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2015年06月17日
欧米型の食事スタイルが男性の前立腺がんリスクを上昇させる

前立腺がんはゆっくり進行することが多いので、早期発見し、適切に治療できれば完治も可能だ。最近は、前立腺がんの腫瘍マーカーをみるPSA(前立腺特異抗原)検査により、早期発見が可能になっている。
ハーバード公衆衛生大学院の研究チームによる今回の研究は、医療従事者を対象とした大規模調査「Physicians' Health Study」に参加した40~84歳の男性を対象に行われた。
前立腺がんと診断された男性926人を対象に、がんの治療状況の調査と、食事内容に関するアンケートを14年間継続して行った。
参加者を、加工肉や赤身肉、脂肪分の多い乳製品、糖分、精製された穀類などの加工食品を多く食べる「欧米型の食事スタイル」と、「より健康的な食事スタイル」を続けている人に四分位で分けて比較した。
「より健康的な食事スタイル」とは、▽野菜や果物を多く食べる、▽魚を食べる、▽赤身肉や加工肉を避ける、▽精製されていない小麦粉や玄米などの全粒穀類を食べる、▽魚やオリーブオイルなどに含まれる不飽和脂肪酸を摂取する、▽豆類や大豆類を食べる――といったものだった。
追跡期間中に333人が死亡し、うち17%(56人)が前立腺がんが原因だった。高齢で発症した男性で死亡率が高かった。
解析した結果、欧米型の食事スタイルが中心だった男性は、前立腺がんで死亡する確率が2.5倍、全体的な死亡リスクも67%上昇することが判明した。
一方、「より健康的な食事スタイル」をもつ男性は死亡リスクが36%低下することが明らかになった。
がん生存率が高い人に共通する条件は、「動物性脂肪の摂取量が少ない」「アルコールの摂取量が少ない」「たばこを吸わない」ということだった。また、「カルシウムとビタミンDを十分にとっている」という傾向がみられた。
「今回の研究の参加者の多くは医師で、健康的な生活スタイルをもつ人が多かった。米国では欧米式の食事スタイルが一般的なので、今回の調査結果がより多くの人にあてはまるかは今後の研究で確かめる必要があります」と、論文著者のメン ヤン氏は言う。
「しかし、健康な食事スタイルは、がんだけでなく、高血圧、糖尿病、心臓病、脳卒中の予防・改善にも効果的であることが過去の研究でも確かめられています。食事を改善することは全ての人に勧められます」と、ヤン氏は指摘している。

研究チームは、カテキンに含まれる抗酸化作用や抗がん効果の高い成分「エピガロカテキンガレート」(EGCG)を抽出。49人の被験者に1年間、毎日200mgの緑茶カプセルを2錠服用してもらった。一方、他の48人の男性には、同量の偽薬(プラセボ)を服用してもらった。
すべての被験者が、前立腺がんの前段階である悪性度の高い前立腺上皮内腫瘍(HGPIN)、または前立腺がんを疑う小病巣(ASAP)が認められていたが、カテキンを配合した緑茶カプセルを服用した被験者では、ASAPに進行したり、前立腺がんと診断されたりする割合が少なかったという。また、前立腺がんの腫瘍マーカーとしても用いられるPSA検査の値も低かった。
Western diet may increase risk of death after prostate cancer diagnosis(ハーバード公衆衛生大学院 2015年6月1日)
Dietary Patterns after Prostate Cancer Diagnosis in Relation to Disease-Specific and Total Mortality(Cancer Prevention Research 2015年6月)
Component in Green Tea May Help Reduce Prostate Cancer in Men at High Risk, Moffitt Cancer Center Researchers Say(モフィットがんセンター 2015年5月27日)
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