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2009年10月14日
CGM(持続血糖測定)で「人工膵臓」実現の夢 米国で研究
- キーワード
- 1型糖尿病 インスリンポンプ/CGM 血糖自己測定(SMBG)
30年ほど前に血糖自己測定(SMBG)が開始され、患者が家庭で血糖値を測定できるようになり、糖尿病の治療は格段に進歩した。しかし通常の血糖自己測定では、穿刺(指先などを穿刺針で刺すこと)で採血する必要があるので、測定の頻度は1日数回に限られる。食後高血糖が起きたときや、夜間や朝の高血糖などは、血糖自己測定を行わなければ患者には分からない。
CGMでは1分から5分毎に測定値をはかり、リアルタイムで知ることができる。血糖値の日内変動をもとに、医師がインスリン療法などの適宜などを診断し治療することで、治療の成果がより向上すると考えられている。患者にとっては自分の血糖値の変動を理解するための強力な手掛かりになる。
国際若年性糖尿病財団(JDRF)(YouTubeで公開)
(クリックするとビデオを再生します)
しかし、インスリン療法を行い厳格な血糖コントロールを目指すと、しばしば深刻な低血糖をともなうことがある。良好な血糖コントロールを望んでいても、患者によっては低血糖へのおそれが治療の妨げになっている場合がある。
JDRFが発表した研究は、8歳から69歳の成人と小児の1型糖尿病患者129人を対象に行われた。CGMを行う群と通常の血糖測定のみを行う群に分け比較した(CGMを行う群の93%が、通常の血糖測定のみを行う群の79%が、それぞれインスリンポンプを使用)。米国での1型糖尿病の血糖コントロール指標では、成人ではHbA1c値が7%未満、小児や若年では7.5%から8%未満を目標にしている。研究に参加した患者はHbA1cを7%未満を維持することを目標にした。6ヵ月の介入後、CGMを行った群では、70mg/dL以下の低血糖が37分間減少した。
研究を指揮したJDRFのアーロン・コワルスキー医師は、「CGMを行った患者では低血糖を抑えながらHbA1c値を維持できた。低血糖を低減できれば、血糖コントロールをより改善できる可能性がある」と述べてい
JDRFでは、CGMで測定したリアルタイムの血糖データをインスリンポンプに送信し基礎インスリンを補う「人工膵臓」の開発も視野に入れ研究が行われている。
一方で、CGMでは皮下細胞間質液のブドウ糖を測定するので、血糖自己測定で測定した値と比べ較正する必要があり、また、血液中のブドウ糖から数分から十数分のずれがあることも指摘されている。患者にとっては、通常のインスリン療法や血糖自己測定に加え、CGMのリアルタイムセンサーを使用できるようになるための訓練や経験が必要になり、血糖コントロールについてより高度な理解が求められるようになるという。
・Artificial Pancreas Project: Juvenile Diabetes Research Foundation International
・The Effect of Continuous Glucose Monitoring in Well-Controlled Type 1 Diabetes(Diabetes Care)
関連情報
・低侵襲性のリアルタイム持続血糖測定装置への期待(血糖自己測定-インスリン注射と血糖自己測定)
・血糖を連続的に自動的に測定する機器(CGMS)(いま、1型糖尿病は)
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