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2018年10月04日

糖尿病の食事療法に「マインドフルネス」を応用 より満足できる食事

 「マインドフルネス」はストレス管理に役立つメンタルトレーニングとして米国で普及している。「マインドフルネス」を糖尿病の食事療法に役立てようという研究も始められている。
食べたいものを、満足感を得やすいように食べる
 食事療法を成功させるコツは、「本当に食べたい食物を、満足感を得やすいように食べる」ことだ。米国のミズーリ大学の臨床心理学者は、食べる行為に意識を向ける「マインドフル食事法」を提唱している。より満足のできる食事ができるようになるという。

 「マインドフルネス」は、日本の禅などの考え方や瞑想をベースにしたメンタルトレーニングとして米国で発達した。「マインドフルネス」を日本語に訳すと「気付くこと」「意識すること」という意味になる。

 「マインドフルネス」を簡潔にあらわすと「今、ここで起きていることを、ありのまま感じて、受け止めること」。自分の体や心の状態を意識することで、ストレスを受ける場面に遭っても、否定的な感情にとらわれることなく、平静を保てるようになるという。

 「たとえば、食事の時もスマホを見ながらかきこむのではなく、じっくり歯ごたえ、味、香りを味わうことが大切です」と、ミズーリ大学のトータル リワード プログラムの臨床心理学者のリン ロッシー氏は言う。
「マインドフルネス」食事療法 3つのポイント
 ロッシー氏によると、「マインドフルネス」の食事療法を実践するためのポイントは次の3点だ。

● マインドフル食事法の3つのステップ

(1)食事をするときに、まず深呼吸をして、自分の空腹感に注意を向ける。自分がどれだけ空腹感であるか、体の内側から発する声に耳を傾ける。

(2)食事ではよく味わいながら、食品の味や匂い、色にまで注意し、ゆっくりと食べる。栄養が自分の体に吸収されるのを実感する。食物を飲み込んだ後で、一呼吸おいて食べていることを実感する。

(3)食事が半分ほど済んだあたりで、満腹感を得られているか、惰性で食べ続けていないかをチェックする。満腹感を得られているのなら、食事を残しても良い。次に空腹を感じたときに、また食べれば良い。

 「食べたいものを欲しいだけ、食べても良いのです。ただし、食べるという行為に対し注意深くあらねばなりません。自分が本当に空腹なのか、空腹を満たすために何をどれだけ食べればよいのか、注意を向けてみましょう」と、ロッシー氏は言う。

関連情報
「マインドフルネス」を糖尿病の食事療法に役立てる
 「マインドフルネス」は糖尿病の食事療法にも役立てられるメンタル面での技術だと考えられている。

 米国のブラウン大学は「マインドフルネス」を実行している人は、血糖値が正常域にコントロールしやすいという調査結果を発表した。

 研究チームは、年齢の中央値が47歳の男女399人を対象に調査を実施。「マインドフルネス注意認識スケール」(MAAS)と呼ばれる「マインドフルネス」の程度を把握するための指標を使い、どの程度実践しているかを調べた。

 その結果、MAASのスコアが高く「マインドフルネス」の実践度の高いグループでは、そうでないグループに比べ、血糖値を正常域にコントロールできている割合が35%高く、空腹時血糖値を100mg/dL以下に保っている人が多いことが判明した。
「マインドフルネス」が幸福感に影響?
 一般に収入の高い人の幸福感が高い傾向にあるが、「マインドフルネス」という心理的な傾向の高い人は、収入の多い少ないに関わらず、高い幸福感を感じていることが大規模な調査で明らかになった。

 研究は、幸福にいたる多様な道筋があることを示唆しており、ワークライフバランスや過労の問題など、働く人の多くが直面する問題へのより良い解決の糸口になる可能性がある。

 経済力と幸せの関連について、「収入の多い人の方が幸福感が高い」という傾向があることが多くの研究で示されているが、その関連の強さをしめす相関係数は0.10から0.20程度であまり強くない。

 広島大学の研究グループは、収入と幸福感の関連があまり強くないことに注目し、収入が幸福感に影響する人と、しない人(収入が多くても少なくても幸せを感じられる人)がいるのではないかと考え調査を行った。

 自分よりも収入の多い人や社会的に成功している人と比べて、ついひけめを感じたりすることは誰にでもあるが、「マインドフルネス」の高い人は、一時の思いに振り回されずに、自分は自分、他人は他人として各々かけがえのない大切な存在であると感じて平穏な気持ちを保つことができるという。

 研究は、広島大学大学院総合科学研究科の杉浦義典氏や日本学術振興会の杉浦知子氏らの研究グループによるもので、医学誌「Frontiers in Psychology」に発表された。
「マインドフルネス」の2種類の特徴
 研究グループは今回の研究で、20〜60歳の社会人734人を対象に、年収、幸福感、「マインドフルネス」についての質問を含んだウェブ調査を行い、年収についての回答が得られた734名を対象に分析を実施。

 「マインドフルネス」傾向の高い人と低い人の違いを分析したところ、低い人では「収入の多い人の方が幸福感が高い」という従来通りの結果であったのに対し、高い人では「収入と関係なく幸福感が高い」ことが判明した。

 「マインドフルネス」はいくつかの側面があるが、今回は2種類の特徴があることが分かった。ひとつめは「自分の体験を批判的に見ないこと」(図1)、もうひとつは「自分の体験を言葉で表現するのが得意なこと」(図2)だった。

 収入と幸福感の関連の強さを相関係数であらわすと、図1は0.22、図2は0.12になり、これまでの研究で報告された数値とほぼ同程度になった。

 「マインドフルネス」の高い人を示す赤い点線はほぼ水平で、「マインドフルネス」の高い人を示す黒い直線よりも高く、幸福感が強いことが示された。

人は望まなくてもさまざまなことが頭に浮かぶ
 人は起きている時間の約半分は目の前のことと関係ないことを考えているというバーバード大学による研究結果がある。人は望まなくてもさまざまなことが勝手に頭に浮かぶものだ。

 たとえば「病気のある人は良い人生はおくれない」という考えが浮かんだとする。そのときに、その考えを真に受けてしまうと「私の病気のせいで幸せになれない」と落ち込んでしまい、幸福は損なわれる。

 しかし、同じ考えが浮かんでも、それは単なる雑音のようなもので、真に受ける必要も否定する必要もないと思えれば、幸福は損なわれない。また、自分の体験を批判的にみない人は、他人との優劣にこだわらずに自分を大切にできることも分かっている。

 「自分にひけめを感じたりしなれば、人は安定した気持ちで過ごすことができて、幸福感も高くなるでしょう」と、研究グループは述べている。
「マインドフルネス」は呼吸法で高められる
 さらに、自分の体験を言葉で表現するのが得意な人は、一瞬一瞬の体験を丁寧に見つめている。例えばお菓子を食べる時、他のことを考えながら口にほうり込むのと、じっくりかみしめ味わうのとでは、感じ取ることのできるおいしさや充実感は違うと考えられる。

 「同じことをしていても、自分の体験を丁寧に見つめたほうが、そこから得られる幸せが多いのです。日々の生活の中で幸せを感じた出来事を記録することで、幸福感を向上させるウェルビーイング療法という方法もあります」と、研究グループは指摘する。

 「マインドフルネスは、自分の呼吸にゆっくりと注意を向ける、といったトレーニングによって高めることも可能です。ライフスタイルとマインドフルネスのトレーニングを組み合わせて、幸福に至るための道筋をみつけられることが期待されます」と、研究グループはまとめている。

Mindfulness Key to Eating What You Want While Preventing Overeating(ミズーリ大学 2016年7月18日)
BASICS of Mindful Eating(Mindfulness Practice Center)
Everyday mindfulness linked to healthy glucose levels(ブラウン大学 2016年2月23日)
広島大学大学院総合科学研究科
Mindfulness as a Moderator in The Relation Between Income and Psychological Well-Being(Frontiers in Psychology 2018年8月13日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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