ニュース
2012年03月08日
糖尿病患者の脳卒中リスク 1年ごとに3%上昇
- キーワード
- 糖尿病合併症

糖尿病と診断されていた人のうち244人で脳卒中を発症し、登録時に糖尿病でなかった人に比べて2.5倍に上昇していた。また、新規に糖尿病と診断された症例を加えて、糖尿病と脳卒中が関連することが分かった。両者の罹病期間をふまえて計算したところ、いずれも1年間で3%ずつ虚血性脳卒中リスクが上昇していた。
さらに、糖尿病の罹病期間が長いほど、脳卒中のリスクが有意に上昇していることが分かった。糖尿病の罹病期間が5年未満の患者では70%、5〜10年の患者では80%、10年以上の患者では3倍に、それぞれ脳卒中のリスクが上昇していた。
「糖尿病が時間をかけて血管に障害をもたらす病気であることがあらためて示された。脳卒中の罹病率は全体としては低下している。しかし、脳卒中の原因となる糖尿病の発症が増えており、今後も油断はできない」とコロンビア大学医療センター(ニューヨーク市)のMitchell Elkind氏は話す。
虚血性脳卒中は、脳血管障害のひとつで、脳の血管が詰まりそこから先の細胞に血液が供給されなくなり起こる病気。糖尿病が脳卒中の危険因子として知られるが、罹病期間と発症との関連はよく分かっていなかった。
糖尿病を発症した時期と罹病期間によって、脳卒中の危険性は変わっていく。研究の開始時に糖尿病と診断された患者は、それ以前の4〜7年前に糖尿病を発症していた可能性がある。脳卒中を予防するめたに、糖尿病を早期発見し血糖コントロールを開始することが重要だ」とElkind氏は言う。
米国の糖尿病患者数は2,600万人で、半分以上は65歳より若い。糖尿病人口は2000〜50年の間で165%に膨れ上がると指摘されて降り、糖尿病の発症年齢が年々低下している。
「これまでは糖尿病は加齢にともない増えていく病気で、背景には不健康な生活習慣があると考えられていた。しかし、実際には肥満の増加に合わせて若い年代にも糖尿病は拡大していることがあきらかになった」とElkind氏は話す。
「糖尿病を発症する年齢が若くなるということは、糖尿病の罹病期間が長くなることを意味する。そうなると合併症を発症する危険性も高まる。糖尿病を早期発見し治療を開始し、脳卒中の予防を早くから推し進める必要性がますます高まっている」としている。
Long-time diabetics have increased risk of stroke(米国脳卒中学会 2012年3月1日)
Duration of Diabetes and Risk of Ischemic Stroke: The Northern Manhattan Study
STROKE,March 1, 2012, doi: 10.1161, 111.641381
糖尿病合併症の関連記事
- 運動と健康的な食事の組み合わせで効果は最大に 内臓脂肪が減り転倒も防止 女性にも運動が必要
- 魚を食べている人は糖尿病リスクが少ない 魚は脳の健康にも良い 中年期の食事改善は効果が高い
- テレビの視聴時間を減らすと糖尿病リスクは減少 遺伝的リスクのある人も心臓病や脳卒中を予防できる
- 朝食をしっかりとると糖尿病が改善 血糖管理に大きく影響 朝食で「お腹ポッコリ」肥満を予防
- 糖尿病の人は脳卒中リスクが高い 血糖値を下げれば脳卒中を予防できる ストレス対策も必要
- 「超加工食品」の食べすぎは糖尿病リスクを高める 筋肉の質も低下 「自然な食品」はリスクを減らす
- ウォーキングなどの運動で糖尿病リスクを減少 余暇時間の運動が寿命を4.5年延ばす 仕事の後は体を動かす習慣を
- 腎不全の患者さんを透析から解放 「異種移植」の扉を開く画期的な手術が米国で成功
- 【世界肥満デー】内臓脂肪が増えると糖尿病リスクは上昇 肥満は脳のインスリンの働きを低下 認知症リスクが増加
- ウォーキングなどの運動で糖尿病など19種類の疾患のリスクを減少 わずか5分の運動で認知症も予防