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2012年08月28日

仕事のストレスで女性の糖尿病リスクは2倍に

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糖尿病予備群
 仕事によるストレスのために糖尿病リスクは上昇し、その度合は男性よりも女性でより深刻であるとの研究が発表された。


社会的ストレスにさらされると女性の糖尿病が増える
 この研究は、カナダ・トロントの「仕事と医療の研究所」などの共同チームが、オンタリオ州在住の2型糖尿病の既往歴のない男性3691人と女性3752人を9年間にわたって追跡し調査したもの。

 期間中に男性の10.3%、女性の6.9%が糖尿病を発症した。仕事がうまくいっている人とそうでない人とを比べたところ、もっとも仕事がうまくいっていない女性では、糖尿病を発症した割合は2倍以上に増えていた。男性では有意差はみられなかった。

 「女性と男性では、職場のストレスに対する身体的・社会的な反応が異なる」と論文の主著者であるPeter Smith氏は指摘する。

 多くの女性が心理的・社会的なストレスにさらされている。研究者は、ストレスにさらされた女性の糖尿病リスクが高くなる原因は、ストレスに反応して神経系や免疫系機能がかく乱されるからだと説明している。

 自律神経には交感神経と副交感神経があり、これらのバランスと心身の状態は深く関係している。ストレスや緊張を感じている場合、交感神経の活動が強くなりすぎて、心身は疲弊してしまう。

 また、ストレスを感じた時にコルチゾールというホルモンが分泌される。コルチゾールには、代謝活動や免疫系を活性化させる役割があるが、過剰に分泌されると食欲を高め、食後の満腹感を感じづらくさせる。

 さらに、研究者は過度なストレスにされされた女性は生活スタイルが乱れがちになり、過食や拒食といった摂食障害や飲酒などが増え、体のエネルギー代謝に異常が起こりやすくなると説明している。

 糖尿病の発症にもっとも影響したのは肥満だったが、仕事のストレスによる影響は、喫煙や飲酒、運動不足などの生活習慣によるものを上回っていたという。

 カナダのオンタリオでは、糖尿病の有病率は1995年から2005年にかけてほぼ2倍に増加している。「仕事のストレスの影響は、男性よりも女性でより深刻であることが示された。糖尿病の増加を抑えるために、ストレスをかかえる女性に効果的な社会的支援を施す必要があるかもしれない」と研究者は話す。

ストレスを軽減する方法
 米国糖尿病学会(ADA)は、ストレスを軽減する方法として、次のことをアドバイスしている。
生活スタイルを変えてみる
 生活スタイルや、仕事や職場の環境を変えてみることで、ストレスが軽減される場合もあります。例えば、道路が渋滞しており目的地に辿り着けないというときは、思い切ってコースを変えれば、思いがけず早く到達できるということもあります。転職を含めて自分のできることを考えてみましょう。
上手にできている人のマネをする
 上手に血糖コントロールを続けている人は、独自に身に付けたコツをもっているものです。そうした人にとっては、あなたが困難に感じている事柄でも「じっくり取り組めば、解決できない障害ではない」と感じているかもしれません。うまくいっている人を模倣することが、良い結果を生み出すことも多いものです。
リラックスの仕方を学ぶ
 2型糖尿病の人では、ストレスに対して敏感になっている場合があります。筋弛緩法がストレス解消につながる場合もあるので、試してみましょう。手や腕などに力を入れて筋肉を収縮させ、一気に力を抜いて筋肉の緊張をゆるめる体操でリラックスできます。日常生活でのストレス・肩こりなどの解消や、精神的な不安からくる症状の軽減、運動時の技術の向上など、さまざまな効果も期待できます。
運動を習慣化する
 適度な運動は、血糖コントロールを改善する、血圧を下げるといった効果に加えて、筋肉の緊張をほぐし、心にもとても重要な役割を果たします。ウォーキングなどの運動に、いらだちや不安感などを消す効果があることは、科学的に確かめられています。また、運動習慣のある人はない人に比べて生活満足度が高いという報告もあり、適度な運動を習慣化することでストレス緩和とともに生活の質を高めることにもつながります。

Work environment may put women at risk of diabetes(仕事と医療の研究所)
糖尿病とともに生きる―ストレス(米国糖尿病学会)

関連情報
ストレス対策と心豊かな食事が体重増加を防ぐ(糖尿病NET)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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