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2013年11月26日
呼気中のアセトンで糖尿病を管理 血糖測定に代わる技術を開発
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- 医療の進歩 血糖自己測定(SMBG)

11月に米テキサス州サンアントニオで開催された米国薬学会(AAPS)の年次学術集会で、開発した測定機器についての発表が行われた。実用化に向けてさらなる検証を進め、機器の小型化にも取り組むとしている。
糖尿病の治療では、指先を微小な針で指す穿刺器を使った自己血糖測定(SMBG)が一般的に行われている。
血糖自己測定器が初めて治療に使われるようになったのは1970年代のことで、当時は0.1mLの血液を採取する必要があった。測定器本体も弁当箱ぐらいのサイズがあり、血糖値を表示するまでに20分かかった。
現在は、採血量は0.6〜1μL(1μLは1mLの1000分の1)にまで減り、5〜10秒で血糖値を表示する機種も出ている。測定器のサイズも手の平に収まるぐらいに小さくなった。
プリィファー教授らが今回発表したのは、血糖ではなく、呼気中(吐く息)に混ざる微小なアセトンを測定し、その相関から血糖値を予測するというものだ。
アセトンはケトン体の一種で、体内で脂肪がエネルギー源として使われたときにできる物質。糖尿病でインスリンの分泌が低下し、血糖コントロールが良好でないと、この物質が発生しやすくなる。アセトンは揮発性なので、糖尿病で体内のアセトンが多いと呼気中に混ざる。
呼気分析器には、多層のポリマーで構成されるナノサイズの薄さのフィルムが収められており、息に含まれるアセトンに対し科学反応を起こし、アセトン値を表示する。得られた測定値は血糖値と相関があり、アセトン値が高いと血糖値も高いことが分かる。
プリィファー教授らは、呼気に含まれるアセトンを選択的に分析し、湿度の影響を受けないようにする技術を開発するのに成功した。測定器は書籍程度のサイズだが、今後はアルコール検知器程度の携帯可能なサイズに改良する予定だという。
「呼気測定器は血糖自己測定を補うものになるものと期待しています。血糖自己測定器は高度なものが治療に使われていますが、指から採血するのを苦痛に感じる患者さんは少なくありません。指を穿刺する必要がなくなることは、患者さんにとってもメリットがあります」と、プリィファー教授は述べている。
米ベイステート医療センターのチェルシー ゴードナー氏は、今回の発表に期待を寄せて、いる。ゴードナー氏は、小児と成人の糖尿病患者の診療を担当している。
「血糖自己測定器は進歩しており、穿刺の痛みは減っていますが、例えば小児患者さんの中には1日に10〜12回の血糖測定を必要とする場合があります。そうした患者さんは、両手の指をすべて使い果たしています。成人にとって耐えられる穿刺であっても、幼い子供にとっては我慢できない苦痛となることがあります」と、ゴードナー氏は述べている。
血糖自己測定にともなう穿刺が面倒という理由で、血糖自己測定を行わない患者もいるという。「良好な血糖コントロールを得るために、血糖測定は大変に有用です。呼気測定であれば簡単に行えるので、煩雑な操作をできない患者でも、コンプライアンス(遵守)の向上を期待できます」(ゴードナー氏)。
Breathalyzer technology detects acetone levels to monitor blood glucose in diabetics(米国薬学会 2013年11月13日)
関連情報
私の糖尿病50年-血糖簡易測定器が作られた(糖尿病NET)
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