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糖尿病3分間ラーニング
胆汁酸の排出で糖尿病が改善 コンニャクにも予防効果
2012年09月06日
カテゴリー:2012年  医療の進歩 食事療法 

 肝臓から腸に分泌される「胆汁酸」の体外排出を促す「胆汁酸吸着レジン」が、肥満や2型糖尿病などを改善するメカニズムを、慶應義塾大学大学院の渡辺光博教授とスイスのローザンヌ工科大学の研究チームが解明した。日本古来の食物繊維を多く含むコンニャクやモズクなどにも胆汁酸吸着作用があることから、「これらを食事に取り入れると、メタボリックシンドロームの予防効果があると考えられる」という。
胆汁酸吸着物質の作用を解明 日本古来の食品に効果
 胆汁酸は食事により摂取した脂質が高濃度にある腸管で、腸管壁に脂質が吸着するのを防ぎ、同時に消化・吸収を助け、脂質を効率よくとりこむときに重要な役割を担っている。日本では、動物性の生薬である熊胆(熊の胆嚢)は1500年以上前から万能薬として用いられてきた。

 胆汁酸は消化薬としてだけではなく、食事と関わる全身のシグナル伝達分子としてホルモンのような働きをし、脂肪肝の抑制効果があることや、肥満・糖尿病治療の可能性につながるさまざまな働きをしていることがわかってきた。

 胆汁酸は長く腸内に残ると機能が低下し、新しい胆汁酸の合成も抑えられてしまう。このため、腸管内で古い胆汁酸をレジン(樹脂)に吸着させて、便と一緒に体外に排出させると、新たな胆汁酸の合成が促され、血中のコレステロール値が低下し、脂肪肝の抑制にもつながる。

 こうした効果をもつ繊維状の樹脂「胆汁酸吸着レジン」は2008年に米国で、インスリンの分泌減少などによって起きる2型糖尿病の治療薬として適応が追加された。一方で、詳しい作用のメカニズムはわかっていなかった。

 そこで渡辺教授らはマウスを使った実験で、新たに合成された胆汁酸は、褐色脂肪細胞や腸管上皮細胞の表面にあるタンパク質「TGR5」を活性化させることをあきらかにした。胆汁酸吸着レジンによって新しい胆汁酸の合成を促すと、エネルギー代謝が高まって脂肪燃焼や血糖値低下が進み、糖尿病も改善した。

 さらに腸管上皮細胞では、腸管より分泌されるインクレチンである「GLP-1」が分泌されて、膵臓のインスリン分泌につながることがわかった。インクレチンは、食後の血糖値上昇にともない腸上皮細胞から分泌されるホルモンの総称。なかでもGLP-1は、膵臓β細胞表面の受容体に結合して、インスリン分泌促進とグルカゴンの分泌抑制により血糖値降下作用を示すことから注目されている。

 胆汁酸吸着レジンは、もともとは高コレステロール血症の治療薬だが、今回の研究で血糖改善のメカニズムもあきらかにされた。慶応大ヘルスサイエンスラボの渡辺光博教授は「血管疾患発症のリスクを大幅に低減させる効果的な薬剤と考えられる。体内に吸収されないため重篤な副作用がない薬剤であり、糖尿病治療薬としての開発が期待される」と話している。

 高血糖と高コレステロール血症の両疾患に罹患すると脳梗塞、心筋梗塞など血管疾患のリスクが約5倍に増加する。これらの合併患者数は世界中で増加しており、大きな問題となっている。

 「日本古来の食品であるコンニャクやモズクなど、食物繊維が多い食材にも弱い胆汁酸吸着作用がある。これらを積極的に食事に取り入れると、糖尿病やメタボリックシンドロームの予防・改善に役立つのではないか」としている。

 研究の関連論文は英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」と米科学誌「プロス・ワン(PLos ONE)」にそれぞれ発表された。

慶應義塾大学

[ Terahata ]
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