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2009年07月15日

B型インスリン抵抗症をピロリ菌除去で完治 東北大

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医療の進歩
 胃潰瘍などを引き起こすヘリコバクター・ピロリ菌の除菌で、糖尿病の一種「B型インスリン抵抗症」が改善した例を、東北大学大学院医学系研究科の片桐秀樹教授、岡芳知教授の両氏らの研究チームが報告した。

 胃炎や胃潰瘍、胃がんの原因のひとつとなるピロリ菌が糖尿病の原因となるまれな症例だが、患者からピロリ菌を除菌したところ糖尿病が完治した。診療例は医学誌「ランセット」7月18日号に発表された。

 B型インスリン抵抗症はB型インスリン受容体異常症ともいわれる。インスリンはインスリン受容体に結合し血糖値を下げる効果を発揮するが、この疾患ではインスリンの働きを妨害する抗体を自分でつくってしまい、インスリンの効かなくなる。抗体をつくる免疫機構に異常が起きる他の自己免疫疾患と関連があるとみられる。一時的に抗体がインスリン受容体から外れた場合などに低血糖が起こり、高血糖と低血糖を繰り返す治療の難しい疾患。糖尿病のなかでもまれな疾患で、数千人から数万人に1人が発症するとみられる。

 患者は冷汗と震えの症状で来院し治療を受けたが、1ヵ月後に血小板が減少しHbA1cが上昇した。糖尿病治療薬で治療をしたが、高血糖が続く一方で低血糖が頻発し、B型インスリン抵抗症と診断された。血小板が減る「特発性血小板減少症(ITP)」を併発しており、治療に有効なピロリ菌除去を行ったところ、インスリン受容体に対する抗体が消え糖尿病の指標も正常になった。悩まされていた低血糖発作もなくなり、完治と判断された。

 研究者は「B型インスリン抵抗症の原因として、ピロリ菌の感染が関わっており、除菌することが根治治療になりうることを示した。同じ疾患に悩む世界中の患者にとって大きな福音となる」と述べている。

東北大学大学院医学系研究科

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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