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2011年01月05日
喫煙は血糖コントロールにも悪影響 米公衆衛生局長官が報告
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- 糖尿病合併症

糖尿病の人では特に、たばこは血糖コントロールを悪化させるだけでなく、動脈硬化などを促進する原因になるという。
「たばこを吸う人は禁煙を試みるべきだ。禁煙を支援する治療は進歩している」と報告書では注意を呼びかけている。
米国公衆衛生局長官のRegina M. Benjamin医務総監によるこの報告書「たばこの煙が疾患を引き起こす:喫煙に関連する疾患の生態学と行動基準―(How Tobacco Smoke Causes Disease: The Biology and Behavioral Basis for Smoking-Attributable Disease)」は、たばこがどのように疾患を引き起こすかに着目したもの。米国でたばこと健康や疾患に関する報告書が最初に公表されたのは1964年のことで、今回の報告書は30本目になる。
喫煙をするとすぐに、たばこに含まれる有害物質や化学物質が肺に到達し、細胞を傷つけ組織の炎症を引き起こす。また、たばこの煙にさらされることが習慣化すると、体がそうしたダメージを治癒する能力が低下していく。
「たばこの煙を吸いこむごとに、すぐに肺に有害な物質が届く。ほんのわずかなたばこの煙を吸い込むだけでも、DNAが破壊され、がんにつながる。体にはもともと治癒力が備わっているが、喫煙は免疫系も弱めてしまう。たばこの煙に多くさらされるほど、ダメージの修復は難しくなる。喫煙によりがんが生じた場合は治療がより難しくなる」とBenjamin氏は話す。
たばこの煙には7000種類の有害な化学物質や化合物が含まれる。このうち、数百種類は毒性があり、約70種類はがんの原因になる。たばこの煙は、気道内壁に炎症を起こし、肺気腫や慢性気管支炎を含む慢性閉塞性肺疾患(COPD)を引き起こす。
たばこの煙は心臓発作を引き起こし、死につながることも
(クリックするとビデオの再生が始まります)
もっとも良い改善策はたばこをやめること
たばこを吸わない人でも、身近に喫煙者がいると、受動喫煙により急性心筋梗塞などを起こす危険性が高まる。また、血管も脆弱になり動脈硬化が進行し、血栓ができやすくなる。心疾患や脳卒中、大動脈瘤など、命を危険にさらす深刻な病気の発症を低下させ予防するために、もっとも重要で改善可能なのは喫煙だ。
「報告書で述べていることは、実はとても明解だ。喫煙によって引き起こされるダメージを治癒するチャンスは、誰にでもあるということだ。すなわち喫煙のリスクをよく理解し、なるべく禁煙することだ。禁煙するのに“遅すぎる”ということはない。もちろん、ただちに禁煙することがより望ましいのではあるが」と米国公衆衛生局長官のBenjamin氏は強調する。
禁煙を試みる人がたばこをなかなかやめられない原因は、たばこの含まれるニコチンのもつ強い依存性だ。報告書では、現在売られているたばこ製品は、新しい製法によりニコチンがより速く肺から心臓や脳に到達するように作られたものが多く、ニコチン以外にも依存性を高める化合物が添加されていると指摘されている。
幸運なことに、禁煙を支援する有効な治療法が開発されている。ニコチンガムやニコチンパッチなどを使うニコチン代替療法は、禁煙中にタバコの代わりにニコチンを補給することで、イライラなどの症状を軽くする。ニコチン代替薬は一般用医薬品として、医師による処方箋を必要とせずに購入することもできる。また、脳内のニコチン受容体に対する刺激作用と拮抗作用があり、禁煙にともなう離脱症状を軽減するニコチンを含まない禁煙補助薬も、医師の処方により治療に使われている。
Exposure To Tobacco Smoke Causes Immediate Damage, Says New Surgeon General's Report(米国保健福祉省、2010年12月9日)
A Report of the Surgeon General: How Tobacco Smoke Causes Disease: The Biology and Behavioral Basis for Smoking-Attributable Disease(米国公衆衛生局)
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