生学部のワクシェン シエ氏は言う。

 「糖尿病が認知機能低下を引き起こすとしたら、どのような生物学的プロセスがそれを促進させているかを、今後の研究で確かめる必要があります。糖尿病患者が自分の脳の健康に保つために何が必要かを確かめることが重要です」。

 「2型糖尿病の人が認知症の発症リスクを減らすために必要なのは、血糖コントロールに加え、健康的な体重の維持、健康的でバランスのとれた食事、アルコール摂取の制限、禁煙、運動の習慣化、血圧コントロールです」と、英国糖尿病学会のエミリー バーンズ氏は言う。
体と脳を活発に働かせると認知症の予防につながる
 認知症を予防するために何が必要かを解明するための研究も進められている。

 認知症を予防するために、若い頃からウォーキングや水泳などの活発な運動をすることが必要なことが、スウェーデンの研究で明らかになった。運動に加えて、交流をする、読書や音楽、絵を描くなどで精神的な活動をすることも効果的だという。

 研究にはスウェーデンの38〜54歳(平均年齢47歳)の女性800人が参加。研究グループは、参加者の試験開始時の身体活動や精神活動を調査し、1968〜2012年の44年間にわたり追跡した。

 中年期の身体的な活動や精神的な活動への取り組みと、その後の認知症の発症との関連を調べた。

 身体活動の内容は、週に4時間のウォーキング、ガーデニング、テニス、サイクリング、ボーリング、週に数回のランニング、水泳、競技スポーツへの参加などさまざまだった。参加者の17%は活動的で、82%は不活発だった。

 また、精神的な活動への取り組みを10段階で評価した。参加者の44%は0〜2ポイントと低スコアで、56%は3〜10ポイントと高スコアとそれぞれ判定された。

 なお、精神的な活動の内容は読書、執筆活動、アートの創作、ガーデニング、楽器の演奏、合唱団での歌唱、コンサートでの音楽鑑賞、手芸など多岐にわたった。
運動に加えて精神的な活動も効果がある
 44年間で194人が認知症を発症。102人がアルツハイマー型認知症、27人が血管性認知症、41人が2〜3種類のタイプの認知症が合併した混合型認知症、81人が脳血管疾患をともなう認知症を発症した。

 解析した結果、中年期に身体活動のレベルが高かった女性は、低かった女性に比べ、血管性認知症リスクは52%低く、アルツハイマー病など混合型認知症リスクは56%低かった。また、精神活動レベルが高かった女性では、認知症リスクは34%低く、アルツハイマー型認知症リスクは46%低かった。

 運動をすることで、脳の血管の状態が改善され、脳が活動するのに必要な酸素とエネルギーを供給できるようになる。「今回の調査では、運動に加えて、精神的な活動も効果があることが分かりました」と、ヨーテボリ大学神経科学・生理学研究所のジェナ ネジャ氏は言う。

 どのような運動をしていたかに関わらず、精神的な活動は恩恵をもたらすことが示された。なお、身体活動と精神活動の両方を行うとどのような効果を得られるかは、今回の研究ではよく分からなった。

 「認知症の有病者数は世界中で増えています。深刻な病気ですが、いまところ治療法や治療法はありません。認知症を予防するために、若い頃から運動を習慣として続けることと、社会的な交流を含む精神的な活動をすることをお勧めします」と、ネジャ氏は指摘している。

Diabetes and worse blood sugar control are associated with long-term cognitive decline(Diabetologia 2018年1月25日)
HbA1c, diabetes and cognitive decline: the English Longitudinal Study of Ageing(Diabetologia 2018年1月25日)
New research suggests link between diabetes and brain function(英国糖尿病学会 2018年1月26日)
Keeping Active in Middle Age May Be Tied to Lower Risk of Dementia(ヨーテボリ大学神経科学・生理学研究所 2019年2月21日)
Cognitive and physical activity and dementia: A 44-year longitudinal population study of women(Neurology 2019年2月21日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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