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2010年03月16日

糖尿病とアルツハイマー病の負の連鎖 相互に影響し症状悪化

キーワード
糖尿病合併症
 糖尿病は未治療であったり血糖コントロールが不良であると、さまざまな合併症を引き起こすことが知られているが、近年ではアルツハイマー病の危険因子にもなるという研究報告が発表され注目を集めている。糖尿病とアルツハイマー病の関連について、その背景にあるメカニズムの多くはよく分かっていないが、両方が重なると相互に悪影響を与え、悪化しやすくなるおそれがあると考えられている。

 大阪大学の研究チームは、マウスを用いた実験で、糖尿病とアルツハイマー病を合併すると、アルツハイマー病の症状の進行が早くなり、血糖値が高くなる傾向があることをつきとめた。

 研究チームは、肥満と耐糖能障害のある肥満型のマウスと、肥満ではないが血糖値が高いやせ型のマウスの2種類を用いた。それぞれアルツハイマー病型のマウスとかけあわせ、糖尿病とアルツハイマー病を合併した2種類のマウスを作製し、代謝と認知機能を調べた。

 その結果、記憶力の実験では、肥満とアルツハイマー病をかけあわせたマウスでは、記憶障害の発症が生後約2ヵ月からみられ、通常のアルツハイマー病のマウスよりも発症が早まることが分かった。やせ型の糖尿病とアルツハイマー病をかけあわせたマウスでも、早い時期から記憶障害が起こり、耐糖能障害がより高度に進んでいた。このことから糖尿病とアルツハイマー病が相互に悪影響をもたらすことが示唆された。

 アルツハイマー病の発症に、「ベータアミロイド」と呼ばれる異常蛋白質の蓄積や、脳内の血流が悪くなることが影響していると考えられている。糖尿病とアルツハイマー病を合併したマウスでは、脳血管でベータアミロイドが多く蓄積していることが分かった。また、脳の炎症によってベータアミロイドが蓄積しやすくなるが、合併マウスではアルツハイマー病単独のマウスに比べ、早い時期から脳血管で炎症反応が進んでいた。

 研究者らは、糖尿病とアルツハイマー病の発症について、「脳血管の変性と脳内のインスリン・シグナル伝達が深く関わっている可能性がある」と述べている。2つの病気が相互に影響し症状が悪化する悪循環を断ち切るためには、早い時期から治療を開始し、血糖コントロールを改善することが重要だという。

 この研究は、大阪大学医学部臨床遺伝子治療学の森下竜一教授、里直行准教授らによるもので、1月に大阪で開催された第24回日本糖尿病・肥満動物学会で発表されたほか、米科学アカデミー紀要(電子版)に3月15日に掲載された。

Diabetes-accelerated memory dysfunction via cerebrovascular inflammation and Aβ deposition in an Alzheimer mouse model with diabetes
Proceedings of the National Academy of Sciences, March 15, 2010, doi: 10.1073/pnas.1000645107

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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