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2017年04月14日
新規インスリンの開発へ前進 「セレノインスリン」合成に成功

東北大学などの研究チームは、天然のインスリンのアミノ酸の結合を置き換えることで、新たなインスリン「セレノインスリン」の合成に成功したと発表した。
体内での効果が長時間持続する新しいタイプの持効型インスリン製剤の開発につながる成果だ。
体内での効果が長時間持続する新しいタイプの持効型インスリン製剤の開発につながる成果だ。
新しいタイプの持効型インスリン製剤を開発
東北大学などの研究チームは、ウシ膵臓由来の天然のインスリンに含まれるジスルフィド結合のひとつをジセレニド結合に置換した新しいインスリン「セレノインスリン」の合成に成功したと発表した。
インスリン製剤は命をつなぐ薬剤である一方、高い頻度で皮下注射を行うことによる肉体的・精神的な負担は大きい。こうした患者の負担をできるだけ軽減するために、長時間にわたり体内で循環・作用し、インスリンの基礎分泌を補助する持効型インスリン製剤の開発は大きな課題のひとつとなっている。
インスリン製剤には大きく分けて、食後の急激な血糖上昇を制御するための即効型インスリンとインスリン基礎分泌を補う持効型インスリンの2種類がある。
従来の持効型インスリンは、皮下で不溶解性沈殿を形成させることで、ゆっくりと血中に吸収させる方法や、皮下や血中のアルブミンに吸着させることで、皮下から血中への吸収だけでなく血中から組織への分泌を遅延させるなどの工夫がされている。
新たに開発された「セレノインスリン」は、これまでにない新しいタイプの持効型インスリンになる可能性がある。
この研究は、東海大学理学部化学科の荒井堅太講師および岩岡道夫教授、東北大学学際科学フロンティア研究所(多元物質科学研究所兼任)の奥村正樹助教、多元物質科学研究所の渡部聡氏および同研究所(生命科学研究科および理学研究科化学専攻兼任)の稲葉謙次教授、大阪大学蛋白質研究所の北條裕信教授らの共同研究チームによるもの。研究成果は、ドイツの国際化学誌「Angewandte Chemie International Edition」オンライン版に発表された。
分解酵素に対する高い耐性をもつ「セレノインスリン」の合成に成功

「セレノインスリン」は天然インスリンと同等の生理活性をもつ

Preparation of Selenoinsulin as a Long-Lasting Insulin Analogue(Angewandte Chemie International Edition 2017年4月10日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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