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2013年11月26日
ファストフードも健康的に 高まるヘルシー志向の波
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肥満増加の原因のひとつは、ファストフードが普及し、高カロリーの食事が普及したことだ。ファストフードを1回利用しただけで、1日の適正なカロリー摂取量の半分以上をとってしまうことも珍しくない。
「一般的に、ファストフードは手頃な価格で利用でき、味も良く、手軽に利用できるというイメージがもたれています。しかし、容易にカロリーをとりすぎてしまい、そのことに無自覚になりやすいという欠点があります」と、ニューヨーク大学医学部のブライアン エルベル氏(公衆衛生・保健政策)は説明する。
ファストフードではハンバーガーなどの商品を単品で購入すると、カロリーは200~500kcal程度だが、複数の商品とフライドポテトやコーラなどを組み合わせたセットメニューを買うと、総カロリーは簡単に800~1000kcalにまで増える。
米国のファストフードをめぐる大きな潮流として挙げられるのは、メニューのカロリー表示と、それに伴う低カロリーメニューの拡充だ。米国では医療制度改革の一環として、2010年に20店舗以上をもつレストランチェーンではメニューのカロリー表示が義務付けられるようになった。米国食品医薬品局(FDA)は現在、具体的なカロリー表示の方法について調整している。
しかし、ファストフード店でメニューに付いているカロリー表示を利用する客は、10%しかいないという調査結果も発表されている。
「メニューにカロリーや栄養成分の表示を付けることで、利用者はより低カロリーで健康的なメニューを選べるようになります。しかし、実際にはカロリーを確認する人は少数であることが判明しました」(エルベル氏)。
研究チームは、ファストフード店を利用した18~64歳のフィラデルフィア市の住民約2,000人を対象に、2010年の2月に調査を行った。市内のファストフード店を利用した一般客を対象に聞き取り調査を行い、「メニューを選ぶときにカロリー表示を参考にしましたか」等の質問をした。
実際に購入客が注文したメニューをレシートで調べ、カロリー表示を見ることで、カロリー摂取量にどれだけの変化があったかを調査した。
ファストフード店の1回の利用で、カロリー表示を見なかった客が注文したメニューの摂取カロリーの平均は714kcalだったが、カロリー表示を見て、それを参考にして注文したという客では、摂取カロリーは465~509kcalに減っていた。
一方で、メニューにカロリー表示があることに気が付いた人は全体の約40%で、それを利用して食事のカロリーを抑えようとした人は約10%しかいないことも判明した。
「今後は、カロリー表示の有効な活用を促すプロモーションが必要です。多くの人は、自分の適正な1日のカロリー摂取量も把握できていないのが現状です」と、エルベル氏は述べている。

大手のファストフード・チェーンは、子供向けのセットメニューに、リンゴのスライスと少量のフライドポテトを追加した。これは全体の売上げの約10%を占める人気メニューとなっている。
別のファストフードでは、脂肪とコレステロールを減らした調理油を使ったハンバーガーやポテトフライをメニューに加え、ヘルシーな食事メニューの提案をしている。
「ファストフードを売る食品企業も対策していますが、不健康な食品はまだ多く売られています。そうした商品も、工夫次第で栄養価を上げることはできるはずです」と、英グラスゴー大学医学部のマイク リーン教授(栄養学)は話す。
リーン教授らは、ファストフード・チェーン向けに、健康的なピザを開発した。開発に先立ち、マルゲリータピザ25点の栄養評価を行った。
「もともと伝統的なピザは、低脂肪で野菜を多く利用しており、健康的なものでした。今日、ファストフードとして売られているピザの多くは、高脂肪・高塩分です。含まれるビタミンやミネラルも少なく、毎日食べる食事としては勧められるものは少ないことが判明しました」と、リーン教授は話す。
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