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2017年05月23日
「減塩」は健康的な食事に必須 高血圧だけでない「塩」の恐さ
食塩の過剰な摂取は、高血圧の原因となる。食塩を摂り過ぎると、夜間頻尿が引き起こされたり、食欲が過度に増進するなど、さまざまな悪影響が出てくることが判明した。
食事を健康的にコントロールするために、減塩が欠かせないことが明らかになっている。
食事を健康的にコントロールするために、減塩が欠かせないことが明らかになっている。
食塩の過剰摂取は高血圧の原因に
食塩の過剰な摂取は、高血圧の原因となる。食塩の摂取量が少ない地域では高血圧を発症する人が少なく、加齢に伴う血圧の上昇もみられないことが知られる。
「夜にトイレが近い」人は塩分の摂り過ぎが原因
夜にトイレに行くために何度も目が覚めてしまう「夜間頻尿」。睡眠が中断され慢性的な睡眠不足となり、ストレスや体調不良が引き起こされるおそれがある。
夜間頻尿に悩まされている人は、塩分の摂取量を減らすと良いかもしれない。夜間頻尿の原因のひとつは塩分の摂り過ぎだという研究が発表された。塩分の摂取量を減らすと、夜間頻尿は改善することも明らかになった。
これまでは糖尿病の人が高血糖の状態が続いたり、水分を摂り過ぎていると、夜間頻尿になりやすいと考えられていたが、塩分の摂り過ぎも関わっていることがはじめて解明された。
研究は、長崎大学病院 泌尿器科・腎移植外科の松尾朋博氏らによるもので、3月にロンドンで開かれた欧州泌尿器科学会年次集会で報告された。
減塩すると1晩の排尿回数が減少
研究には、睡眠障害のある日本人の成人男女321人が参加。参加者は12週間にわたり塩分摂取を減らすための食事指導を受け、200人超が塩分摂取量を平均11g/日から8g/日に減少した。
減塩した結果、1晩の排尿回数は平均2.3回から1.4回に減少し、生活の質(QOL)が向上した。
一方、100人近い参加者では塩分摂取量が平均9.6g/日から11g/日へと増加しており、1晩の排尿回数も平均2.3回から2.7回へと増加した。
「今回の研究は、塩分摂取量が夜間の排尿回数にどのくらい影響するかを調べたはじめてのものです。夜間頻尿は特に高齢の患者にとって切実な問題ですが、今回の結果は、食事を改善するだけでQOLを大きく改善できる可能性が示されました」と、松尾氏は言う。
塩分を摂り過ぎると食欲が増進する
塩分を摂り過ぎるとたくさん食べたくなる
この結果は研究チームを悩ませたが、マウスを使った実験結果から、理解の糸口がみつかった。
研究チームは高塩分食が筋肉のタンパク質の分解を促すことを突き止めた。このタンパク質は肝臓で尿素に変換され、尿素は腎臓での水分再吸収を促進して、塩分排泄に伴う水分損失を防止していた。
このように塩分排泄に直面した時に水分を保持するために、体は筋肉を分解してエネルギーを作り出す。これには多くのエネルギーが必要になる。
「失われるエネルギーの代わりになるのは、より多くのエネルギーを補給すること、つまりたくさん食べることです。これが、高塩分を食事を摂ると、空腹感が増し、過食を引き起こす原因になります」と、研究者は説明している。
日本は減塩後進国 減塩の意識のある人を増やす戦略が必要
これまで見たように、食事を健康的にコントロールするために、減塩が欠かせないことは明白だ。
しかし、日本は世界的に見て摂取量が多い「減塩後進国」。その原因は、調味料をはじめとする加工食品などから多くの塩分を摂取していることだ。
減塩商品の開発を手がける食品メーカーは増えているが、一般には十分に普及しておらず、消費者の嗜好も減塩食には向いていない。
一方、英国では、国が旗振り役となって食品業界に対し商品の塩分削減の自主目標を設定させることに成功。2005年からの3年間で塩分摂取量を10%削減した。
日本高血圧学会は、「日本の減塩対策はまだ不十分。減塩の意識のある人を増やし、国民全体の塩分摂取量を減らす戦略が必要です。そのために医療従事者だけでなく、さまざまな立場の人々が協力・連携して活動することが重要です」と強調している。
毎月17日は「減塩の日」 日本高血圧学会
日本高血圧学会は、毎月17日を「減塩の日」と定め、幅広い分野で減塩の啓発を広げる活動をしている。
食品の栄養成分表示の「ナトリウム量」の表示を「食塩相当量」の表示とするよう働きかけてきたのが功を奏し、食品表示基準が制定され、食品の栄養成分表示は2020年までには、原則として「食塩相当量」で表示されることになった。
また、減塩をしようとしている人が役立てられるよう、減塩食品のリストを作成している。このほど日本高血圧学会減塩委員会が主催し、高血圧の患者や減塩に取り組む消費者の参考になる市販食品を認定する「JSH減塩食品アワード」を発表。
「最近の減塩食品には通常品と判別がつかないような品質レベルのものが出ており、今までと変わらぬ使い方でおいしく減塩でき、ストレスなく長期にわたり使えます」とコメントしている。
減塩キャンペーン動画
日本循環器学会が日本高血圧学会の協力のもと作成した動画。
さあ、減塩! 減塩委員会から一般のみなさまへ(日本高血圧学会)日本循環器学会が日本高血圧学会の協力のもと作成した動画。
食塩含有量の少ない食品の紹介(日本高血圧学会減塩委員会)
Night-time urination reduced by cutting salt in diet(欧州泌尿器科学会 2017年3月24日)
Vanderbilt-led study shows high-salt diet decreases thirst, increases hunger(ヴァンダービルト大学 2017年4月18日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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