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2017年08月24日
糖尿病の最新全国ランキング ワーストは青森県 ベストは愛知県
人口10万人に対する糖尿病による死亡率が全国でもっとも高いのは青森県、もっとも低いのは愛知県であることが、厚生労働省の調査で明らかになった。
青森県は3年連続で全国ワースト
厚生労働省「2016年人口動態統計月報年報」によると、人口10万人に対する糖尿病による死亡率は、都道府県別にみると青森県が17.0人で、全国平均の10.8人を大きく上回り、3年連続で全国ワースト1位だった。ワースト2位は秋田県の16.3人、3位は福島県の16.3人だった。
昨年の調査で5位以内に入った香川県は前年の16.1人から14.1人に下がり、徳島県は14.9人から14.2人に下がった。全国平均を上回っているものの減少傾向がみられる。
青森県がん・生活習慣病対策課によると、県内の糖尿病患者は重症化してから糖尿病の改善に取り組む人が多く、健康寿命を延ばす上での課題となっているという。
糖尿病死亡率がもっとも低かったのは、愛知県の7.7人で、全国平均を大きく下回り、ワーストの青森県の半分以下にとどまっている。2位は神奈川県(7.8人)、滋賀県(8.0人)と続き、昨年とほぼ同じ順位だった。
糖尿病死亡率がもっとも低い愛知県では、早い時期から糖尿病診療の地域連携の仕組みをつくり、早期発見・治療するための対策を重ねていることが成果に結びついた。
青森県 糖尿病が進行してから治療を開始する患者が多い
青森県では、糖尿病により引き起こされることの多い脳卒中や心筋梗塞による死亡が多い。食塩摂取量が多い、多量飲酒者が多い、喫煙率が高いといった気質や文化や、雪国ゆえの運動不足からの肥満や、健診受診率の低さなども影響しているとみられる。
糖尿病の病状が進行すると、失明や人工透析といった合併症も引き起こされ、患者のQOL(生活の質)の著しい低下や、医療経済への大きな負担が生じる。合併症を防ぐために必要なのは、糖尿病を早期発見し、適切な治療を継続することだ。
青森県が2006年度に行った糖尿病調査の結果からは、▽青森県は全国と比べて糖尿病の病状の進行したケースが多い、▽病状が重篤化してから生活習慣を改善したり、情報を収集している患者が多い、▽3大合併症(網膜症、腎症、神経障害)を発症している患者の割合が全国と比べて高い――といった実態が浮かび上がった。
また、青森県保険医協会が実施した受診実態調査では、「医療費が支払えない」といった経済的理由で糖尿病や高血圧の治療を中断する患者がいる医療機関が、県内で約41%に上ることが示された。
金銭面を理由に糖尿病治療を中断する患者が多いほか、「受診回数を減らしたいと言われた」「薬が切れているはずなのに受診しない」といった事例も70%を超えているという。県保険医協会は「医療費負担を下げる糖尿病の治療を考えなければ、死亡率を下げるのは難しい」と述べている。
愛知県 糖尿病リスクの高い人を早期発見する体制づくりが進んでいる
愛知県では、糖尿病のリスクの高い人を早期発見し適切な保健指導ができる体制づくりを進めるために、「あいち健康の森健康科学総合センター」(あいち健康プラザ)が中心となり、糖尿病指導者の養成にいち早く乗り出した。
県内を4つのブロックに分け、その各ブロックから1保健所を選定。保健所の医師、保健師、栄養士などと市町村の保健師・栄養士など、企業の労働安全に携わる関係者に対して指導者養成を積極的に進めてきた。
地域の実情に合わせて、職域と医療機関との連携を強化し、糖尿病予備群や初期の糖尿病患者へ糖尿病専門医や栄養士、保健師などによる継続的な指導を行う「糖尿病管理・指導事業」を手がけた。
糖尿病予防の環境整備という観点から、「外食栄養成分表示店」事業も保健所の事業として1999年度から実施。管内のレストランや飲食店、喫茶店や事業所の食堂などのメニューにエネルギーや塩分、脂肪などの栄養成分表示をするという事業で、飲食店経営者や一般の消費者を対象とした講習会も積極的に実施した。
愛知県が糖尿病対策で力を入れているのは、▽健康診査の受診率を上げ糖尿病を早期発見する、▽糖尿病の怖さを県民に広く認知してもらう、▽食事を改善してもらう、▽体を動かすことの大切さを認知してもらう、▽あいち健康プラザを活用しもらう(さまざまな健康教室を開催)――といったことだ。
ライフステージに応じた健康づくりを推進し、糖尿病の危険因子をもつ人の減少をはかり、糖尿病のリスクの高い人を早期発見し、適切な保健指導を提供するというサイクルを繰り返し実施している。
「地域の糖尿病に対する理解も向上し、糖尿病チーム医療も確立してきた。地域の努力で、糖尿病患者への適切な医療と保健指導を提供できるようになっている」と、県の保健政策担当者は話す。
糖尿病は心疾患、脳卒中、がんの発症リスクを高める
「2016年人口動態統計月報年報」によると、死亡数の死因順位の上位に挙げられているのは、どれも糖尿病と関連の深い疾患だ。
死亡数の死因順位は、(1)悪性新生物(がん) 37万2,801人(人口10万対の死亡率は 298.2)、(2)心疾患 19万7,807人(同 158.2)、(3)肺炎 11万9,206(同95.3)、(4)脳血管疾患 10万9,233人(同 87.4)、(5)老衰 9万2,759人(同 74.2)となっている。
第1位のがんは、2015年の全死亡者に占める割合が28.5%となっており、およそ3.5人に1人が「がんで死亡」している状況だ。がんは1981年以降に死因順位の第1位になってから、一貫して増加している。
第2位の心疾患は、1985年に脳血管疾患にかわり第2位となり、その後も死亡数・死亡率ともに増加しており、2016年は全死亡者に占める割合は15.1%となった。
第4位の脳血管疾患は、1970年をピークに減少しはじめ、1985年には心疾患にかわって第3位、2011年には肺炎にかわり第4位となり、2015年の全死亡者に占める割合は8.4%まで低下した。
糖尿病が原因の死亡数は1万3,454人と多くないが、実際には糖尿病(高血糖)や高血圧が悪影響をもたらし、心疾患や脳血管疾患に進展するケースが多い。最近の研究では、糖尿病はがんの発症リスクを上げることも明らかになっている。
糖尿病の治療の目的は、糖尿病合併症である網膜症、腎症、神経障害、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患を防ぎ、健康な人と変わらない寿命と、日常生活の質(QOL)を維持することだ。実現するために地域ぐるみの対策が必要されている。
あいち健康の森健康科学総合センター
糖尿病性腎症重症化予防プログラムの開発のための研究
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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