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2013年07月30日

経口インスリン実現に向け前進 ナノサイズのバイオ素材を開発

 毎日のインスリン注射を不要とする経口インスリン製剤の実用化が現実味を帯びたものとなっている。米国の研究者が、経口で投与したインスリンを吸収しやすくする新しい素材の開発に成功した。
インスリンを包むナノ粒子を開発 吸収率を向上
 インスリンはペプチドホルモンなので、胃で消化されやすく、消化管から血液中に吸収されにくい。そのため、インスリンの経口投与は難しく、現在のところは注射によって治療を行う必要がある。

 インスリン製剤や注射器具は改良が重ねられ、インスリン注射をとりまく環境は大きく改善されている。ほとんど痛みを感じない注射針も治療に使われている。しかし、患者によってはインスリン自己注射を苦痛と感じる人もいる。そのため糖尿病の医療では、飲み薬として経口投与できるインスリンの開発が大きな目標となっている。

 インスリンを経口投与する方法として考えられているのは、インスリンを小さな球の中に入れる方法だ。そのサイズは、直径が約500ナノメートル(1ナノメートルは100万分の1ミリ)。赤血球の直径が約10ナノメートルなので、非常に小さい粒子であることが分かる。

 米ブラウン大学のエディス マシオウィッツ教授(医療サイエンス)ら研究チームは、製剤をタンパク質で作ったナノサイズの微小な粒子で包むことにより、途中で吸収・分解されることなく、腸に届ける方法を開発した。

 経口インスリンの開発における最初の難関は、胃の酸に強い構造を作り出すことだ。マシオウィッツ教授らは、「PBMAD」と呼ばれる化学物質を使い、胃を通過によって受ける酸や酵素の攻撃に耐えられるようにした。

 第2の関門は、腸に届けられたインスリンを効率良く吸収させることだ。腸の内側はなめらかな粘膜に覆われ、粘膜は粘液を出して老廃物をすべりやすくしている。毒素や異物を取り込まないための働きだが、腸まで届けらたインスリンも排泄されやすくなっている。

 研究チームは薬剤に新素材を使うことで、この問題にも対策した。インスリンを包むPBMADには「バイオ粘着(bioadhesive)」という性質もあり、腸に到達すると粘膜上皮層に付着し、インスリンの吸収を促す仕組みになっている。

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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