いま、1型糖尿病は

2007年08月13日

血糖を連続的に自動的に測定する機器(CGMS)

改良されて臨床成績が多く積まれてきました

 皆さんもいろんなネットなどの情報や主治医の先生からの情報で、この話は少しお聞きになっているかもしれません。Continuous glucose measurement system(CGMS)と呼びます。今回はこのCGMSの話です。
CGMSとは
 簡単にいえば、細いセンサーを皮下に持続的に刺しておいて、細胞間液の糖分濃度を、センサー間に流れる電流の大きさに置き換えて、それをさらに血液中の糖の濃度(血糖値)に置き換えて一定の間隔で連続的に表示する機器のことです。

 昔からこの方面の研究はされていました。グルコウオッチという腕時計のような機器を覚えている方もおられるでしょう。この機器は測定しても結果が出るのが20分後、血糖値もいまいちで、測定する時間がくるとセンターの刺さった皮膚部位にぴりぴりとした刺激があったりして、その後あまり市場にでなかったと聞いています。
CGMSが広く使用されてきた
 海外では昨今CGMSの機器が実用的かつ実践的な話となってきました。
 もう数年前になりますが岩本安彦・東京女子医科大学糖尿病センター長が会長をした2004年の日本糖尿病学会の時には、企業共催のランチョンセミナーやイブニングセミナーにこの方面の専門家を呼びたいと希望するメーカーがなく、逆にこちらから是非CGMSに精通した先生をお呼びしてほしいとメーカーにお願いしたものでした。
CGMSの良いところ
 皮下にセンサーをほんのちょっといれて、連続的に、自動的に血糖を測定する、というアイデアはすばらしいもので、わざわざ指頭を穿刺して血液を出す必要がありません。

 この機器の実用化により、これまで知り得なかった夜中の高血糖が発見されたり、低血糖が発見されたり、1日血糖4点などの測定回数ではつかめなかった高血糖、低血糖がわかりうるようになりました。たぶん、入院中の1日血糖の動きを把握するのにはとても良いように思います。看護師さんも大助かりでしょう。

 また、自分で測定することのできない乳児に、低血糖をおこすとか高血糖をおこす稀な病気が発見されたときに、入院中の頻回血糖測定として、血液を採取しないのでCGMSの器械は大きな力となるでしょう。
CGMSの限界、問題点
 一方、国際学会や研究会ではCGMSの限界や問題点について討議されるようになってきました。CGMSが「血糖測定の王様」ではない、言い換えるなら「スペードのエース」ではない、ということを知っておかねばならない、という警告だと理解しました。そのうちのいくつかを述べてみたいと思います。

 CGMSは穿刺することが不要と書きました。これは便利でうれしいことですが、血管中の糖分を測定していないということなのです。細胞間液の糖分(濃度)を測定しているに過ぎない。よって、その値を、時々通常の血糖自己測定で血糖測定した値と比べて、較正する必要があるのです。つまり、自宅でCGMSを行うのならSMBGも必要なのです。

 それでは、SMBGの値と良い相関があるのでしょうか。これまでの報告によれば、SMBGの40mg/dL以下、400mg/dL以上はあてにならないようです。40から400mg/dLの間ならば、CGMSとSMBGの値には良い相関があるということです。

 また、細胞間液の糖分を測定しているので、実際の低血糖を感じた時から数分の時差をもって低くなる、また血液内の血糖上昇がおこってきても数分くらいの時差をもってその血糖値を示すことになるようです。

 最後に、CGMSの長期使用がSMBG長期使用(DCCTやKumamoto studyの結果がこれですね)より、ほんとうに有益なのかどうかの報告がまだないことを挙げていました。  そして、まだ費用が高いことも付け加えておきます。
今後の展望
 今後はより精確なものへと、改良が進むと思います。
 しかし、四六時中血糖がわかる、それも自動的に何分間隔かで続けて知らされてしまうのです。このことが日々の患者さんの生活に、どういう良いこととないしは良くないことをもたらすのか、また考える時がくるのではないか、と思います。
[ DM-NET ]



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