ニュース

2012年01月05日

人工膵臓システムの新ガイドライン 早期開発を後押し 米FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は先月、1型糖尿病患者にとって画期的な治療法となる人工膵臓システムの技術開発を促す新ガイドラインを公表した。
CGMとインスリンポンプを融合 血糖コントロールを劇的に改善
【医療の進歩】 関連トピック
 人工膵臓システムは、皮下に埋め込まれたセンサーで血糖値を連続測定する持続型血糖モニタリング(CGM)と、測定された血糖値に応じてインスリンの必要量をアルゴリズムで自動的に計算し注入するインスリンポンプという、2つの技術を融合させたもの。

 人工膵臓システムが実現すれば、インスリン療法を血糖コントロールや生存のために必要とする1型糖尿病患者に大きな恩恵をもたらすことになる。

 糖尿病が治癒するわけではないが、低血糖の発症を減らしながら良好な血糖コントロールを実現し、糖尿病合併症の危険性を低下させ、患者のQOL(生活の質)を高められると期待されている。

 ガイドラインが策定された理由は、人工膵臓システムの早期承認と市販を促進するため。「人工膵臓システムの承認と市販を早めることが望ましい。1型糖尿病患者はこうしたデバイスを、明日にでも治療に使えるようになることを求めている」とFDAの人工膵臓ワーキンググループのリーダーであるCharles Zimliki氏は話す。

 「世界には開発され実現化された人工膵臓システムはまだない。また、こうしたデバイスは常に開発や改善、変更、修正が施され、最新のものに置き換えられる必要がある。そのため、ガイドラインに特に柔軟性をもたせる必要があった」とZimliki氏は言う。

 ガイドラインは、システムの試験内容、安全性、効果についての要求に柔軟に対応し、臨床試験の結果や試験対象患者数、試験期間などについて選択肢を設けられてある。

 人工膵臓システムの市販がいつ実現するかは具体的には不明だが、米メドトロニック社やメイヨークリニックなどが、開発に取り組んでいる。「開発や承認に向けた臨床試験はすでに20以上が許可されている」とZimliki氏は説明する。

 FDAは人工膵臓システムの開発を促進することを重視しており、承認に必要なプロセスに精通していない研究者らが取組みやすく、外来患者を対象とした試験を含む実行可能な研究が進行しやすいよう配慮してある。

 承認のプロセスを合理化するため、システムを構成する製品に関する既存データや、米国外で行われた臨床試験データも使用できるようにした。標準的治療法との比較で血糖コントロール効果を示すことも可能にした。

 「安全で効果的なデバイスの早期の上市につながることを期待している。機器を承認するための方法は多くあることをご理解いただきたい。ガイドラインに示したのは我々の推奨だが、より良い方法があれば相談にのる準備をしている」とZimliki氏は述べている。

The Content of Investigational Device Exemption (IDE) and Premarket Approval (PMA) Applications for Artificial Pancreas Device Systems(米国食品医薬品局)
FDA outlines flexible approaches for artificial pancreas system clinical trials, product approvals(米国食品医薬品局 2011年12月1日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲