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2018年11月22日

糖尿病は脳卒中や認知症のリスクを上昇 「発芽玄米」が脳を高める

 国立循環器病研究センターは、発芽玄米に含まれる健康成分を増加させる方法を開発し、その発芽玄米を摂取することで脳内物質「BDNF」の産生が増えることを、マウスを用いた実験で確認した。BDNFは脳血管疾患や認知症などの予防に活用できる。
 BDNFの産生を増強する発芽玄米も発売された。
糖尿病が進行すると脳卒中や認知症などの危険が上昇
 認知症とは、脳がダメージを受けて記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障が出る状態をいう。脳卒中などの脳血管障害が原因で、認知症を発症することがあるのをご存知だろうか?

 脳梗塞は発症すると後遺症が残ることが多く、最重度の要介護5の原因疾患の第1位だ。一方で、日本の認知症患者数は2012年時点で約462万人、65歳以上の高齢者の約7人に1人と推計されており、認知症の前段階とされる「軽度認知障害(MCI)」と推計される約400万人を合わせると、高齢者の約4人に1人が認知症もしくは予備群だ。

 糖尿病が進行すると、脳卒中や認知症など、命に関わる病気につながる危険が高まる。原因のひとつは、血液中のブドウ糖が過剰に増え、脳を含めた全身の血管が傷つくことだ。アルツハイマー型認知症では、原因物質が体から除去されるを高血糖が妨いでしまう可能性が指摘されている。脳卒中や認知症の効果的な予防法が必要とされている。
「BDNF」が増えると、脳卒中への抵抗性や記憶力が高まる
 脳には多くの神経細胞が集まっている。その神経細胞が毎日活動することで、物事を記憶したり、さまざまなことを判断できるようになる。そうした脳の活動を支えている栄養分のひとつが「BDNF(Brain-derived neurotrophic factor)」だ。

 「BDNF」は脳由来神経栄養因子と呼ばれるタンパク質の一種で、神経細胞の発生や成長、維持や再生を促す作用がある。脳内で記憶を司る「海馬」に多く含まれていて、そこで神経細胞の動きを活発化させると考えられている。

 BDNF産生量が増加すると、虚血性脳卒中への抵抗性や記憶力が高まり、またうつ症状が軽減することが、これまでの研究で明らかになっている。BDNFを脳血管疾患や認知症の予防に活用する研究も行われている。

 このようにBDNFは脳の活動をサポートする重要な役割を担っているが、65歳以上では年齢を重ねるほどに減ることが報告されている。

 BDNFは、「適度で自発的、持続的な身体活動」や「適度で持続的なカロリーの摂取制限」、すなわち「身体をしっかり動かして、腹八分目の生活を続けること」によって増加する。しかし、運動や食事制限を続けられない人も多く、新たなアプローチによりBDNFを増加する手段の開発が求められている。
脳内の「BDNF」を増やす新たな発芽玄米を開発
 国立循環器病研究センターの研究グループは、新たな製造法を開発し、「5-アミノレブリン酸(ALA)」を適切に用いることで、発芽玄米に含まれる「ガンマ-アミノ酪酸(GABA、ギャバ)」が通常の発芽と比べて増加することを明らかにした。

 玄米の発芽過程では、適切な温度と水が必要となる。ALAはエネルギーと代謝水の生成に欠かせない天然アミノ酸。動植物で呼吸およびエネルギー変換と水の産生を行うミトコンドリアの代謝を司るヘム/シトクロムの原料となる。また、GABAは白米にはほとんど含まれず、発芽時の良好な酵素活性によって胚芽などで産生される。頭部外傷後の記憶力の低下を改善させることを目的とした保険適応を持つ臨床薬の成分でもある。

 玄米が発芽するとギャバ量が約3〜4倍に増加するが、劣悪な発芽環境や不十分な発芽時間ではほとんど増加しない。研究グループが新たに開発した発芽手法では、発芽過程でALAを適切に用いることで、発芽反応が一定時間内に十分に進み、より健全に発芽することが明らかとなった。
発芽玄米によりマウスの記憶力が向上
 さらに、マウスをマウス用通常食群、同発芽玄米群、従来の発芽玄米(無作為に3種を抽出)群に分け、6週間にわたり飼料として与えた後に、マウスの空間認知学習能力を判定した。

 その結果、マウス用通常食で飼育されたマウス群に比べて発芽玄米で飼育されたマウスの成績が有意に高く、この発芽玄米によりマウスの記憶力が向上したことが示された。また、マウスに対してマウス用通常食または同発芽玄米のいずれかの処置後に、脳内BDNF量を測定。その結果、同発芽玄米群のBDNF量が、マウス用通常食群と比較して高いことが示された。

 なお、ギャバ以外に発芽玄米に含まれるとされる主な健康成分として、「γ(ガンマ)‐オリザノール」「フェルラ酸」「食物繊維」「玄米乳酸菌」「ビタミンB1」などがある。BDNF産生への影響の観点から、それぞれの栄養素の質と量なども重要な役割を果たす可能性があるという。
「BDNF」を増やす発芽玄米を発売
 研究グループは発芽玄米について、人での有効性が確認されたわけではないとしながらも、「発芽玄米の継続摂取により脳内物質BDNFの産生が増強されることを確認した」としている。

 「従来の発芽玄米の品質は決して一定ではなく、発芽玄米であれば身体によいとは一概にはいえず、比較した従来の発芽玄米群のうち、一部の製品では、脳内のBDNFを減少させ、記憶力を低下させる、というマイナス効果が示された。今後は、脳内BDNF量の増減に関連する機能性の、人での検証が求められる」としている。

 研究は、国立循環器病研究センター研究所分子病態部の柳本広二疾患分子研究室長の研究グループと、SBIホールディングスとの共同研究によるもの。

 なお、この発芽玄米は、商品名「発芽玄米の底力」として、SBIグループのSBIアラプロモから発売されている。同センターとの共同研究で開発されたものだ。

 玄米には食物繊維が豊富に含まれており、糖質の吸収をゆるやかにし、脂質やコレステロールなどの吸収を抑えることで動脈硬化を予防する効果も期待できる。玄米に含まれる「γ(ガンマ)-オリザノール」に、インスリンの分泌を促進し、血糖値を下げる効果があることも報告されている。

 さらに発芽玄米にはGABA、ビタミンE、マグネシウム、カリウム、カルシウムなども含まれる。糖尿病のある人にとって今後、気になる食品だ。

国立循環器病研究センター研究所分子病態部
独自の発芽技術で栄養ギュッと!「しっかり芽の出た『発芽玄米の底力』」新発売(SBIアラプロモ 2018年10月10日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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