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2012年08月03日
遺伝子研究に1万人が協力 山形分子疫学コホート研究
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「山形分子疫学コホート研究」は、文部科学省グローバルCOEプログラムの採択を受け、山形大学が2010年6月より開始した大規模なゲノムコホート研究。同大学は先端分子疫学研究所を立ち上げ、調査を進めてきた。
研究協力者数は6月に1万人を突破し、年度中には目標の1万5千人に達する見通しだ。わずか3年で1万人を超える協力者を集めた研究拠点は国内でもまれだ。日本のみならず世界的にも有数の研究フィールドを構築した研究拠点として注目されている。
「山形分子疫学コホート研究」は、糖尿病や脳卒中、がん、慢性閉塞性肺疾患などの生活習慣の環境要因と遺伝的要因がどのように病気の発症に関係するかを、遺伝子レベルであきらかにすることを目的としている。
研究では、地域の健診施設で40〜74歳の研究協力者を募り、同意者から血液やアンケートを収集、その後病気を発症したかどうか追跡調査する。一定の集団(コホート)の長期にわたる追跡調査により、病気と生活習慣、体質との関係をあきらかにし、将来的に個人の体質に合った予防や治療ができる「オーダーメード医療」の実現を目指す。
オーダーメイド医療の考え方は、個々で異なる治療効果や副作用などを予測しながら、個人差にかなった医療を行うこと。一般的には、治療効果の個人差を見極めるためには時間をかけて治療と効果を観察する必要があり、最適な治療計画を行うことは難しいとされる。
しかし、ヒトゲノム計画によるDNA配列の解読や、個々人で異なる一塩基多型(SNP)の特定など技術の発達により、オーダーメイド医療の実現は近づいている。
同大学は、過去29年にわたり取り組んでいる地域保健事業と本学の21世紀COEプログラムの活動を通して、すでに6,000名以上から精度の高い臨床データとDNAの提供を受け、「臨床データベース」と「遺伝子多型データベース」を構築している。舟形町の糖尿病検診や、寒河江市の脳卒中予防健診をもとにしたデータベースは有名だ。
研究は住民の移動が少ない山形県の地域住民を対象としている。遺伝的多様性が小さく、完璧な追跡調査が可能で、「分子疫学研究にもっとも理想的」だという。臨床疫学データの精度が高く、協力要請に対する同意率も75%と高い。
同プログラム拠点リーダーの嘉山孝正教授は「分子疫学的研究には地域住民との長年の信頼関係が重要だ。単にデータを集めるだけではなく、住民との間に信頼関係が築かれる拠点にしたい。10年、20年とかかる地道な調査だが、次世代の医学発展に直結する成果を生みたい」と話している。
山形大学グローバルCOEプログラム 分子疫学の国際教育研究ネットワークの構築
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